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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   病院寸話(月例朝礼・会議などでの寸話)
177/329

<3-9> 病院寸話 《21. 思い入れと思い込み 22. 量から質への転化 23. 合理化》

<3-9> 病院寸話(月例朝礼での寸話)


《その21 思い入れと思い込み》


挿絵(By みてみん) 


 思い入れと思い込み、どちらもよく似た言葉です。しかし紙一重の差で違っています。


 思い入れとは、物事に思いを入れること、つまり物事に熱心になることですが、その中で自分を見失ってはいません。


 これに対して思い込みとは、思いを入れるまでは同じですが、その中に埋没してしまって、自分を見失っています。


 ですから回りが全く見えません。まわりから見れば、何とおかしなことをしているのかと見えるのですが、本人は回りが見えませんから、それに気がつきません。


 思い入れはしても、思い込みはしてはいけません。そのためには時々客観的になってみる必要があります。


 それには第三者の意見を聞くこともいいでしょう。その場からしばらく離れてみるのもいいでしょう。


 いずれにしても、その中に埋没してしまって、回りが見えなくならないようにすることが大切だと思います。


 疲れたら休むことが肝要です。眠るのもよし、美味しいものを食べるのもよし、他の楽しい事をするのもよし、です。


 疲れている状況から離れてみると、心身がリフレッシュされて、新しい視点と新しい考え方で、それに望むことができるのです。


───────────────

《その22 量から質への転化》


 この言葉は、マルクス・エンゲルスが、弁証法的唯物論の中で述べている法則の1つです。


 マルクス・エンゲルスは、資本主義は自然の摂理によって社会主義、共産主義へと革命されると、この弁証法的唯物論を使って、革命理論を構築しました。今ではそれは間違いだったことが証明されたわけですが、その唯物論の法則にもうなずけるものがあります。


 その中の1つが、この量から質への転化というものです。


 これは、物は量がある程度まで膨大になると、質的変化をもたらすというものです。


 例えば、水はだんだんと温度が上がっていくと、ついには沸騰して水蒸気になります。逆に、どんどんと冷えていくと、氷になります。つまり質的変化を起こすのです。


 この病院でこの法則をあてはめてみれば、これまで再建のために、スタッフの数、患者の数、収入金額の増大など、量的側面ばかりが重視されてきました。これは、それが少ない間はその量を増やすことばかりが注目されたのですが、だんだんと増えてくると、今度は質的な変化をしなければならないことになります。


 例えば、病院のあり方そのものが問いただされなければならなくなります。今の病院のあり方が、地域のニーズに本当に合っているのか、それを点検し、合っていないところがあれば改善しなければなりません。


 そして、病院の運営自体も見直さなければなりません。例えば、外来における二診制の導入、受け付けから会計までの流れの点検、患者の受け付け順番や待ち時間対策など、細かな点は上げれば数限りなくあります。


───────────────

《その23 合理化》


 不況の時代に、すべての企業はその合理化に血眼になっています。製造工程でのコンマ1秒単位の短縮化など極限までの企業努力がなされています。


 あるテレビで紹介された製造工場では、従業員が歩く歩数までカウントして、時間短縮を図ろうとコンマ1秒の戦いをしていました。


 これに対して医療界はどうでしょうか。まさに規制によってがんじがらめです。ベッド当たりのスタッフの数、外来患者当たりのスタッフの数が完全に決められていて、それを算出する計算式まであります。


 病院の採算を合わせるためには、合理化するか患者数を増やすしか方法はないのですが、その両者とも規制によって実行ままならないのです。


 例えば合理化しようと思えば当然スタッフ数を減らすことになるわけですが、患者当たりのスタッフ数が決められており、それを遵守しないと注意ひいては営業停止となります。患者が増えれば増えただけスタッフもそれに見合うだけ増やさなければならない仕組みなっていますから、合理化しようにも出来ないのです。


 これは昭和23年に作られた医療法に基づいているのですが、その当時の日本の医療界は、粗悪な状況にあったところに、進駐軍(米軍)が刷新しようとしてこういった法律を作ったものと考えられます。それによって日本の病院の水準を高めることができたと好評価はできますが、今日の医療界にあっては、保険財政のひっ迫に合って、桎梏(しっこく:身動きがとれないこと)化していると言わざるを得ません。


 日本の医療制度は、医療保険制度と医療機関制度の二本柱で運営されてきました。医療機関は、私的機関が圧倒的に多く、今まで、いわば病院を建てるのは、民間に任しておいた、というより民間だのみだったのです。


 その制度を、政府は保険制度で規制してきました。規制に従わないと、保険がききませんよという殺し文句で、医療機関を縛ってきたのです。


 介護保険も言ってみれば、高齢社会を迎えて医療保険ではまかないきれない分、高齢者の慢性病は医療から切り離して、安く済ませようという発想でしょう。


 社会的入院、つまり自宅に戻れる能力はあっても家族が受け入れられないとか、独居生活なので退院が無理だといったものは、確かに介護保険的発想で合理的に安く済ませるのもうなずけます。


 ところが、冬の高齢者病院のインフルエンザ集団発生を見ると、厚労省は医療機関の院内感染対策のずさんさを指摘していますが、高齢者医療をそういった方向に誘導しているのが厚労省そのものなのです。


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〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

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