第七十五話「幼なじみの共闘」
「私は刀を滅多に抜きません」
凛はゆっくりと、結界でひるんだ朱羅に言葉をかける。
「それは、刀が苦手だからではありません」
朱羅が怪訝な顔で凛を見つめる。
「逆です。刀が最も私に合った攻撃手段だからです」
凛は青碧色の刀身をなぞるような素振りでイグの力を込める。
「攻撃に特化しすぎてしまうのですよ。でも、今は主人を守るため、幼なじみと共に闘うため、私は刀を抜きます」
「なにをごちゃごちゃっ──!」
朱羅は一気に気配の変わった凛を警戒して、後ろに一歩飛び退いた。
「お前のその姿は久しぶりだな、凛」
「私は『指揮官』ですから。攻撃に転じていたらあの子たちが自由に動けないでしょう?」
凛は朱羅を見つめて照準を合わせながら言う。
「でも、今はあなたと二人だ。気を遣う必要もない、全力でいくよ、朔」
「ああ」
朔は左手で持った太刀を前へ突き出し、凛は右手で持った刀を突き出す。
二人の刀の切っ先は朱羅に真っすぐ向いていた。
刹那、朔と凛は同時に床を蹴り、朱羅に向かって刀を振り上げる。
朱羅は二人の刀を自らの刀で受け止め、苦しそうな顔をする。
「ほら、どうした朱羅。さっきまでの威勢はどこに消えた?」
幼き頃、朔の前でしか見せないあどけなく好戦的な凛の姿がそこにはあった。
「──っ!」
朱羅は朔の足を払って態勢を崩そうとするが、凛がその攻撃を見切り、交わった刀を一度引くと、今度は朱羅の右肩を目指して切りかかる。
朱羅の右肩は凛の刀に傷つけられ、大量の血が流れだす。
「ぐはっ!」
その隙に朔が金色に輝く太刀を振り上げ、今度は左肩を切りつける。
「がはっ!」
朱羅は両肩に攻撃を受け、刀を地面に落とした。
だが、すばやくその刀を拾い上げ、朔と凛から距離を取ろうとする。
「──っ!」
それを許さないかのように、凛はイグの力を込め、朱羅の右腹部を刀で貫いた。
「終わりだ、朱羅」
その瞬間、妖気が部屋に立ち込め、魁が現れた。
魁は凛に妖気の塊を放ち、攻撃をすると、朱羅を抱えて妖気の渦へと消えていく。
「待て!」
凛が追いかけようとする後ろで、何かが倒れる音がした。
「──っ! 朔っ!!」
朔は右肩の負傷での失血で、気を失った──
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