第六十一話「指揮をとるもの」
「朔様っ!」
「……」
凛の呼びかけに何も言葉を返さずに、いつものように椅子に座って頬杖をつく朔。
自身の呼びかけに応じない朔に対し、詰め寄っていく凛。
「私を瀬那と蓮人のもとへ行かせてください」
「ダメだ」
「なぜですか?!」
凛がここまで感情を出すことも珍しい。
それに対し、涼やかな顔で拒否する朔。
「瀬那と蓮人の気配が消えたのですよ? 私には彼らを守る責務が……」
「お前は信じていないだけだ」
「え……?」
「お前はあいつらを信じられず、さらに自らの職務を忘れている。お前の仕事はなんだ? 部下の心配か? 指揮官が己を失ってどうする」
「──っ!」
朔の言葉に目を見開き、言葉を失う凛。
凛は朔の言葉が痛いほど自分に突き刺さった。
(部下を信じれない……。私は信じていなかっただけ、あの子たちを……)
凛は指揮官としての未熟さを痛感していた。
自らの指揮のせいで傷を負わせてしまったと、まだ心のどこかで思ってしまっていた。
結果、それが部下を信じる気持ちを失わせてしまった。
(朔の言う通り……。私は部下を信じていなかった……)
黙り込む凛に、一つため息をつくと、朔は声をかけた。
「お前は指揮を執るもの。間違えるな、友情ごっこをしろと命じた覚えはない」
凛には、その言葉が強く響いた。
『指揮を執るもの』は常に冷静で戦況を把握し、次の一手を考える。
それができないものに、部下を守ることなどできはしない。
朔の叱責を強く噛みしめ、凛は顔を上げる。
「申し訳ございませんでした、朔様。冷静さを失っておりました。結月さん、実桜に伝令を飛ばし、向かってもらいます。私はここで指揮を執ります」
「ああ」
納得したように朔はうなずくと、再び書類に目を通し始めた。
凛は式神を出して伝令を飛ばす準備をする凛に朔が告げる。
「凛。抱え込むな。頼れ、俺を。あいつらを」
「──っ!」
凛は瞼を閉じて呼吸を整えると、式神を出して伝令を飛ばす。
(あなたの優しさには、いつも助けられていますよ)
凛はもうすでに自分から書類に目を移した朔に、心の中で礼を言った──
いつも読んでいただきましてありがとうございます<m(__)m>
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