表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/101

第六十二話「瀬那の記憶」

 瀬那は記憶の海に溺れていた。

 やがて、その海の向こうから幼き頃の記憶が襲いかかって来る。




「お母様っ! お母様っ!」


「瀬那様、離れてくださいませ!」


 瀬那の目の前で、母親が顔を歪めて苦しんでいる。

 母親の傍らには先ほど生まれた幼子がいる。


「奥様っ! しっかりなさいませ!」


「奥様っ!!」


 大勢の女中じょちゅうたちが、皆瀬那の母親に向かって声をかけている。

 瀬那は気が動転し、同じく母親に呼びかけるしかなかった。


(そうだ……お父様に知らせないと……)


 瀬那は抑え込む女中の腕をすり抜け、瀬那は部屋を飛び出した。


 父親のいる執務室へと向かい、廊下をひた走る──



「はぁ……はぁ……」


 足がもつれて転んでしまいそうになりながらも、瀬那は庭にかかった橋をわたり父親のもとへまっすぐ駆ける。



 次第に、数度しか訪れたことのない父親の執務室に近づく。

 瀬那は勢いよくふすまを開けると、そこには仕事用の着物に身を包んだ父親がいた。


「はぁ……おとう……さま……」


 瀬那は勢いよく走ってきたため、息が乱れてうまく言葉を紡ぐことができない。


「なんだ、許可なく入るなと母さんから聞かなかったのか?」


「お母様がっ!お母様がっ!危険な状態だと……」


 瀬那は子供ながらに必死に伝えようとする。

 しかし、父親の返答は無情なものだった。


「だからどうした?」


「……え?」


 瀬那は言葉を失った。


「私はこれから時哉ときや様のところに行かねばならぬ、様子を見に行く暇などない」


 父親は早足で瀬那に近づくと、そのまま何も言わずに通り過ぎていった。


「お父様っ! お母様がっ!」


 みるみるうちに遠ざかる父親の姿。

 瀬那が必死に叫ぶも、その歩みを止めようとはしなかった。




 その数刻後、瀬那の母親はこの世を去った。

 瀬那と生まれたばかりの娘を残して──

いつも読んでいただきましてありがとうございます<m(__)m>



この文章の下↓↓↓のほうにこの作品を評価するボタンがあります。


見えづらいですが、、、


また評価に加え、感想やレビュー(推薦文)も書いていただいて問題ございません!

むしろあなたのお声を聴けることが嬉しいです(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ