表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   私の診療心得
259/329

<4-17> 私の診療心得 ⑰ 「先行く者がやって見せる」

<4-17> 私の診療心得


⑰ 「先行く者がやって見せる」


 私は現在、認知症専門の精神科病院内科に勤務しています。


 どんな仕事でも、先行く者あるいは上に立つ者が率先してやってみる、ということが大事なことだと私は思います。


 先行く事は相当の困難を伴います。


 登山ルートには名前が付けられていると聞いたことがあります。そのルートを見い出した先人の努力を讃えて、その人の名前を付与するというのです。


 それほど先行く者は大変なのです。


 医療現場でも、誰かがまずやってみる、ということが必要になる時があります。


 私の場合は、誤嚥性肺炎を起こした患者さんに、初めて経口摂取を試した時がそうでした。


 スタッフたちは、また誤嚥するのを怖がって、みんなそれを先送りします。


 前任者がそうすると、それを良しとして後任者も同じことをします。試すことを最初からスルーしてしまうのです。


 そしてそれが一つの定式のようになってしまいます。


 そんな時に、まず医師が率先してやってみることが必要になります。


 私がまず挑戦してみます。


 安全な方法を考えました。


 小さな氷をガーゼに包んで、患者さんの口の中に入れます。


 すると、冷たい物が口に入ったことにびっくりして、患者さんは口を動かしたり舌で氷を舐めたりします。


 そして、溶けた氷の水を、嚥下できる人は飲み込みます。


 それによって、嚥下能力を評価することができるのです。


 嚥下能力ありと見られた患者さんには、回数を増やしたり、水から固形物に徐々に移行していきます。


 もし誰もこれをしないと、いつまでも先送りになって、経口摂取をしない時間が長くなります。


 嚥下機能はさらに低下し、体は衰弱します。


 さらに、食べること自体を患者さんが忘れてしまうということさえ起きます。


 このように、危険性があって、実行することが躊躇されるとき、勇気を持ってそれを実行する先駆者が必要になります。


 その試行錯誤の結果で、次に何をするか、できるかが分かります。


 危険を恐れて誰も手を出さないでいると、それが常態化して、ついには患者さんは衰弱して死に至るということがありうるのです。


〈つづく〉



┌───────────────

│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ