6
「えっと…この《洗剤投入口》ね?……ええ。いつ入れるの?」
ランドリールームの扉を開けっ放して婆やとの電話に夢中になっていた私は、戸口に立つ人の気配に気付いてなかった。
悪戦苦闘していると、ふと視線を感じた。
ギクッ!
「あ…おはようございます」
床に座り込んで説明書を広げていた私。
慌てて手に持っていた電話を切ってポケットにしまった。
そして説明書を手に持って立ち上がり、視線は彼を捉えることなく右へ左へ…
「…何やってる?」
「あの…いえ。あの…別に」
まさか洗濯機の使い方が分からないなんて言えない。
ダメな嫁丸出しだわ。
ちらっと洗濯機を見て私の手に有る説明書を体の後ろに隠した。
そんな私を黙って見下ろしていた彼は小さく息を吐き出してから
「昼から《白滝》と言うのが来る」
「白滝…様?」
「いや、客じゃない。家の事を任せてる者だ」
「え…と、お手伝いさん?」
「あぁ。そんなところ」
私はチラッと洗濯機を見た。
これは洗濯をする必要ないと言われているのか、その人に聞けと言われているのか…。
それだけを言うとどこかへ行ってしまった零。
私は悶々と一人で考えた。
お手伝いさん…
ばあやみたいな人かしら?
なら、私は下手にこの家の物を触らない方がいいという事?
朝食も?
なら……私はここで一体何をしたら良いんだろう…
ランドリールームを出て、零の後を追うようにリビングに行った。
彼は既に着替えていてシャツの袖口のボタンを止めながら私を見た。
「あの、すみません。朝食の準備ができてません」
と頭を下げた。
「朝は食べない」
そう言ってからちらっとキッチンを見て
「コーヒーは淹れれるか」
と言う。
…朝食、食べないんだ。
そんなことも知らない私。
それよりコーヒー?
私はキッチンに向かいコーヒーメーカーを横目にコーヒーポットとドリッパーを使って丁寧にコーヒーを淹れた。
これは婆やから直伝で教わったとっておき。
唯一自信がある!
婆やの淹れるコーヒーは本当に美味しかったから、結婚が決まった時一番にこれを教わった。
こんなに早く役に立つときが来るなんて。




