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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   私の診療心得
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<4-8-2> 私の診療心得 ⑧-2 「死と向き合う」ーお別れをセッティングする

<4-8-2> 私の診療心得 ⑧-2 「死と向き合う」ーお別れをセッティングする


 全身の衰弱が進み、亡くなる日が目に見えてくるようになった時、どのように家族とのお別れをさせてあげるかは、医療者の大切な仕事だと思います。


 死というのは、残される家族にとって、精神的にも物理的にも大きなストレスになります。


 死が近いといってもいつ亡くなるかはわかりません。突然亡くなったときにも、残される者が悔いを残すことのないよう配慮します。


 臨終に立ち会うこと以上に私が大切にしていることは、残される家族にとって、「今生こんじょうのお別れをした」と納得し受容できる気持ちを作ってあげることです。


 呼びかければ少しでも開眼して、声が聞こえているような素振りが見える時に、家族に面会してもらうことがベターだと思います。


 そして私はその面会直前に、家族にこうお願いします。


┌----------

これが今生の別れだと思って、声に出さなくてもいいので、


「どうもありがとうございました。あなたとの人生は本当に良い人生でした。お疲れさまでした」


とお別れの言葉を(心の中で)言って、自分自身も納得してください。


きっと本人もそれを聞いておられると思います。

└----------


 そして心の準備と同時に、社会的準備つまり遺産相続や葬儀などの社会的な準備もするように、お話しします。


 患者さん(母)と家族(長男、長女)との良いお別れをさせてあげたいと、スタッフみんなで計画した事例があります。6章<4-7-1> 私の診療心得⑦-1 「患者さんや家族に良い思い出を作ってあげる」に書いた事例です。


 簡略化して再掲してみます。


 長男さんのお母さんは80代の重度の認知症でした。


 誤嚥性肺炎を繰り返して、その都度、一般病院の内科に移っては、治療を受けていました。


 多動が見られ、精神科病院入院中は、完全に身体を拘束されていました。


 長男さんは、拘束された母親を見かねて、当院に連れて来たのです。「一切の拘束はしない」というのが当院の基本理念だからです。


 すぐ誤嚥をするので点滴で栄養をまかない、いっさい口からは食べさせていませんでした。


 ナースが食事介助する様子を見ながら私はふと思い付き、


 ベッド上45度くらいの半坐位で、かつ左を下にする側臥位にして食べさせてみました。


 すると、ごっくんと、むせなく飲めたのです。


 それ以降、少しずつ食べられるようになったのです。


 食べると誰しも笑顔が出ます。


 入院の時、心配気に付き添っていた長男長女さん2人に、その姿を動画に撮って送りました。


 2人は大喜びでした。


 そこで、笑顔が出て、わずかではあってもコミュニケーションのとれる時に、母親との最期の良い思い出を作ってもらいたいと思い立ち、病院にお願いして、コロナ下でも特別な面会をセッティングしたのです。


 ところが非情にもその前夜に、患者さんは脳梗塞を併発して昏睡となってしまったのです。


「呼びかけたら手を握り返してくれた」


 長女さんは泣いてそう言っていました。


 それからしばらくして亡くなられました。


 遺体をお見送りする時に長男さんは、涙を流しながらも、りんとした態度で、お礼の言葉を語られました。


「母はこの病院に来て幸せでした」


 悲しみに暮れながらも、今生の別れを受け入れて下さったのです。


〈つづく〉



┌───────────────

│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────



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