75話
「俺の店にえらい損害を与えてくれたな。 修理費もバカにならねぇ」 見積書だろうかを眺めながら不機嫌な様子に黙って行く末を見届けるしかなく、借りてきた猫の様におとなしくするしかなかった。
「払えねぇなら身体で払ってもらおうか」 アタシを見てニヤリと笑うそれを見て、
その瞬間、継母の言葉やあの事を思い出す。
こうも簡単に「自分の身体を売れ」 と言われるたびに自分の持って生まれた性別が嫌になる。
悔しい思いと自分の力の無さを涙で表すまいと必死にこらえ、相手を見据える。
「身体を…… 売る気はない」
机を大きく叩き、立ち上がり、オークの鋭い眼つきがアタシを睨みつけ、負けじとアタシも睨み返す。
「じゃあ、てめぇに何が出来るんだ。 暴れたのはたのはそっちで――」
「ふざけんな! あんたがアタシの事をバカにしたんだろ。」
互いに睨み合いが続く。
アタシだって、被害者だ。
あんなことを言われなければ喧嘩なんて売る事も買う事もなかった。
「言い分はそれだけか?」
「そうだ」
「確かに喧嘩を売った俺も確かに悪かった。 だがな、弁償はしてもらう。 自分のケツぐらいは自分で拭けるだろ?」
領収書を渡され、内容を確認するとテーブル、椅子、酒瓶、アタシが飲んだ酒のボトルまで含めて占めて20万Jと書かれていた。
流石に手持ちの金も足らず、本意ではないが自分のした事。
服を売るしかないのかと項垂れる。
「ところで少し小耳に挟んだんだが…… お前、面白いスキル魔法が使えるんだってな」
「どこで――」
「使えるのか使えないのかどっちなんだ!」 と怒鳴られ、スキル魔法は確かに使えるけど全く何なのかがわからず、ジョブも何なのかわからない事を伝えると「見せて見ろ」 と言われ、弾は入れずに銃のみを発動した。
「あんたに分かるのかよ」
「わかる? これから調べるんだろうが、ちょっと黙ってろ」
右手を掴み、スキル魔法をジロジロと見る姿は新しいまるで、玩具を見つけた子供の用で大きなオークとは似つかないその姿が少しおもしろくかったが、笑うまいと口を噤んで堪えていると「何、見てんだよ」 と睨まれた。
「別になんでもねぇよ」
「まぁいい。 ところでどういう魔法だ?」
「あ、あぁ これに弾丸を入れて発射するんだ」 一瞬、話していい事かと悩んだが、昨日、殴り合う姿からは想像が出来ない姿を見てしまい思わず話してしまう。
「だん…… がんって、何だそれは?」
「弾丸ってのはこれ。 この指先みたいなやつが弾丸」 ポケットから1発の弾丸を取り出しみせる。
「そんな、鉄…… いや、小さな銅の塊なんて――」銃に入れると「おぉそれで」 と目をキラキラさせ聞いてくる化粧をした大男。
「あとは後ろのレバーを下ろしてこの三日月みたいなやつを引けば撃てる」
「撃って見せろ」
「流石に危ないんだけど」 とは言うが一度好奇心に火が着いたら止められない様で「的はこれでいいか?」 と空のボトルを置く。
(しかたないなぁ) アタシは数メートル離れた場所からボトルを狙って引き金を引くと破裂音と共に弾丸の当たったボトルは粉々に砕け散り、「おぉスゲェじゃねーか」 と喜ばれた。
「で、ここまで見せたんだからもういいだろ? 第一、スキル魔法なんてそう簡単に見せるもんじゃ――」
「大体わかった。 面白いスキル魔法だな、どうしてあの時、それを使わなかった」
アタシ自身、なんで魔法を使わなかったか、それは亜人であれ、人を撃つ罪悪感を知っているから?
でもそれだけなのだろうか、腕を犠牲にすれば頭を吹き飛ばす事が出来るのにしなかったのは、いつでも命を奪えると、知らぬ間に相手を見下しているからなのか…… 答えは出るはずもなかった。
「わからない」
「わからない? だが魔法を使わなくて正解だ。 もし使っていたら被害はこんなもんじゃなかったがな」
そういうと左手をもう一本のボトルに向けるとボトルの下から氷塊が突き刺さり、砕け散る。
どうだと言わんばかりにアタシに笑みを向ける。




