前世の記憶9
玄関のドアから光が見えたとき、抵抗して良かったと安心した
私の叫びは誰かに届いたのだと感動した
けれど違和感があった
保さんが目に見えてガタガタと震えている
私の叫びを聞いて助けに来てくれたのなら、大丈夫ですかとか声掛けがあるはずなのだが、それはない
ということは……
「み、美沙さん?」
逆光で見えづらいが、女性のシルエットが見えた、きっと美沙さんだ!
そのシルエットにまた違和感を覚えた
細長いなにかを持っているのだ
光を反射してぎらりと見えたことで、刃物だということが遅れながら理解できた
私が料理をするときに愛用していた刃渡りの長い包丁に似てる…というか、そのものだろうと、ぼうっと考えていた
私を助けに来たわけではないのだと、わかったから
私は体力も精神力も使い切ってしまったのか、もう身動き一つできないような気がした
保さんは恐怖のあまり尻餅をつき後退る、
尿をもらしたのか、ツンとした匂いがした
美沙さんはゆっくりゆっくり保さんに近づいていく
死の恐怖が近づいてくるのに絶えられなかったのか、保さんは奇声を発しながら逃げようとした
私にはスローモーションに見えた
美沙さんの横を保さんが通り抜けようとした瞬間、保さんの背中に包丁がぶすりと刺さった
保さんは崩れ落ちるように前に倒れて、美沙さんは包丁をゆっくり引き抜いたと思ったら…
何度も何度も何度も、保さんの体中に包丁を突き刺した
血がゆっくりと溢れてきて、意外と血って勢い良く飛び出てくることは無いんだなぁなんてくだらないことを考えていた
走馬灯、なのか、今までの記憶がたくさん思い出される
無意識だったが声が出ていた
「……わたし、みささんのえ、すきだったよ…
あのころみたいに、なかよくくらしていたかったけど…
わたし、みささんがくるしんでるのぜんぜんりかいできてなくって
たくさんきずつけてしまって、ごめんなさい…
みささんともっと、なかよくなりたかったな………」
涙が溢れた
美沙さんも泣いていたのが見えた
しばらく2人で泣いて、少し時間がたったけど、美沙さんが返事をくれた
「……なんで、こうなったんだろうね
私も、花さんと仲良く過ごせたら変わってたのかな
でもね、きっと仲良く出来ていたとしても…
…………保さんの心を奪ったことがどうしても許せないのよ!!」
さっきまで保さんに刺さっていた包丁が、何度も何度も私を貫く
これは私が無知だった罰だ
私が、邪魔者で、疫病神で、周りを不幸にするんだ
お兄ちゃんの言った通りじゃないか
私と関わった人たちは死ぬか狂うかのどちらかだと嘲笑っていた
傷口から大量の血が溢れ出ていた
……あたたかい…
こんなに傷だらけで痛いはずなのに痛みを感じなかった
(好きなように生きるのだと決めたばっかりなのになぁ
好きなものを探すことすらできずに死んじゃうのかぁ…)
……からだがおもくて…うごけない、うごきたくない…
(こういう時ってきっと神様助けてって願うんだと思ってたけど違った
……神さまなんていない…
もしいるのなら、こんなつらい思いする人いないでしょう?)
もう何も信じられなかった
(これから、これからだったのになぁ)
そうだ、私は、あの人と約束したんだった
市役所で一緒に働いてた、☒☒☒☒くんと、
好きなものを探しに行こうって…
(約束したのになぁ…
約束守りたかったな、最後に、会いたかった…)
遠のく意識の中、ドアから光が見えたような気がした
……息が苦しい…
少しでも光の方へ行きたかったけど、
目の前が真っ暗になって、なんの音も聞こえなくなった
――――――――――こうして私は死んだのだった
前世編これで終わります!
全然冒険始まってませんが、ここまで読んでくれた方
本当にありがとうございます!
思いつき投稿なんでほんと不定期過ぎて申し訳ないです……




