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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   病院寸話(月例朝礼・会議などでの寸話)
175/329

<3-7> 病院寸話 《18. 良いことをするのに遠慮は不要 19. 人生は成長のツールを提供する》

<3-7> 病院寸話(月例朝礼での寸話)


《その18 良いことをするのに遠慮は不要》


挿絵(By みてみん)


 ある病院に勤務していた時のことです。


 見るからに労務者風の、薄汚れた服装をした男性が病院にやって来ました。


 診察すると、「血痰が出る」というのです。


 前から体調が悪かったのですが、病院を受診することはできなかったのです。


 胸部レントゲン写真を撮ると、結核様の空洞が見られました。


「これは結核だ!」


 保健所に問い合わせると、結核専門病院に転院させるよう指導されました。


 しかし夕方遅くのことで、結核病院はすでに閉まっていました。


 そこで、この病院に1泊させることにしたのです。


 といっても、 結核の専門病室はありません。


 結核が感染してしまう危険があるので、一般病室の患者さんといっしょにするわけにはいきません。


 病棟の外れに、病室ではありませんが、倉庫用の1室がありました。


 その1室に布団を敷いて、入院させたのです。


 事務の人に食事を運んでもらいました。


 近くにトイレがあったので、トイレの時だけは室外に出ることを許可しました。


 そして何事もなく、一夜が過ぎました。


 男性はお礼を言って、結核専門病院に転院していきました。


 そのすぐ後、受付の人が私の所にやってきました。


「すいません、ご迷惑をかけました」


 平身低頭、謝るのです。


「どうも様子が変で、受け付けていいか困りました。自分としては見てあげたいけど、病院に迷惑がかかるんじゃないかと……」


 私はその時言いました。


「人助けをすることに遠慮はいりません。 まず、命を救うことを考えましょう。それが私たち医療者の務めです」


 良いことをするのに遠慮する必要はないのです。


 もちろん病院は、まったくの奉仕事業ではありませんから、採算面も考えなければなりません。


 が、人間の命を救うという基本的な使命感を失ってはいけません。


 その心をなくした医療は、むなしいものとなってしまうのです。


───────────────


《その19 人生は成長のツールを提供する》


 人生は、自分を成長させる旅路です。


 人生の提供する、いろいろな人との出会い、 遭遇する出来事から、自分自身を成長させて行くのです。つまり出会い、出来事が成長のためのツール(道具)といえるのです。


 ツールを目的と混同してはいけません。


 人生のツールを、人生の目的と誤解してしまうと、ツールにとらわれて本質(つまり自分の成長)を見失い、自分自身の成長は止まってしまいます。


 どんな仕事をしていようと、それはツールです。そのことに気付き、しかも、そのツールに対して真剣に取り組む時、職種を問わず、それは芸術の世界に到達します。「美しい」と感じる世界です。まさにそれは魂の領域といえるでしょう。


 元首相の田中角栄氏は、貧しい青年時代、土木工事現場に身を置いていました。毎日肉体労働に明け暮れるとき、「われわれは、地球に彫刻をしている芸術家だ」という先輩のひとことに救われたと述懐しています。


 あるベンチャービジネスのコンサルタントが言っていました。


「何百人のベンチャービジネスを志す者を面接してきたが、なぜ今ベンチャーかと問うた時、金を儲けたいと答えた人は、一人も成功した人がいない。自分の夢を実現したいとか、自分の力を試したいとかいうことを言った人は成功している」


 マザーテレサが、「何をしたかよりも、そこにどれだけ愛を込めたかが大切だ」と言っていることも、これに通ずるものだと思います。


───────────────



〈つづく〉



┌───────────────

│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────


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