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54話

 

 アタシは静かな、夕刻の道を歩きながら、タバコを吸おうと取り出すと最後の1本だった。

 あの悪魔の言葉が頭を過り足を止め、レッグバッグの中からお金を取り出す。

(確か460Jだったかな?) と半信半疑で箱の中にお金を入れ、箱を閉じるとすぐに軽い箱からわずかな重みを感じ、開けると新品のタバコがぎっしり入っており、あの悪魔が言ってたことってマジだったんだなと驚く。

 一瞬、(これを売れば、一儲けできるんじゃないか) とも考えたけど、ロクなことにならないと考え直し、火を点け一服する。

(さて、ここから一番近いところは……) 岩に腰掛け、地図を眺める。

 ここまで何事もなく3日ほど歩き、地図上では町までそう距離はなく、タバコを吸いながら再び、ギルドのある街を目指す。


 目的地にしたのはヴァンファタリテと言う、風の国で最も栄えている町。

 ここでギルドに登録すればアタシも張れて冒険者の仲間入りと言うわけだ。

 期待に心を躍らせていると「きゃー」 と叫び声が聞こえ、気のせいかと思いたかったが気になり、(こっちから聞こえてきたよな) と地図とは逆の左に走った。

 その先の茂みから見えたのは盗賊だろうか、獣人と男、二人の背中が見え、アタシは見つからないようにそっと様子を伺う。



「身ぐるみ剥いで売っちまうのもいいがまずは楽しまないとな」


「ボスに渡す前にいいのかよ相棒」


「構わしないって 俺、最近、発情期でよぉ」


「それはいつもじゃねぇか」



 聞き耳を立てていると全くもって下品な話の最中だった。

 女性は恐怖で追い詰められたネズミの様に震えて、ただ喰われるのを待つしかなく、その様子に自分自身を重ねて見てしまう。

(アタシもあんな風に……) 震える手を抑え、右手にナックルダスターを付け、呼吸を整える。


「ん!? さっきまでしなかった煙のにおいがするような」


(しまった。 鼻の利く奴か!) 慌てて隠れるがアタシが、隠れている方に2人の足音が近づくにつれ、心臓がバクバクと鳴る。

 こうなってはもう、逃げるか戦うかしかなく、覚悟を決めて相手の前に出る事にした。



「何だてめぇ?」


「正義の味方気取りかなぁ お嬢ちゃん」


「に、逃げて!」


「は、はい」



「女の癖にでしゃばりやがって!」 と盗賊の一人が短剣でアタシに切りかかり、左の手刀で受け止め、熊手で顎に打ち込むと膝を折り、地面に崩れ落ちる。

「てめぇやりやがったな」 と獣人が飛び掛かり、回避が間に合わず押し倒される。

 マウントを取られて、平手で顔を打ち、爪がアタシの頬をかすめ、血が出る。

 相手は興奮したのか息遣いが荒くなり、垂れる粘り気のある涎が顔に付く。

 不快感からか一瞬目を瞑ると首元に生暖く這いずり、腹部の辺りに異物を感じると同時に後悔した。


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