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超能力の守護者  作者: プラナリア
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第二十七話 おわりのはじまり・4

 紬は圧に押しつぶされていく切絵を見て歯噛みした。

 紬はあの技術を知っている。それどころか、自身も行える。

 エンハンス・コントロール。超能力者はエンハンスと省略して呼ぶ。

 身体の内から外へ放出する、通常のコントロールの枠から進歩したパワーの運用法。

 バンドと自身の研鑽という二つの制御技術の最終到達点であり、ハイパースペースにおける超能力の頂にあり、守護者や一部の重犯罪者や渡り鳥のような、ハイパースペースで超能力者同士のぶつかり合いを考慮する者にとっては必須の技術でもある。

 弱点もあり、それ故紬は用いるタイミングを見いだせなかったが、その力自体は凶悪だ。

 抜かずにいた自分を責め、紬は自分も弱点が晒される事を覚悟して目の前の相手を仕留めると決める。

 紬は鎌で相手を切りつけながら、少しずつ自分と相手の立ち位置を調整していく。

 相手二人が紬から見て横一列になる瞬間を作り、狙いすました横への一閃を繰り出す。

「……終わらせます」

 紬はつぶやくように自分に言い聞かせ、大きな横への一閃によるフォロースルーを超能力で打ち消す事をトリガーに、開かれたパワーラインに向けて全パワーを放出。大将より多くのパワーと引き換えに、時間をかける事なくパワーを身体に這わせた状態――エンハンスに移行する。

 よろける二人をまとめて、地面に突き刺した鎌の転移でザクザクと刈っていく。

 ――本当に、終わらせなければなりません。

 惜しげも無く超能力を振るいながら、紬は固く決意して、バイタルが枯渇するまで敵を捌いていく。

 丁度それが終わった頃、切絵のバイタルも感じられなくなる。

「……!」

 声にならない自分への憤りを目に宿らせ、紬は一目散に大将の元へと飛び込んでいく。

 飛んでくる水をかわし、地に鎌を突き立てる紬。

 総大将は大きく飛び退き、突き出た鎌が空を切る。

 次いで飛び来るウォータージェットに対抗するため、紬は無理やり鎌を自分の手前へと転移させ直す。

 パワーが乱れ飛び、攻撃は苛烈に。

 超能力が激突する。

 新菜は状況の激変に集中を奪われないように努め、目の前の金槌を防いでいく。

 ようやく完全に見切りが付いた。

 後は二人の動じ攻撃に晒されないように立ち回り、出来る事なら二人をまとめて、せめて片方だけでも手早く叩き伏せる。

 ――無理が効かないのが辛いけど。

 新菜は慎重に機を伺う。

 先の様子見で思い切り打たれたのが響き、バイタルが大きく削られていた。

 新菜はぶつかり合う超能力が巻き起こす風に吹かれながら、二人が同時に攻撃を振り切る瞬間を見切り、タイミングを読んで早めに動く。

 二人は計算高く、しっかり隙を確認してから反撃するなどという悠長な事を許してくれるような動きをしていなかった。

 読みは成功し、二人同時にトンファーで殴る事に成功する。

 二人を相手にする分、身体をしっかりと動かし、力も十分に乗せる。

 新菜は紬と大将のぶつかり合いを気配でチェックする。

 二人のバイタルは激しく脈打ち、その流れに体表面のパワーが押され、激流を生んでいる。

 ――これが「パワー」……。

 新菜は大将と紬がぶつけあう力と、自分の感覚に共通項を見つける。

 自分が超能力で強く身体を動かすたび、バイタルが小さくも、確かに脈打つ。

 背後で吹き荒れる風と同質の動き。

 ――これが「パワーの放出」。

 二人をまとめて得意の爆発する超能力の間合いに押し込み、自分のバイタルに力を込める。

 視線とは別に、新菜のバイタルから気配の波が発せられる。

 それに乗って、身体の隅々からパワーが流れ出る。

 流れでたパワーは、並の突端、間合いと知った爆発するべき場所にぶつかっていく。

 ――これが、「超能力の使い方」!

「弾けろッ!」

 声とともにパワーが空気を爆ぜさせ、二人を爆発に巻き込む。

 今まで感じきれなかった力の動きが、はっきりと覚えられた。

 ――あの現象のおかげね。

 新菜にとっては、感覚に触発されたこの認知は、自然とできてしまった超能力そのものの目覚めより直感的で、はっきりとしたものだった。

 新菜は目の前の二人を仕留めにかかる。

 距離が離れすぎたため追撃も出来ず、相手のペースで受け身を取られてしまった。

 近づく新菜を迎え撃つ二人。

 しかし、新菜はスッと攻撃を避ける。

 超能力の機序が身体に染みこんだ新菜は、相手の動きを五感だけでなく、バイタルという新たな尺度も交えて知覚できるようになった。

 勘が鋭くなったのだ。

 避けた刹那にしっかりと反撃する新菜。

 一人を捉えた新菜に、もう一人の攻撃が降ってくる。

 新菜は身体を少しだけひねり、返す刀の攻撃でそちらも捉える。

 再び二人をまとめて攻撃を叩き込んでいった新菜は、超能力の脈動というノイズを気配から取り除き、二人のバイタルがあと一撃で削れる事を認識する。

「仕留める!」

 思いの吹き出た言葉通りに二人まとめて蹴り技で仕留めた新菜は、紬たちの方を見る。

 大将と紬の戦いも、終焉を迎えようとしていた。

次回更新は5月19日予定です。

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