第八十話「胸の苦しさは人を狂わせる」
「はあ!」
結月の一太刀で妖魔は灰になって消えてゆく。
次々と現れる、妖魔に容赦なく双剣で攻撃を浴びせる。
(なんか結月、今日攻撃乱れてね?)
蓮人は結月の妖魔退治の様子を見ながら、心の中でそう思った。
結月がここまで攻撃が荒くなっていることには理由があった──
──数刻前。
結月は看病のため、朔の部屋を訪れようとしていた。
(だいぶ朔様の容態も落ち着かれたし、今日はこの痛み止めの薬を……ん?)
結月が朔の自室のふすまを見ると、少し開いていた。
不思議に思った結月は近くいき、中を覗く。
「──っ!」
朔の傍に侍女が一人おり、そしてそのまま朔と侍女は口づけをしていた。
結月はすぐさま朔の自室から離れると、廊下を走って戻る。
「結月さま……?」
途中、美羽っとすれ違うが、結月には言葉を交わす余裕はなかった。
そのまま自室へと急ぎ、一気に飛び込むとふすまを勢いよく閉めた。
瞬間、結月はその場に力なくへたり込んだ。
(朔様と侍女の方が……どうして……)
結月の顔は色をなくし、そのまま涙が涙が伝う。
(私……こんなに胸が痛い……どうして……)
微かに震え、涙が止まらない結月。
先ほどの光景が目に焼き付き、離れなかった。
「どうして……」
結月は胸を押さえ、うずくまる。
自室にはすすり泣く結月の声だけが響き、それは夜まで続いた。
蓮人が呼びに来るまで、結月は自室にこもっていた。
「結月様、蓮人様がお呼びです。任務の時間でございます」
「…………」
「結月様……?」
「……いま行く……」
結月は支度をすませると、ぬらりとふすまの隙間から現れた。
「結月……様……?」
「行ってきます……」
美羽は結月の様子に異変を感じながらも、そのまま送り出した。
「どうしました?」
美羽は声のしたほうに振り向くと、そこには凛がいた。
「あ、いえ、結月様のご様子が……」
「結月さんがどうかしたのですか?」
「何やら、お元気がないように思われました」
凛は手をあごにあて、考え込む。
「朔様の看病での疲れは十分に取れていたようにお見受けするのですが……」
「はい、私もそのように思うのですが」
「わかりました、明日、結月さんに聞いてみます」
「かしこまりました」
美羽はお辞儀をすると、凛は廊下を進む。
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