<3-23-4> 病院寸話《48. 目からウロコが落ちる ④別の切開創から穴を探す》
<3-23-4> 病院寸話(月例朝礼・会議などでの寸話)
《その48 目からウロコが落ちる ④別の切開創から穴を探す》
これまた専門的な話であいすみません。
男性患者の右鼠径ヘルニアの手術をしている時です。
型通りに皮膚切開をして、ヘルニア門とヘルニア嚢を探します。
ちなみに、ヘルニアという病態は、ヘルニア嚢という袋と、その中に入り込む腸管などの内容物からなります。(⇒図)
図
ところが、なかなかヘルニア嚢が見つからないのです。
ヘルニア嚢の周囲は、脂肪組織が取り巻いています。
なので、その脂肪組織をきれいに剥離しないと、なかなかヘルニアの本体であるヘルニア嚢を見つけ出すことはできません。
脂肪組織を、ピンセットでほじくったり裂いたりして探しましたが、ヘルニア嚢は見つかりませんでした。
さて、どうするか。
このままギブアップして手術を終えれば、当然のこと、また、ヘルニアが出てしまいます。
患者はもとより医者も困るわけです。
しばらく考えました。
すると以前に、先輩医師に言われたことを思い出しました。
「もっと上の方(医学的表現では頭側)にもう一つ切開を入れて、その創からヘルニア門を探せばいい」
同じような手術例に出くわした時に、先輩は、そう教えてくれました。
つまり、ヘルニア手術の切開創よりもやや頭側(3~4cmくらい)に、もう一つ切開を入れるのです。だいたい虫垂切除の時の位置です。そして虫垂切除時のように筋層を開き腹腔内に到達します。(皮膚切開は、ヘルニア用に施行した切開を延長しても、別口でもいいでしょう)
そして腹腔内に示指を突っ込んで、足側のヘルニア門を腹腔の内側から指で探るのです。
ヘルニア門というのは、腹壁の脆弱なところです。示指で探していくと、穴が開いたような腹壁の弱いところがあるわけです。
そうして探しているうちに、直径2.5cmくらいの穴が見つかりました。ヘルニア門です。
そこに指をさらに押し入れ、周囲の脂肪組織を剥離しヘルニア嚢を見つけ出すことができました。
後は型通りにヘルニア嚢を切除して、腹壁を補強し、一件落着しました。
「頭側にもう一つの切開を加える」は、私には「目からウロコ」の発想でした。
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〈つづく〉
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