第七十二話「宮廷からの脱出」
22年前──
朔と凛、5歳。
二人は一条家の屋敷から外に出ようとした。
「いけません、朔様! これ以上外に出られては時哉様たちが心配なさいます」
「構わん。心配させておけばいい」
「それに宮廷の外まで出てしまっては、危険です。お戻りください」
「戻るのはいいが、そうなればここまでついてきたお前も同罪だぞ」
「──っ!」
子供心に凛は大人に怒られることを嫌がった。
何より、一条家の子息である朔を外に連れ出したとなれば、一族として責任を取る可能性が出てくる。
自分はともかく、愁明家に迷惑をかけることも避けたかった。
なんとしても凛としては、何事もなく早くここから朔を連れて戻りたい思いでいっぱいだった。
「朔様!」
「なんだ」
「今からでも遅くはありません。戻りましょう」
「また、それか。俺は一条家の暮らしが退屈になった。外の世界を見たい」
「では、こうしましょう。宮廷の裏門を知っています。そこから物資の荷車が毎日出ており、その時間がもうすぐです。その荷車に隠れて外にいきましょう」
「どうした? やる気になったのか?」
「違います。少しの間外に出れば朔様のお気が晴れるかと思いまして」
朔は怪訝そうな顔をして凛を見つめる。
「まあ、今日は少しでも構わん。いくぞ」
「はい!」
朔と凛は裏門へと駆けだした。
裏門の近くにはやはり、凛の話した通り物資の荷車があった。
朔と凛は目を合わせて頷くと、一気に荷車に向かう。
凛が布をはがすと、その間に朔が先に荷車に乗り、凛がすぐさま自分も乗って布をかぶせなおした。
しばらくすると、荷車はゆっくりと裏門へと向かっていく。
そのまま何事もなかったかのように、裏門を通過して城下町へと出た。
朔と凛は作戦が成功したことに、ほくそ笑んだ。
しかし、順調にいったのはここまでだった──
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