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僕を目立たせないで!

「いってきまーす」

「いってきまーす!」


あれから朝を迎え姉さんと登校する。とりあえずいつも通り…かな?


「蓮君、先に言っておくね」

「え、何を?」

「今日お姉ちゃんは蓮君の膝の上に座って授業を受けます!」

「無茶言わないでよ!?いきなり何なの!?」


いきなり何を言い出すかと思ったらとんでもないことだった…っていうか先に言っておくねって意味ないじゃんか!


「だってだってー!じゃないと蓮君はきっと柚希ちゃんに…!柚希ちゃんにぃー!!!断固阻止ぃー!!!!」

「そんなことないから!むしろ今周りの視線が痛いよ!」


さすがにここまで大声をあげると登校中の生徒やらがこちらをジロジロ見てくる…まあ慣れちゃいるんだけど…


「やっぱり柚希ちゃんに奪われる前に…!蓮君!」

「ぼ、僕だってちょっとは展開読めるよ!先に言っておくよ?ダメ!!!」

「どうしてそんな冷たいこと言うの蓮君!?」

「こんな道端で何考えてるのさ!?これも毎回のことだけど!」

「いいの!気にしたら負けだよ蓮君!」


そう言い両腕を開く姉さん。てっきり抱きついてくるものかと思ったけど…な、何だろう?


「えっと…どうしたの?」

「…さあ!蓮きゅん!」

「そんなよだれまみれに突っ込みたくないよ!」

「興奮しちゃうからかな!?」

「前向きすぎるよ姉さん!」

「じゃあこっちからだね、蓮きゅん!恋は先手必勝ー!」

「何訳わかんないこと言ってんのー!」


なんだかんだゆっくりと近付いて来てる姉さん!更に周りの視線が痛くなる!


「そこで登場、柚希ちゃんよ」

「え!?あ、柚希!」

「む、柚希ちゃんめ!早速仕掛けて来たのね!」

「仕掛けるも何も蓮の貞操を守っただけです。変態の域を越えるとそれは犯罪となるらしいですよ」

「は、初耳だよ蓮君!?お姉ちゃんどうしよう!?」

「ぼ、僕に聞かれても困るよ…!」


っていうか変態の域を越えるってなんだ!?何が待ってるっていうんだろう…。


「とにかく梓さんを犯罪者にするわけにはいきません。予備軍止まりでいてください」

「でも予備軍なんだね…あはは…とりあえず歩きながら話そうよ…」


さっき以上に視線が増えてきた気がする…そんなに目立ちたくないのになぁ…


「そうね、賛成だわ。さ、いきましょうか蓮」

「う、うん?」


柚希が僕の左腕に腕を絡めて引っ張るように歩きだす。いっつもこんな強引だったっけ?


「ちょぉぉぉっと待ったー!蓮君はお姉ちゃんと一緒に行くの!悪いけど柚希ちゃんは後ろからついてくればいいの!」

「わわっ!姉さんまで!」


今度は姉さんが右腕に絡んでくる。あぁぁもう、視線が痛すぎる…。


「何を言ってるんですか、蓮はうんと言いましたよ?私は蓮の意見を尊重したまでです」

「違うもん!蓮君の意見は私の意見だもん!」

「では私も一緒に行って構わないということですね」

「ちーがーうー!私が蓮君と二人で登校したいって思ったら蓮君もお姉ちゃんと一緒に登校したいってことなのー!」

「ふ、二人とももうちょっとこう…お、穏便にさ…周りの目もあるし…」


周りから舌打ちやら何やらが聞こえるようになってきた…平和な日々はどこにいってしまったのだろう…今となっては…遠い遠い…お話…なのかな…。


「蓮、今私達は大事な話をしているの。邪魔しないでちょうだい」

「そうだよ蓮君!やっぱり柚希ちゃんには一度分からせなきゃいけないみたい…!」

「あら、どうするというのです?もう校門前ですよ」

「あ、ホントだ…」


気付いたら僕達はもう校門の前まで来ていた。通りで視線が強くなったワケだ…はは…。


「梓さんの昇降口はあちらでしょう?早く行かないと遅刻ですよ?」

「ぐぬぬ…蓮君!絶対!絶対柚希ちゃんに気を許しちゃダメだからね!お姉ちゃんとの約束だからね!フリなんかじゃないからね!?」

「フ、フリだなんて思ってないよ。でも確かに急いだ方が…」

「蓮もこう言っています。ふふ、ではごきげんよう梓さん」

「わわっ!ちょっと柚希!」


腕をぐいっと引っ張られて歩き始める柚希…!その拍子に姉さんの腕は解かれてしまう。


「もー!!!…でもしょうがない。蓮君ー!お昼時間になったらすぐ行くからねー!」

「う、うん、待ってるよ姉さん」


元気に手を振って走っていく姉さん。あ、朝から疲れた…。


「蓮…やっと二人で登校ね…ふふ…」

「ちょ、ちょっと柚希!?」


絡めてる僕の腕に頬ずりしてくる柚希!まだ僕の疲れは続くのか…!


「こらぁぁぁ!!!早く行かんかぁぁぁ!!!」

「わわっ、い、行こう柚希!」

「仕方ないわね…」


遠くで姉さんが怒っていた。怒らせると後で僕が大変なことになるのでそれは頂けない。




「…で、そろそろ離してくれないかな柚希…」

「嫌よ、このまま教室へ入るの。そして見せつけるの。私達の仲を…ね」


あれから、げた箱を通って教室へ向かう間も柚希はずっと腕を離してくれなかった…ど、どうしろと…とりあえずどうにか腕を離してもらおう!


「と、とりあえず離してってばっ。恥ずかしいよ…」

「ダメ。このまま教室へ入るの」

「ちょ、ちょっと…!」


強引に引き剥がそうとすると柚希は更に強い力で僕の腕にしがみついてくる。その拍子に姉さんほどではないにしろ、ちょっと柔らかいものが当たったりするのであまり強引に剥がそうとしても困ったことになるのだ…。


そしてとうとう教室の前まで来てしまう。ここでどうにかしないと居心地がどうとかの問題じゃなくなる!どうすれば…!

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