第七十一話「指揮官の葛藤」
「朔様っ!」
凛は押されている朔の様子を心配し、思わず声を発した。
(やはり、私は……私は……)
凛の中で葛藤が起こっていた。
指揮官としての責務と、幼なじみを心配する思い。
(おそらく、あなたは私に叱るでしょう。ですが、私はあなたが当主になったときに『命に代えても守る』と決めました。だから……)
凛は傷つく朔を見ながら、朔のほうへと駆けだした。
朔は徐々に憤怒する朱羅に力で圧されていた。
単純な攻撃でありながら、生物の弱点、相手の弱っている箇所を的確に狙って攻撃をしかけてくる朱羅。
「──っ」
太刀を振るう右腕を執拗に攻撃され、深手を負っている上に、攻撃の手数で負けている今、朔は普段通りの攻撃ができないでいた。
「どうしたあ?! 右腕が死んでるぞ? もう終わりか?」
朱羅は、攻撃の手を緩めない。
「少しは黙ったらどうだ」
朔は太刀にイグの力を込め、波動で朱羅を押し退ける。
すかさず、太刀を左腕に持ち替え、一瞬態勢を崩した朱羅に切りかかる。
朔の太刀は朱羅の右肩を切り、その攻撃により一瞬動きが弱まる朱羅。
しかし、その攻撃は朱羅の逆鱗に触れた。
「あの時と同じ……お前の親父も俺の右肩を狙ってきた。全く、とことん嫌な親子だなあ!!!」
朱羅の波動のような斬撃が朔に向かってくる。
朔に届くと思われたその瞬間、凛が目の前に立ちはだかった。
「──っ! 凛……」
凛は寸でのところで結界を施し、朔と自分の身を守った。
「朔……私はあなたの部下だ」
「……」
凛の言葉をじっと聴く朔。
そのまま凛は言葉を紡ぐ。
「だが、その前に私にとってあなたは、一人の幼なじみでもある。その幼なじみと共に闘いたい」
「……」
朔は少しの間の沈黙の後、一つため息をついて凛から目を逸らして言った。
「勝手にしろ」
「はい、勝手にします」
凛は朔に微笑む。
「話は終わったか? 俺にとっちゃ一人も二人も変わらねえ、一気に相手してやるよ」
「そうですか、では遠慮なく、お相手していただけますか?」
凛は今度は朱羅に微笑んだ。
そして凛は朔に向かって告げる。
「朔、あの日の約束を覚えていますか?」
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