<3-14> 病院寸話 《34. 医療はアート》
<3-14> 病院寸話(月例朝礼での寸話)
《34. 医療はアート》
私の勤務する認知症専門の精神科病院で、今年(2022年)2月に、コロナの院内感染を経験しました。
私の担当する第2病棟(総数55人)では、1月30日からの5日間で、感染者が50人にのぼりました。
オミクロン株は確かに感染力が強力であることは間違いありません。
病院のコロナ対策ルールで、病棟スタッフは一度病棟に入ると、夜、退勤するまでは病棟から出られません。
各病棟には職員専用トイレがあり、ナースステーション奥には10畳ほどの休憩室があります。1日中、病棟内で過ごすのです。
スタッフ全員が病院で用意されたN95のマスクや防護服、防護キャップ、手袋(人によってはフェイスシールド)を着用して黙々と働いていました。
防護服は色がブルーなのでひときわ目立ちます。スタッフが患者さんの集まるホールを行き交う光景は、まさに戦場の病院のようです。
私は若い頃、カンボジア難民の救済にタイの難民キャンプで診療したことがあります。その時より、はるかにひっ迫した光景でした。
師長のてきぱきした指示で、 みんなたんたんと働いていました。
院内感染発症から5日目までに、第2病棟スタッフ24人中半数の12人がコロナに感染し、6日間の自宅待機となりました。スタッフの半数が欠勤となったのです。
半数が欠勤となると、病棟は回らなくなります。特に当院には、介助が必要な人が多く、食事、身体介助に人手が要ります。半数が欠勤となった現場では、介助だけで手一杯という状況でした。
医者は重症化しそうな患者の治療が主な仕事です。
それは10人に満たない人数で(総数55人中)、それを治療すればあとは医者の仕事はありません。
といってもスタッフたちは病棟を走り回っています。私は少しでも手伝おうと、時間があれば電話番をやったり、処方箋などを運ぶ運搬係をやりました。
電話番や運搬係をやりながら、私はスタッフたちの行動を見ていました。
自分も感染するかもしれない状況下でも、黙々と師長の指示に従って患者のケアをしている姿は、美しくもあり、神々(こうごう)しくもありました。
「医療はアート(芸術)である」といわれています。真摯に生命と向き合う姿はまさにア―卜であり美しいと私には映ったのです。
医療技術と愛情が一つになると、医療は芸術に達すると私は思います。医療者はそこに到達するのを目標にしたいものです。
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〈つづく〉
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│いのうげんてん作品
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│①著作『神との対話』との対話
│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》
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│②ノンフィクション-いのちの砦
│《 ホスピスを造ろう 》
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│③人生の意味論
│《 人生の意味について考えます 》
│
│④Summary of Conversations with God
│『神との対話』との対話 英訳版
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