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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   病院寸話(月例朝礼・会議などでの寸話)
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<3-25-3> 病院寸話《54. その一言(ひとこと)が…… ③ケアマネの一言》

<3-25-3> 病院寸話(月例朝礼・会議などでの寸話)


《その54 その一言が…… ③ケアマネの一言》


挿絵(By みてみん)


 ことあるごとに文句をいう人がいます。いわゆるクレーマーといわれる人です。


 ある時、病棟師長から、入院患者Aさん(90歳)のキーパーソンについて相談がありました。


 長男がキーパーソンで、病院に来るたびに受付やナースたちに文句を言います。服に食べ物の汚れがついていた、爪が長いなど細かいアラ探しのようなクレームです。


 彼はクレームをつける割には、来院しても奥さんだけを病棟に行かせて、1階の玄関ホールで休んでいます。実の母親であるAさんには会おうとはしません。


 来院するたびに文句を言われては、スタッフも気分が悪くてやっておれません。


 そこで師長が私に相談に来たのです。


 Aさんは、入院した当初はヨロヨロですが歩けていましたが、次第に衰弱して歩けなくなりました。


 入院して1年ほどたった頃、容態も悪くなったので、長男に病状を話しました。


 彼は、風貌や態度がやはり普通ではありません。私に対峙して椅子に座り、足を投げ出しています。


「最善は尽くしますが、亡くなられることもありえます」


 私は丁寧に話しました。


 すると長男は、


「最善を尽くすと言っているのに、やってもみないで亡くなるかも、とはおかしな話しじゃないか」


 屁理屈を言います。


 話しはどうどう巡りで、結局はこれ以上やれる治療はないことを受け入れてもらえませんでした。


「当院ではこれ以上無理なので、他の病院を当たってみたらどうでしょう」


 そう言いたかったのですが、「責任放棄だ」とまたまたクレームを付けられそうで、言えませんでした。


 ナースセンターでの話し合いの場に、女性ケアマネージャーが同席していました。


 帰り際、1階の相談室で、そのケアマネージャーが一言、


「他の病院を当たってみられたらいかがでしょう」


 とたんに長男の顔色が変わりました。


「いえいえ、そんなことはもうとう考えていません。どうかここに置いてください」


 突然、低姿勢になりました。


 彼は、母親の入院できる病院はここしかないと分かっていながら、好き勝手なことを言っていたのです。


 根っからの、あまのじゃくだったのです。


 私が1時間近く話して駄目なのに、ケアマネージャーの1分の一言でひっくり返る豹変ぶりに、驚き、感心しました。


───────────────


〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

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