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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
7章 私の高齢者医療の実際
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<9> 慢性期病院での病状説明のし方

<9> 慢性期病院での病状説明のし方


 私は今、認知症専門の精神科病院に内科医として勤務しています。


 慢性期の病院では、家族への病状説明は、急性期病院以上に大事な仕事になります。


 そこで私なりのそのやり方を書いてみます。


 患者の病状については、常日頃から、キーパーソンや家族に、面会あるいは電話で、随時、説明をしておくことが大切です。


 事あるごとにそれを伝えておくことです。


 病状説明で最も難しいのは、患者さんが急変した時です。


 つまり安定していた患者さんが、 例えば誤嚥、心臓病などで急変した場合です。


 そういう時は、キーパーソンや家族に、その状況を受け入れてもらえるように、話し方、内容を熟慮する必要があります。


 私の場合は次のようにしています。


 総論的に言いますと、私は相手の反応を見ながら、状況を「少しずつ」話すことにしています。経験的に、そうした方が相手の受け入れがスムーズだと思うからです。


 具体的に書いてみます。


 まず、急変したことをキーパーソン(家族)に電話で連絡します。


 事実を伝えますが、少し婉曲えんきょくに言います。


 例えば、食事を詰まらせ窒息状態にあった場合、「食事中に誤嚥して呼吸状態が悪化しています」などと婉曲な表現にします。(「窒息」はショッキングな表現ですからね)


 その説明に対するキーパーソンの反応を見ます。


 驚いてパニクっているような場合は、とりわけ注意が必要です。慎重に言葉を選び、事を運びます。


 早急に来院をお願いしますが、たとえ心肺停止で蘇生術をしている場合でも、「状態が悪いので、来院してください」とだけ話します。


 近辺にいてすぐ来院できる場合は別ですが、少し遠方に居る場合は、1時間ぐらいはかかります。


 この時間をじょうずに使います。


 到着までの間に、1~2回再度電話を入れ、徐々に病状の詳細を説明していきます。今はみんな携帯電話を持っていますから、それができます。


 2度目の電話で、「今蘇生をやっていますが、ひょっとしたら間に合わないかもしれません」というような、少し厳しめの電話を入れるのです。


 そしてその家族の反応を見ます。


 一般病院の急性病のような場合と違い、当院のような慢性病でしかも高齢者の病院では、入院時すでに、そういう事態もあり得るという話を十分にしてあります。


 その時、「無理な延命はしない」という了解をとり、文書にしています。


 なので、「間に合わないかもしれません」というような言い方ができるのです。


 さらに時間がある場合は、3度目の電話を入れます。


「これ以上やっても無理な延命になるのでどうでしょうか」


 家族に聞いてみます。


 受け入れをしている家族は、「わかりました。無理なことはやめてください」と返事をします。


 このように段階を追って徐々にその状況を説明していくと、ほとんどの家族は受け入れてくれます。


 受け入れのできていない家族の場合は、家族が到着するまで、点滴とか酸素あるいは蘇生術などを続けるのが良いと思います。


 蘇生している現場を見ると、ほとんどの家族は受け入れてくれるものです。


 回復不可能と判断された時は、家族が到着するまで蘇生行為をずうっと継続する必要はありません。


 到着直前に、ある種パフォーマンスのように行うのです。


 心臓マッサージを目の当たりにすると、「もうそれ以上無理なことはやめてほしい」とほとんどの人は思うものなのです。


〈つづく〉


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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────


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