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かつて救世の勇者転生、あるいはいずれ滅世の魔王降臨 ~王立学院の呪眼能力者~  作者: Sin Guilty


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第07話 『千年後の世界』③

 爆炎が炸裂する。


 着弾点から一瞬で広範囲に燃え広がるその火力は、普通の人間であれば火傷で済む程度のものではない。


 本来であれば野獣や魔物はもちろん、幻獣種(最上位)の魔獣にすらダメージを通せるほどのおともの攻撃なのだ、それをただの人間が耐えられるはずもない。


 だが俺には通じない。


 一度の回避で攻撃有効範囲外までの距離を一瞬で移動し、その間はあらゆる当たり判定が無くなる――無敵となる俺に、見てから(かわ)せる攻撃を当てられるはずもない。


 当然そんなことが、いくら鍛えたとて優れた身体能力だけで実現できるはずもない。


 『回避距離上昇』と『回避性能上昇』


 それらの能力(スキル)が上限レベルまで発動しているからこその、完全回避である。


 もちろん簡素な訓練用の革鎧に着替え、長めの木剣――『太刀』の代替品を身につけているだけの俺が、普通であれば能力(スキル)を発動できるはずもない。

 同じゲームの世界だとはいえ千年もの時が経過している現代において、当時の武器や防具、魔導球(スフィア)(ことごと)くが失われてしまっているからにはそうであってこそ当然なのだ。


 神話で語られている魔獣狩り(ハンター)――勇者『(クナド)』が駆使したありとあらゆる武器防具、魔導球その全ては、現代において完全に逸失技術(ロスト・テクノロジー)となってしまっているのだ。


 いやもはや失われたというよりも、神話そのものが創作だと認識されていると言った方がより正しいかもしれない。わざわざ声を大にして言う者など居はしないが、少なくとも市井ではそんな風に認識されている。


 だがそんなことは俺には関係なかった。


 プレイヤーとして収集していた装備やアイテムは当然すべて失われてしまっていたが、この身()に宿した『呪印』だけは残されていたからだ。

 当然やり込みまくったプレイヤー・キャラクターである『岐』の呪印は極限まで強化されており、すべての能力(スキル)上限値(MAX)まで発動可能となっている。

 

 『覚醒』する魔獣が存在しなくなっているため、呪印の神髄である『血戦』を発動させることは叶わないだろう。だが強化系のみならず、生存系や収穫系、快適系と呼ばれたものまでも含めたすべての能力(スキル)上限値(MAX)で発動する以上、抜刀――戦闘態勢に入った俺と互角に戦える人間などいるはずがない。


 それは聖女候補筆頭であるスフィアとて例外ではないのだ。


「――どうしてそれを(かわ)せるのですか!?」


 必中を確信していたスフィアが、はしたなくも大声をあげている。

 

 ――確かに今のをノーダメで躱されたら、さすがに叫びたくもなるよなあ……


 まあたとえ当たったとしても、各種耐性能力もまた上限まで積んでいる俺にはほとんどダメージは通らない。()っつ!!! 程度で済む。


 またステータス値を跳ね上げる謎のドーピング料理を食べることは叶わないとはいえ、本質的に無装備状態である以上、装備による弱点が無いので各属性攻撃による弱体(デバフ)を受けることはありえない。

 なぜならば耐属性能力(スキル)を上限値まで積んだ際は、各属性による弱体――燃えたり、凍えたり、水浸しになったり、痺れたり、毒になったり、固まったり、寝たり、動きが鈍くなったり――を完全無効化するからだ。


 加えて熱ダメージ無効の能力も積んでいるため、広く残っている爆炎の残り火によってじりじりと身を焼かれることもない。


 直撃をくらわずとも普通の人間、動物であれば真面(まとも)に身動きできなくなるはずの状況下で、文字通り涼しい顔をして自由に動かれては確かにたまったものではないだろう。


 もともと抜刀していても機動力が高い太刀(その代わりガードができない)だが、それを遥かに凌駕する回避行動を繰り返して一瞬でスフィアとの間合いを詰めてゆく。

 もちろんまっすぐ突っ込むようなことはせず、ジグザグに軌道を乱してスフィアの目を切る――視界から消えつつである。


「あ――え? や!」


 それでも都度俺を再び視界に捉えなおせるスフィアの動体視力は相当のものである。

 俺の今のレベル(本気寄り)の動きを目で追える者は、少なくともこの国の冒険者ギルドには存在していないのだから。


 だが視界に捉えなおせてはいても、有効な攻撃を放てているわけではない。


 そのまま俺の間合いに捉われたことを理解したスフィアがそれゆえに慌て、脊椎反射で一足の距離にいる俺に向かって爆炎による飽和攻撃を仕掛けてきた。


 相手を自分に寄せ付けないためには正解の行動であるし、その攻撃力も(かんが)みればなかなかに容赦ない攻撃であると言えるだろう。

普通の人間であれば、こんなものを至近で放たれて生きていられるはずもない。


 だがそれは俺に対する行動選択としては悪手でしかない。


 大前提としてスフィアがその行動をとることを予測、というよりそれを誘うためにこそ、あえて最適の間合いまで詰めて待ち構えていたからだ。


 その俺の行動に釣られた時点で、スフィアの負けが確定したとも言えるだろう。


 集中によって加速された思考、感覚によってスフィアが撃ちだす爆炎のタイミングをコンマレベルで正確に捉え、それに合わせて特殊回避――いわゆる「当身で取る」動作を行う。

 それによって発生する無敵時間で爆炎による飽和攻撃をすべてすり抜け、そこからのカウンターでスフィアの華奢な胴へ木剣での痛烈な一撃を加えた。


「ぐぁぅ!」


 身体にダメージが通る攻撃をくらった時に漏らす悲鳴に、男も女もない。

 「きゃあ」などという可愛らしいリアクションは、意識が介入できる余裕が無ければまず出てこないのだ。


 実際木剣での一閃とはいえ、本来は13歳の女の子がくらうべき一撃でもないし、くらって耐えられるものでもない。


 だが「痛くなくては覚えませぬ」ではないが、訓練とてある程度は実戦形式でなければ意味がないのも事実だ。実際スフィアが放っていた爆炎は洒落にならない殺傷力を伴っていることだし、この程度は高レベルな訓練を望むのであれば我慢するしかない。


 真剣であればこの一閃のみで命を落とすのだ、それを何度くらっても平然としている魔獣が如何に規格外の生命体なのかという話である。

 まあ今はもう、魔物と呼ばれる小型しか残存していないらしいので問題ないのだろうが。


 ちなみに痛撃をくらいはしたが、スフィアの戦意はまだ折れていない。

 護ってあげたくなるなどと言われる容姿をしておきながら、うちの妹君はなかなかに剛の者なのである。


 再び爆炎を放たんとして歯を食いしばり、口の端から僅かに血を零しながらも俺を見据えたままでいる。


 ゆえに俺は攻撃の手を止めず、「当身で取れた」際か刀気ゲージを使用しての連撃の最後にだけ発動が可能となる強力な一閃――一瞬で太刀の届く半球状を無数の剣閃で斬り刻む『瞬閃』へと攻撃を繋げる。

 ちなみにこの技は刀威レベルを上げることが可能で、太刀といえば刀威レベルを上限で維持しつつ、隙を見て刀威レベル消費の大技を叩き込むことが立ち回りの定石となる。


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