<4-0> 切れた医者
何を隠そう、切れた医者とは、恥ずかしながらこの私めでございます。“切れた”といっても、手術の話しではありません。“怒った”ということです。(←(^ω^)いわなくても分かるよ)
めったに怒ることのない私でも、患者に怒ったことが過去に2回あるのです。(←(^ω^) たったの2…2回!)
外来診療をしていたときのことです。
外来棟には診察室が7室ありました。
各室を仕切るパーティションの天井寄りは隙間が開いているので、隣室の大声は筒抜けに聞こえます。
外来棟中央にある採血ブースの方から、患者の怒鳴り声が聞こえてきました。
大声が外来棟に響きわたり、当然のこと、診療に支障をきたします。
待てど暮らせどなかなかおさまりません。
診療を中断して、採血ブースに行きました。
40歳くらいの男性が、女性看護師に向かって大声で文句をいっているのです。
看護師は、
「すいません。すいません。許してください」
平身低頭して、何度も謝っています。
見たところ男性は普通の人で、特段、「 怖い」ような人ではありません。(←(^ω^)ああ、良かった)
何が問題なのか聞いてみました。
手違いで検査リストに名前が入っておらず、時間ぴったしに来たのに、30分も待たせてしまったというのです。
完全にこちらの手落ちでした。
何度も謝ったのですが、男性の怒りはおさまらず、検査を始められずに看護師も困りはてていたのです。
「申し訳ないことをしました。 すぐ検査を始めますからどうか許してください」
話を聞いて、私も頭を下げて謝りました。
謝っても、なかなか怒りはおさまりません。
なおも看護師に向かって、同じ文句をいい出したのです。
外来棟の中待合室にいるたくさんの患者さんたちは、迷惑顔でじーっとこちらを見つめています。
「看護師もこんなに謝っているのですから、許してあげてください。早く検査をした方が良くはないでしょうか」
再度説得したのですがやはりダメでした。
外来業務は止まったままです。
私はどうしたものかと、一瞬考えました。
少しの間をおいて突然、大声で叫びました。(←(^ω^)叫びながら自分も驚いていたよ)
「もうよしましょう!あなたも男らしく、許してあげたらどうですか!!」(←(^ω^)女でもだよね)
男性患者よりも大声です。
中待合室は水を打ったようにしーんとなりました。
(ああ、どうなっちゃうの~)
一瞬頭の中で時間が止まりました。
まもなく、
「そうですね」
迫力が通じたのか、彼は素直におれてくれたのです。
私はすぐさま患者さんの肩に手をやり、
「大声を出してすいませんでした。これから注意しますから許してくださいね」
彼も頭をかきながら、
「私も大人げなっかったです」
笑顔の握手で仲直りをし、すぐさま検査を始めたのです。
もしその時、患者さんがさらに大声で怒鳴りまくったなら、外来棟は大騒動になっていたことでしょう。
そうならなくて、私はホッと胸を撫でおろしたのです。(←(^ω^) これを神の助けというのかなあ)
〈つづく〉
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│いのうげんてん作品
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│①著作『神との対話』との対話
│ 《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》
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│②ノンフィクション-いのちの砦
│ 《 ホスピスを造ろう 》
│
│③人生の意味論
│ 《 人生の意味について考えます 》
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