第二十六話 おわりのはじまり・3
新菜と同様に、紬もまた敵対する二人の動きに目が慣れ始めていた。
相手の得物はツルハシと杖。
事リーチに関しては、身長を超える鎌を持つ紬に大きく分がある。
新菜に比べると、遥かに立ち回りやすかった。
間隙を縫い間合いを作り、寄せ付けず刃の先を使って確実に防御を叩き、動きを制御する。
新菜もまた、金槌の間合いの外へとだんだん位置をずらしていく。
戦線は伸びてきたが、それは新菜たちの思惑通りのものだった。
大将が、流石に表情を強張らせる。
「しょうがねぇ……頃合いだ」
新菜は不意に襲ってきたパワーの圧力に気を取られる。
大将から溢れ出たものだった。
今まで感じなかった、超能力そのものが吹き出す圧力。
その中心で彼は一人、強く身を固めていた。
――やばいのが来る?
新菜はそう判断したが、
「隙をお見せになりましたね!」
切絵はついに焦りが先走り、身を固め準備に入ったタイミングを勝機と見て前に出てしまう。
切絵は大将の首めがけて抜刀した刀を振り下ろす。
確かにそれは、当たると見えた。
新菜も、結果的に刺さったと思ってしまった。
が、刀は振り下ろされず、何かに押し返される。
総大将の身体から吹き出したパワーだ。
それ自体が直接相手に干渉する程の密度を持ったパワーに切っ先を弾かれた切絵は、押されるまま吹き飛ぶ。
その間に、大将から溢れたパワーは身体に浮き出たパワーラインの上に固着していく。
新菜は何が起きているのか判断するため、金槌を一発もらいながらその様子を見る。
大将は放出したパワーを使わず、その身に這わせたまま、倒れこんだ切絵へと飛び込んでいく。
切絵は体制を立て直し、一発、二発、拳を防ぐ。
が、次いで超能力が彼女を襲う。どこからか現れた水が彼女の防御を脅かす。
ウォータージェットの要領で、強烈な攻撃がガンガン加えられていく。
これも防ぎ、放出されたパワーが消費されていくのを確認する切絵。
しかし、いつまでたってもパワーは消えない。今まで見てきた超能力者のパワーの使い方からすれば、そう何度も出来る威力の攻撃ではない。
――今までと、なにか違う……。
新菜は崩れたところに追撃をもらう。
視界が天地をめぐるため、気配を頼りに状況判断を試みる。
見られないと割りきった分、気配への感度が鋭敏になり、新菜はパワーの動きを追うことに成功する。
大将は、まとったパワーで超能力を発生させている。身体の中からではない。
今までとの違いがわかり、新菜は大将の行動の意味を理解する。
パワーは、身体から引っ張り出す事自体にもパワーを消費する。
現実世界より少ない量で可能なハイパースペースでも、それは十分な負担として新菜が体感できるレベルのものだった。
ある意味それは超能力のコントロールに寄与しているが、負担は負担である。
当然、パワーの消費量は身体から引っ張り出すパワーと、実際に何かを起こすパワーの足しあわせとなる。
大将は一旦パワーを出し、それを身体に沿わせて保持する事で負担を軽減している。
とにかく全開の一発でパワー放出の消費を終わらせ、残りのパワーすべてを超能力の発現に使っている。
安定させるのは難しいだろうが、出来た時には存分に力を振るえる。
つまり、下手に攻めると危険な状態だった。
切絵はその十二分を超える力に押しつぶされていく。
その様子にギリと歯を食いしばった新菜は、大きくバイタルを削られながらも、新菜は相手の攻撃の隙間に受け身を取り、金槌の男の方へと気を向け直し、受け身の瞬間を殴りに来た相手の攻撃をしっかりと受け止めた。
次回は5月12日金曜日更新予定です。




