表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
7章 私の高齢者医療の実際
269/329

<1-7> (1) 食べさせ上手 ⑦ 最後まで経口摂取を試みる

<1-7> (1) 食べさせ上手 ⑦ 最後まで経口摂取を試みる


挿絵(By みてみん)


 私は終末期の患者においても、最後まで経口摂取を試みる、「食べさせ派」です。


 衰弱して死に近づくと、ただ点滴を500ccほど入れる毎日になります。それも血管ルートが取れずに入らなくなることもあります。


 私はナースたちに、「死に水を取る」と思って、少しでも水分をあげてくださいとお願いします。


 「死に水を取る」とは、調べてみると、死亡後に自宅などで安置された遺体に末期まつごの水を与えることをいいます。


 しかし本来は、お釈迦様が亡くなる間際に水を求めたことから、末期の水は死亡する直前に行うものだったようです。(参照:https://ansinsougi.jp/p-137 )


 私の言う「死に水」は後者ですね。


 ナースたちは、衰弱した人に口から物を入れると、誤嚥して肺炎を起こしたり、時には窒息のようになったりするので、それを恐れて何も入れなくなります。


 ただ点滴をするのみの日々が続きます。


 あるとき私は気づきました。内服の薬を出せば必ずナースはそれを飲ませます。


 これはナースの大切な仕事の一つなので、処方された経口薬は最大限努力して飲ませるのです。


 そこで考えつきました。


 特別害にもならない薬、例えば消化剤あるいは去痰剤などの薬を、毎食出すのです。


 するとナースは、よほどのことがない限り、その薬の経口投与を試みます。


 薬を飲ませるには、何がしかの水分が必要です。トロミをつけた水分で飲ませます。すると嚥下えんげするかどうかが分かります。


 逆にこれをやらないと、患者さんの嚥下機能の現状は分かりません。


 経口摂取させて痰がらみが強くなったりすると、それ以後、その申し送りを受けたナースは、試しもせずにそのままそれをいつまでも踏襲するからです。


 結果、患者はさらに衰弱していきます。


 それを防ぐために私はこれを考えました。


 何食わぬ顔をしてビソルボン(去痰剤)を処方するのです。すると経口投与は続きます。


 そしていよいよその薬も飲めなくなったとき、ナースはそれを報告してきます。


 その時に初めて、経口摂取を中止にするのです。


 これが私の秘密のやり方です。案外これが有効なのですよ。


 ただいよいよという時に、ナースが水攻めのようで可哀想だと言ってくることがあります。


 そういう時は私も観念して、経口を中止するのです。


〈つづく〉


┌───────────────

│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ