僕に安息の場はない!
ザバー…
「ふぅ…」
とりあえず夕飯を食べ終わってから僕はお風呂に入ることにした。昼寝しちゃってちょっと汗っぽかったりしたからね。
そして今、体を洗って湯船に浸かっているんだけど…
「…落ち着くと色んなこと考えちゃうな…」
今日あったことは正直かなり衝撃的だった。柚希…どういうつもりだったんだろう…ホント明日からどうなるんだろうなぁ…姉さんも激化して、きっと明日も今日みたいな感じのはず…
「はぁぁぁ…」
ホントどうなるんだろ…先行き不安だなぁ…。
「蓮くーん」
「え?な、なに?」
ドア越しに姉さんらしき姿が見える…。
なんだろう…すごくすごーく嫌な予感がする…。
「入るねー!」
「やっぱりいいいぃぃぃ!!!」
やっぱり服を脱いでバスタオルを巻いた姉さんが入ってきた!嫌な予感ほど当たるってこういうことか!
「お姉ちゃんの行動が蓮君に読まれていた!?でも何もしないんだねー…むふふ…」
「急すぎて対処出来るワケないじゃないか!?」
「でもこれでお姉ちゃんとのイベントリストまた更新だね!」
「イベントリストって何!?そんなの今までなかったよ!」
「色んなことあったよー?全部お姉ちゃんとのことに限るけどね!」
「どうでもいいから入ってこないでよ!?」
「ダメ!お姉ちゃんがルール!」
「何それ!?少しは人権くれてもいいじゃないか!」
「ねぇねぇ蓮君。こんな言葉知ってる?」
「え…な、何?」
少し真面目な顔をしながら唐突に話を変える姉さん…どうせロクでもないこと言うんだろうけど…
「蓮君のものはお姉ちゃんのもの!お姉ちゃんのものは蓮君とお姉ちゃんのもの!」
「やっぱりロクでもないねホント!それにちょっと不公平だし…何が言いたいの?」
「蓮君の初めてが欲しい!」
「何の話かな、姉さん!?とりあえず、よだれ拭って!」
「でもね蓮君!たとえお姉ちゃんのものになっても、それは同時に蓮君のものでもあるから!たとえお姉ちゃんに何を奪われてもそれは蓮君のものでもあるんだよ!」
「えーと…言ってることは確かにわかるんだけど…」
大体意味はわかるんだけど…結局何が言いたいんだろう…
「蓮君の全部ちょーだい!」
「台なしだよ!!!またよだれ垂れてるし!早く出てってってば!」
「わかったよもー…蓮君のいけずぅ…」
「とか言いながら何で扉閉めてるの!言ってること違うじゃないか!?」
「え?だってちょっと無理矢理の方が蓮君好きなのかなぁって…」
「意味わかんないからぁ!か、母さーん!」
「ふっふっふ…お母さんはテレビに夢中なのだよ蓮君!」
「そんな…父さーん…帰ってきてよぉー…」
「ねぇ…蓮君…?」
「うっ…な、何…?」
急に艶っぽい顔になる姉さん…!この顔は反則だ…!
「お姉ちゃんと…エッチなことするの…嫌?」
「い、嫌とかじゃなくて…その…や、やっぱり姉弟だし…さ。母さんもああは言ってるけど、もしそうなったらその…困るだろうし…」
「蓮君。お姉ちゃんは蓮君がどうしたいか聞いてるの」
僕の目を真っ直ぐに見て言う姉さん…そんなの答えは決まってるけど…決まってる…けど…。
「お姉ちゃん、蓮君が本心から嫌がってるんならやめるよ?でもお姉ちゃんにはそうは見えないの。ううん、そう思ってる。だからこうやって蓮君にいっぱいいっぱいアプローチかけてるの。それは…蓮君もわかってくれてるよね?」
「…うん………あ、姉さっ…!」
突然僕を抱き寄せる姉さん…!いつもと違って服越しじゃないからいつもよりもドキドキする…!
「屋上でも言ったけど…お姉ちゃんホントに本気なんだよ…?世間とか常識とか…そんなの気にならないくらい蓮君のことが大好きなんだよ?」
「っ…」
僕が動けないくらい抱き締める力が強くなる…!それにどうしてこうやって耳元で囁くように言うの…!背中が…ゾクゾクする…!
「だから…ね…?はむっ…」
「ひぁっ…!」
な、何今の…?耳たぶをちょっと甘噛みされた…の…?
「蓮君…耳弱いんだね…?じゃあもっと…はむっ…」
「うぁぁ!待って待って待って!!!姉さっ…!梓お姉ちゃん!!!」
「え…?れ、蓮君どうしたの…?」
「ま、まだ僕は答え出してないよ!それまでは…その…これ以上はダメ!」
僕を抱く力がちょっと緩んだのを感じて僕は姉さんを離す。危ない…!あれ以上は僕が持たない…!
「でもでもぉ…お姉ちゃんだって焦ってるんだよ…?今まで蓮君に好意を抱いてた子は何人か見てきたけど…柚希ちゃんみたいに行動には移さなかったし…だから今回は蓮君が取られちゃいそうで怖いの…!」
きっと今の姉さんも今朝の僕と同じ感情を抱いているのだろう…もしかしたら僕以上かもしれない…その気持ちはよくわかる…わかるんだけど…
「姉さん…僕も今日色んなことがあって混乱してるんだ…だからもうちょっと…考える時間が欲しい…かな…」
「…うん…蓮君がそう言うなら…。急にこんなことしてごめんねっ?あははっ…」
そう言ってお風呂場を後にする姉さん…。
なんだろう…最後の無理した笑顔を見るのが…すごく胸を締め付けられるような気分になる…しっかりしなきゃ…!
「しっかり…しなきゃな…」