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超能力の守護者  作者: プラナリア
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第二十八話 おわりのはじまり・5

 ――抜いたのが早い分、エンハンスの終了は向こうのほうが早くなりますね。

 防ぎ、相殺し、防がれる攻防の中、紬は冷静に状況を認識する。

 エンハンスは、元より身体に蓄えられるパワーが原資であるため、無尽蔵に続くわけではない。

 更に、そもそも体表面にパワーを縛り付けた状態を維持するのにも若干のパワーが必要で、永続でもない。

 持続のための消費量と、実際に行使して減少した量。

 新菜よりもしっかりとした感覚で、その残量を読みきった上での結論だった。

 ――わたしの残量も、仕留めきれると断言できる量でにはならないでしょうが……。

 紬は攻防を守備重視に切り替える。

 ――それでも、エンハンス終了のデメリットは大きいですから。

 紬は新菜の方を一瞬見やる。

 彼女は自分が不用意に近づいて紬の懸案材料を増やさないよう最低限の距離をとって、既に倒れた切絵たちと二人の間に立ち、油断なく構えている。

 ――流石ですね。

 交わした視線で新菜の考えを受け取った紬は、そのまま相手のエンハンス終了を待った。

 やがて、大将の身体にまとわりついたパワーがすべて消滅し、バイタルの脈動も小さくなる。

 オーバーヒート。

 パワーを異常な形で運用した影響で、超能力の発現に必要なものが疲労を貯めこみ、弱まる。

 普通の超能力の運用に差し障るほどに。

「今度こそ終わりです」

 紬は、そのウィークポイントをみすみす見過ごすような事はしない。

 防御の合間を鎌で刈り取り、そのまま残ったパワーを惜しげも無く使い、大将を追い詰めていく。

 舌打ちする大将に追撃を加えつつ、紬もエンハンスを終える。

「ぐげっ」

 大将の最後の声はあっけなく、情けないものだった。

 ばったりと、バイタルも全て失った大将が地面に倒れる。

 力の弱化でよろけるような事はないものの、オーバーヒートによる変化は新菜に伝わった。

「大丈夫?」

「平気です」

 駆け寄る新菜に一言返し、バイタル切れで戦線離脱している三人の方を見る紬。

「移動しましょう。更に手を打たれていたら困ります。わたしの状態が万全ではない事もおわかりでしょう」

 駆け出しつつ、懸念事項を口にする紬。

「ええ」

 新菜もまた、同じ状況を警戒しすぐに動く。

 が、得てして懸念事項は、起こりうるから懸念されるのだ。

 二人は足を止める。

「……早々逃がしてはもらえないみたいね」

「……ですね」

 二人は後ろを振り返る。

 四度目の襲撃。数は四人。

 流石に長期戦が続きすぎる。

 新菜は弘美が言っていた事を思い出す。

 超能力は、身体にしか変化を与えない。

 精神力は、身体に生まれた変化に付随して動きを変えるだけだ。

 当然、神経を張り続ければ精神に疲れが出る。

 切絵が判断力を大きく鈍らせたように、二人も強い疲労を感じていた。

 様子を伺い合う両者だが、新菜たちには余裕というものがなくなっていた。

 しかし、相手の攻めがズルズル続く事は、それだけ手の内をズルズル晒しているという事でもある。

「増援が減ってきていますね」

 最初が五人。増援が六人。二度目の増援が五人。そして今度は四人。

 確かに減ってはきていた。

「そうはいうけど……」

 とは言え、数に差があるのは変わらない。

「あなたまで弱気にならないでください。数人を相手にする手が、まだ一つだけ残っています。私が十秒で片付けますから、新菜は移動の準備をしていてください」

 紬は余裕を見せるように背筋を伸ばした。

 しかし、その喉は震えている。

「え……?」

 戸惑う新菜を他所に、紬は鎌を短く持つ。

「あなたになら背中を預けられます」

 紬の顔を見て、新菜は言い知れぬ嫌な思いを抱く。

 彼女の顔は、とても悲壮だった。

「いつかのご恩返しをさせてもらいます」

 新菜はその言葉に紬の行動の意味を察して切絵たちの方へ向かう。

 ――あんな顔、見たくなかった。

 新菜は思うが、それで何かできる状況にはない。

 敵が様子見を止め、一斉に紬へ駆け寄る。

 紬が、自分の腹に鎌を突き刺す。

 バイタルに阻まれる事無く、しっかりと突き刺さり、背中に抜ける。

「秘石は、使うものが狙った超能力者のバイタルを狩りつくします」

 その切っ先は、血には濡れず、青く光っていた。

 顔を歪めながらも、紬はそれを感じ、不敵な笑みを浮かべる。

「例えば……こんな風にです」

 鎌を濡らした青い光が、切っ先から滴り落ちる。

 地についたそれは、一度きらめいて、周囲へと広がっていく。

 一帯が青く染まる。

 新菜は青みがかった草原で切絵たちを抱き起こしながら、援軍の四人の気配が消えるのを感じた。

 そして、続くようにして紬の気配も消える。

「紬!」

 新菜は思わず振り返って駆け寄る。

 紬はそれより早く、鎌を刺したまま地に倒れた。

 青い光が消え、鎌も消え。代わりに傷口からから赤い血が広がり始めた。

 新菜は紬を静かに抱き起こし、傷を見る。

 綺麗に貫かれており、血流も多い

 ――とにかく、ここから出ないと。

 新菜は紬も抱きかかえるが……

 ――しつこい!

 新たな超能力者が新菜をハイパースペースへとつなぎとめた。

次回更新は五月二十六日金曜日予定です。

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