表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/123

74話

 頭痛と吐き気で目が覚めるとベッドの上で寝かされていたらしく、目の前に荷物が無い事に気が付き、痛みに堪え、ベッドから降りると足がふらつき転倒する。

 枕灯台に掛けられたバッグに手を伸ばすし、痛みに喘いでいると「あら、起きたんだ」と声がして目を向けるとアタシが暴れた店の店員のハーピィがそこに立っていた。



「大丈夫? まぁそんなわけないよね。 あんだけ殴られてるからねぇ」


「なんでここに?」


「あの殴り合いの後、君の後始末を店長に頼まれてね。 店の片づけから何から何までほんと大変だったよ」


「ご、ごめん。 店長って?」


「君が殴り合ったあのオークが店長なんだぁ 凄かったでしょ」


「泣けるぜ」



 頭痛と共に思い出されるのが一方的に殴られてアタシがいくら反撃しても怯むことすらなかった事を思い出すと背筋がぞっとした。

 良く生きて帰って来れたと心底思う。



「よく生きてたよね。 店長と殴り合ってそれだけで済んでること自体が奇跡だよ」 とケラケラ笑う様子を見てアタシは苦笑いしか出来なかった。



「さぁて出来た。 朝食用意したんだけど食べる?」


「良いのか?」


「何が?」


「店をメチャクチャにしたのに泊まらせてもらって朝食まで――」


「面白い物を見せてもらったお礼。 すごかったなぁ、あんなに殴られても突っ込んでいく人なんてそうはいないよ。」



 枕灯台に置かれた朝食はパンに目玉焼きを乗せたものだったがとても美味しかった。

 特に半熟の黄身が濃厚で白身も分厚く焼き加減もよくて美味しかった。

 余韻をコーヒーと共に楽しみながら枕灯台に掛けられたバッグの中からタバコを取り出し、火を点け、一息つく。



「ところでこれから店長の所に行かなきゃならないんだよね」


「なんでだよ」


「よくわからないけど君と話がしたいんだって」



 大きなため息と共に後悔が押し寄せ、頭の中は弁償にいくら掛かるのかで頭がいっぱいだった。

 手持ちのお金では到底どうにもならない事は明らかで弁償できなければどうなるかなんて考えたくもなかった。


 辺りを見るとポンチョと帽子がベッドの脇に掛けてあり、洗い物をしているハーピィに見つからないようにそっと取り、ゆっくりと部屋を出ようとした時、急に風が吹いたと思うとドアに羽が数本刺さり、背中から押し付けられ、ギリギリと力が加わる。



「逃げない。 全く、油断も隙も無いんだから…… とって喰う訳じゃないしそんなにビビらないの」


「ビビるに決まってんだろ!」


「まぁまぁ。 悪い様にはしないって」




 案内された場所はあの店、昨日のあの乱闘騒ぎからは考えられないくらいに片付いていた。

「こっちだよ~」 内装を見ていたアタシが呼ばれ、向かったのは2階の一室だった。

 大きな化粧台には化粧品が並べられ、様々なドレスが飾るように吊るされている。

 そしてその部屋の大きなデスクにはあの化粧をしたオークが座って静かにアタシを見ていた。

 あの時の様な威圧感は無く、ジロジロと身体を見られているようであまりいい気はしない。



「アルエット、ご苦労だったな」 と袋を渡すと彼女は「いえいえ、じゃあ、ごゆっくりー」 とそそくさと部屋を出た。

 部屋に二人残され、自身の今後の行く末に不安になり、考えがグルグルと巡り、効果はわからないがスキル魔法を使ってとも考えたがあの小さな弾丸で倒せるとは到底思えず、アタシはどうする事も出来なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ