第七十六話「復讐への想い、そして」
結月は宮廷への道を急いでいた。
(朱羅がついに現れた……。お父様、お母様……仇が討てる)
宮廷へと続く森の中で、結月は駆けながら想い馳せる。
結月の中で忘れてきた『あの日』の記憶がよみがえる。
『お父様っ……お母様っ……』
泣きじゃくりながらも必死に双剣を両腕で抱きかかえ、裸足で雪の上を駆ける結月。
寒さも感じず、ただ屋敷が崩れ落ち、炎が轟々と鳴り響く。
結月が振り返ると、確かにいた。
炎の中で刀を持った人影が……。
人影を見つめる結月の眼には、見るのを阻むかのように、崩れた大きな柱が移り込む。
やがて、人影が見えなくなった。
(あれがそうだったんだ……)
結月が木の根を軽やかに飛び越え、イグの力を込めてさらに早く進む。
(あれが……朱羅だったんだ……)
双剣を抜刀したまま握り締めていた結月。
幼き頃の記憶を呼び起こし、悔しさと憎しみで握り締める手の力が強くなる。
(絶対に仇を取る……絶対に……)
次第に宮廷が目前に迫ってくる。
裏門の監視兵には目もくれず、そのまま朱羅のいる気配のする「金翠の間」へと急ぐ。
廊下を走り抜けていると、部屋の前に永遠と美羽がいた。
「結月様っ!!」
「永遠! 美羽!」
永遠と美羽が駆け寄る。
「朱羅は?!」
「消えたようです」
「──っ!」
結月はそこで初めて朱羅の気配が宮廷から消えていることに気が付いた。
あまりに必死で宮廷へと急ぎ、また過去のことに気を取られ、気配の消失に気づけなかった。
「それよりも、朔様が……」
「朔様がどうしたの?!」
「……重傷で意識がございません」
「──っ!」
結月は心臓が飛び出る思いだった。
どこかで朔は無事だと過信していた。
「結月様っ!!」
結月は一目散に朔の自室へと向かった。
(朔様っ!)
自室のふすまを開けると、そこには布団に伏せる朔の姿があった。
「朔様……」
結月は膝を折り、朔へと近づく。
包帯だらけの痛々しい姿に、結月は朔を失う恐怖を覚えた。
頬をなでるが、全く反応がない朔。
すると、結月の頬に一筋の涙が流れた。
「目を開けてください……お願いです……」
唇を震わせ、言葉につまりながら発する結月。
その姿を、凛が唇を噛みながら見つめていた──
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