<8-2> ベッドに寝かしっぱなしはダメ ②点滴でべッド上安静
<8-2> ベッドに寝かしっぱなしはダメ ②点滴でべッド上安静
高齢の患者さんは、ベッド上に寝たきりにしておくと、天井ばかりを見ていて刺激がなく、1週間で認知機能が落ち、ADLも低下してしまいます。
これは事例その2です。
②点滴でべッド上安静
この(2023年)7月、私の病院で4年ぶりに、コロナウイルス以外の、強い上気道炎の症状を呈する病棟内感染を経験しました。(ちなみに私の今の勤務先は、認知症専門の精神科病院です。)
5週間で36人(べッド総数56人)の患者さんが感染しました。
うち2人が肺炎になり、1人は治癒しましたが、もう1人は重症化して亡くなりました。
軽症者には、麻黄湯を主にして治療しました。この治療でほとんどの人が治りました。
食欲不振などの症状の重い人には、補液を行ない、必要なら抗生物質を点滴の中に入れました。点滴を必要とした人は10人弱でした。
そういう状況下で、長い人は2週間くらい点滴のためにベッド上安静を強いられました。
高齢者ではベッド上安静を強いられると、認知機能や筋力はすぐに衰えてしまいます。
なので、なるべくベッド上安静は短期間にしなければいけません。
病状さえ許せば、点滴も車椅子に乗せて行うことも必要です。心身の機能低下を招かないための方策です。
重症な場合はベッド上安静を要しますが、急性期を乗り越え、栄養補給のために点滴をしているような患者さんは、午前、午後の1回、車椅子(できればリクライニング車椅子)に乗せて点滴をし、そしてホールに出すのです。
きわめて有用な方法です。
ベッド上安静では、天井や壁ばかりを見つめていて刺激がありません。
車椅子に乗せて、患者さんが周囲の人々の動きや様子を見ることができるようにすると、脳にすこぶる強い刺激を与えます。
車椅子に乗せたとたんに、顔つきが変わります。
今回、101才の女性患者さんが軽い肺炎を合併し、点滴のために2週間のべッド上安静を要しました。
ベッド上ではいつも傾眠がちでした。
それを見て、まだ完治はしていませんでしたが、車椅子に乗せてホールの中に出しました。
すると彼女は、すぐに自分でコップを持って飲むようになりました。笑顔も見られるようになり、表情が生き生きとしてきたのです。
2か月後には、罹病前の元気な状態に戻りました。
高齢患者さんがベッド上を強いられた場合、認知機能やADLの低下をいかに防ぐかが、一番重要なこととなります。
そのためには、べッド上にあっても、なるべく上体を起こして刺激を与えることです。
視覚、聴覚を刺激することです。
まず少しの間でもいいので、人々の動きがわかるように、ベッドの上半身側を起こし、半坐位にします。
これだけでも大きな刺激になります。
そしてできれば、ホールにいる他の患者さんたちと触れ合うことができるように、ベッドごとホールに出すのもいいと思います。
ホールに出し、みんなが見えるような状態にすると、顔つきがその瞬間から変わります。
それは手に取るようにわかります。
焦点の合わないぼんやりした顔つきが、しっかりした顔つきになるのです。
人はやはり、人間(人の間)なのです。
〈つづく〉
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│いのうげんてん作品
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│①著作『神との対話』との対話
│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》
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│②ノンフィクション-いのちの砦
│《 ホスピスを造ろう 》
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│③人生の意味論
│《 人生の意味について考えます 》
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│④Summary of Conversations with God
│『神との対話』との対話 英訳版
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