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一災起これば二災起こる

 心が折れ死を受け入れかけた星司だったが謎の少女の登場に驚き、その少女の目を疑うような力に呆然としていた。自身を守る様に鬼と自分の間に立つ少女は赤く煌めく杖を両手に持ち、フリルの目立つドレスに似た赤い炎を彷彿とさせる衣装を着ている。その姿を見て星司はシンの言葉を思い出した。


「魔法少女……!?」

「はい!」


 星司の呟きに少女は元気よく返事した。顔は鬼から一瞬たりとも目を離していないため見えないが星司には笑顔を浮かべているように感じた。


「私達がオーガの相手をします! その間に避難を!」

「あ、ああ」


 少女の言葉通りに避難しようと少女から背を向ける。後ろめたい物を感じるが先程の不思議な力、おそらく魔法を使って鬼――魔法少女曰くオーガ――へダメージを与えたのは目の前の少女だ。なんの力も無い自分がいても邪魔なだけ。冷静にそう判断した星司は走り出した。


 直後、背後から爆音が轟いた。


 星司は反射的に振り向いて何が起きたか確認した。少女が杖を振りぬいた姿勢でオーガを見下ろしている。オーガからは煙が上がっていた。どうやらのた打ち回っているオーガに追撃したようだ。


 その姿に頼もしさを感じた星司はその場を去った。



「桜花!」


 オーガと少女がいる場所から離れた星司は避難せずに桜花を探していた。桜花の無事を確認するまでは自分だけ安全な場所になど避難できない。家族を失いたくない星司は危険だと分かりつつも桜花を探し続ける。やがていつも桜花達が遊んでいる公園へと辿り着いた。


「桜――な!?」


 星司は目の前の光景を見て絶句した。公園に有ったのは潰れた滑り台、高温で溶けた跡が有るジャングルジム、鎖が千切れてボロボロのブランコ、近所の建物も瓦礫となり果てた悲惨な状態だった。


「くっ! 桜花!」


 気を持ち直した星司は桜花の名を大声で呼びながら探し始めた。もう避難しているかもしれないが万が一の事が有ってはならない。既に避難を終えているのを確信したい星司は声を上げる。


「兄様?」


 声が聞こえた。か細くて普段なら聞き逃してしまう程の小さい声が星司の耳に届いた。


「何処だ! 桜花!」

「こっちです! 兄様!」


 星司は桜花の名を何度も呼びかける。それに対する桜花の返事に耳を澄ましながら声が聞こえる方へと近づいていく。

 辿り着いた先に有ったのは瓦礫の山だった。目の前の光景を見て星司の脳裏にかつての記憶が蘇った。父と母が瓦礫の下敷きになった過去。そして、永遠に会えなくなった事を。


「桜花!!」

「兄様! ここです!」


 無事でいてくれ、そう願いながら星司が桜花の名を呼ぶと瓦礫の中から桜花の返事が聞こえてきた。瓦礫の下にいることが分かってしまい星司の心は再び家族を失う事の恐怖で埋め尽くされていく。


「桜花! 大丈夫か!?」

「はい! 大丈夫です!」


 慌てて安否確認の声を上げた星司に答えるかのように桜花が瓦礫の隙間から元気よく顔を出した。


「――――」


 その光景を見て固まった星司は後にこう語った。『土竜叩きみたいに顔を出す桜花は可愛いと思うのと同時に何をやっているお前は、と言う呆れで思わず思考が停止した』と。


「あははは……」


 星司の困惑を理解したのか、桜花と同じように瓦礫から顔を出した流星は困り顔で笑いを浮かべていた。




「無事なのは嬉しいけどさぁ……」


 数分後、正気に戻った星司は桜花と流星を連れたって避難していた。子供二人のペースに合わせている為に速いとは言えないが確実に魔獣と遭遇した場所から離れている。


「瓦礫の中に隠れるのは危ないだろ。もっと安全な場所を選べ」

「他に思いつかなくって……」

「他に隠れられそうな場所もなかったので……」

「路地裏の狭い道とかで良かったんだよ。あの巨体なら通れないから見つかってもすぐには追いつかれない。瓦礫の中だと見つかった時に逃げられないだろ」


 避難しながら星司は桜花と流星の二人に瓦礫の中に隠れていたことを注意する。いくら丁度いい隙間が有ったからと言っても瓦礫の下に入るのは普通なら自殺行為だ。幼い頃に星司もやったことではあるが、その時は赤ん坊の桜花を連れ出すためだからと言い訳できる。しかし、今回の場合は逃げるのを優先すべきであった。災害そのものと言える魔獣が近くで暴れているのなら尚更だ。

 とは言えまだ子供でしかない二人に適切な判断を求めるのは酷だろう。星司もそれは分かっているが命が懸かった状況での行動故に苦言を呈さずにはいられなかった。


「ごめんなさい兄様……」

「ごめんなさい」

「次から――いや、そう何度も魔獣に遭遇するわけがないな。とにかく気を付けろよ」


 謝罪する二人の言葉を聞きながら星司はそう何度も危険な事は起きないと、自分に言い聞かせる様に呟き、二人の説教を終える。


「そうだ。魔獣は魔法少女が何とかしているはずだ。俺達は避難するだけで良い」


 独り言の様に呟く星司。その呟きを口にしたのは不安が表に出始めたからだ。先程までは桜花の事で頭が一杯だった事もあり気づいていなかった。あるいは目を背けていたのかもしれない。桜花の無事を確認し、考える余裕ができたからこそ見逃していた事実に気づいてしまった。


 幼かった(・・・・)


 魔法少女の名の通り見た目は幼い少女だった。その少女が恐ろしい魔獣と戦っている。その事実に星司は後ろめたさを感じていた。

 だからと言って星司には何もできない。魔法少女の様に魔法が使える訳でもなければ、魔獣と物理的に戦えるほどの身体能力も無く、魔獣と渡り合える様な戦術に関する知識も知恵も無い。


 ただの一般人。


 身体能力は悪くないが運動部未満、学校の成績も上の下か良くて上の中。そんな自分にできる事など妹を連れて逃げる事だけ。それが分かっていても完全に割り切ることなど星司にはできなかった。


「……今は桜花達の安全が第一だ」


 少なくとも今は守るべき幼い家族がいる。ならば悩む必要は無い。その事を再確認し、悩むのを止めた星司は桜花達の様子を見る。二人ともまだ体力に余裕が有るがその歩幅故に速いとは言えない。男子高校生と比べても仕方がないが、今は緊急事態。

 桜花達を探して走り続けていた星司にも体力に余裕があるわけではないが、二人を抱えて自分が全力で走った方が早いと考え、桜花達に声を掛ける。


「二人とも一回止ま――」


 最後まで言い切る前に地鳴りに似た轟音が星司の背後から聞こえてきた。その音に星司の額から冷や汗が流れた。


 近い(・・)


 嘘だ、と思った。いや、思いたい。そんな嫌な予感しか感じない状況。それでも星司はできるだけ素早く振り向く。緊張の所為か周りの景色がゆっくりと動いていくのを感じながら音の原因を見た。


「――――」


 声が出なかった。声にならない無意味な音しか口から出てこない。なぜ、どうして。答えの返ってこない疑問で星司の頭の中が埋め尽くされる。


 グルルルルゥ――


 魔獣オーガがそこに立っていた。


三か月ぶりの投稿なってしまい申し訳ない。

リアルが忙しすぎて書く暇がありませんでした。

次回はもうちょっと早く投稿できるようにします。

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