表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/101

第八十八話「闘いの行方」

「結月は俺のものだ」


 朔の低い声が凛の耳に響く。


「──っ!」


 その凄みに圧倒されそうになる凛だったが、すぐに正気に戻ると刀を振り上げる。

 それを低い姿勢で打ち払うように一気に凛の刀を飛ばす朔。


 天高く飛んだ凛の刀は一本の竹に突き刺さる。



 凛の喉元に朔の刃が突き当てられる。

 そこで終わりに思えたが、しかし凛はあきらめなかった。


 足で朔の刀を蹴り飛ばすと、腕に仕込んだ隠し武器で朔の顔を狙う。

 その刃は朔の髪を切り、はらりと切られた髪が落ちる。


 朔は凛から距離を保つと、胸元に仕込んだ小刀を取り出した。


「やっぱり懐刀は持ってたか」


「俺をなめるな」



 二人は再び刃を交える。

 先ほどまでの刀の距離とは違い、より身体が密着している。


 それぞれの殺気が反発し合い、空気の流れを一気に変えた。


 朔は小刀を素早く振り、凛の腕を切りつける。


「──っ!」


 しかし、それとほぼ同時に凛の隠し武器も朔の腕を切りつけた。


「──っ!」


 そして、ついに決着がついた。



 凛が朔の傷ついた腕を狙ったところを見逃さず、朔は自分の腕を犠牲にして凛のみぞおちを小刀の頭で打った。


「ぐっ!」


 凛はうめき声と共にその場に倒れた。



 朔はそのまま倒れた凛を見下ろす。

 凛は仰向けになったまま、顔に腕を持っていき、顔を覆う。



「やっぱ叶わないのかよ……」


「今日は危なかった」


「慰めはいい」


「慰めではない」



 朔は凛の隣に座り、言葉を紡ぐ。

 静かになった竹藪だが、二人の激闘の末、荒れ果てている。


「昔だったら、時哉様に怒られてたな」


「ああ」



「あとの処理は頼んだよ、一条家ご当主」


「都合のいい時だけ使うな」



 凛は起き上がって座ると、朔に頭を下げた。



「俺の負けだ」


「当たり前だ、俺が負けるわけない」


「それもそうか」


 凛は悟ったように笑って月を見上げる。



「結月は君と侍女が口づけしたところを見たと言っている」


「──っ!」


 朔は珍しく目を見開いて凛を見つめる。


「朔のことだから、何か事情なり誤解があるんだろう?」


「……」


「結月はそれで朔には想い人がいるって思いこんだ」


 凛は朔を見つめると、意地悪そうな顔をした。


「俺が言えるのはここまで。あとは二人でなんとかして」


 凛は立ち上がって、朔に背を向けた。

いつも読んでいただきましてありがとうございます!


現段階で「続きを読みたい!」「面白い!」と思ってくださっている方がいらっしゃったら

評価/感想などいただけますと作者の励みになります<m(__)m>


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ