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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   病院寸話(月例朝礼・会議などでの寸話)
171/335

<3-3> 病院寸話 《7. 一(いち)の立場 8. 二(に)の立場 9. その立場に立って分かること》

<3-3> 病院寸話(月例朝礼での寸話)


《その7 いちの立場》


挿絵(By みてみん)


 一の立場とは、まさにトップ、つまりリーダーの立場のことをいいます。私はいちの立場の人には3つの使命があると思っています。


 1つ目は、ビジョンを示すことです。


 旧約聖書にはモーゼという人がでてきますが、モーゼは、エジプトで奴隷として酷使されていたイスラエル民族を、エジプトから解放し、カナンの地(理想郷)に導くのです。モーゼは杖を手に持ち、それで行く手を示して六十万人ものイスラエル民族を率いて出エジプトをしたのです。


 リーダーはこの行く手を示すビジョン、そしてそれを裏打ちする見識が必要です。


 2つ目は、適材適所を実行することです。


 それぞれの人間の個性、才能を見抜いて、1番適切な位置にその人を置くのです。


 プロ野球を例に取ってみます。


 巨人軍は、戦力的人材的には他球団の2倍はあるほどの陣容を持っています。しかし巨人軍はそれを使いきれていません。


 私の持論では、長嶋巨人は「野球は選手がするもの」ということが分かっていないようです。監督が野球をやってしまっています。


 常勝監督は、その点が違っています。実に選手の性格やその心理を研究し見抜いています。


 3つ目は、部下みんなの土台となることです。


 トップにある者は、業績さえあればそれだけ名誉や金銭的な栄光を受けます。それを独り占めにしてしまえば、組織の栄光はトップのみへの一方通行の流れとなり、しまいにはトップにとどこおってしまいます。


 トップにある者は、部下の土台となることによって、その栄光は上から下へと巡り、回転運動を起こします。回転すればより発展して、それは永続するのです。


───────────────


《その8 の立場》


挿絵(By みてみん)


 前回は、いちの立場について話しましたので、今回はの立場について話します。


 二の立場とは、俗にいうナンバーツーのことです。


 病院組織でいえば、一の立場は病病院長で、二の立場は事務長や看護部長などがあたります。


 二の立場の人は、一の立場の人の補佐役や女房役にならなければなりません。そして部下たちを直接管理し、トップダウン、ボトムアップの重要な役目を持っています。


 その立場は、上からは抑えつけられ、下からは突き上げられるという難しい立場にあります。


 この一の立場、二の立場が連続して構成されているのが組織なのです。組織のトップに対しては二の立場にいる人も、その部署では一の立場に立ちます。そしてその部署の中には、他に二の立場の人がいるのです。


 例えば看護部長は、病院全体からは二の立場ですが看護部では一の立場にあります。そして看護師長が二の立場に立つのです。


 一の立場、二の立場の連携が有機的に機能しているとき、その組織はスムーズに運営できるのです。


───────────────


《その9 その立場に立って分かること》


挿絵(By みてみん)


 私が以前勤めていた病院のことです。


 そこには私が医師になってから、いまだお目にかかったことのない、おかしな医者がいました。


 彼は、腕は悪くないのですが、人間性がおかしいのです。


 朝は出勤してくるのは10時過ぎで、毎日外来の患者を1時間以上待たせていました。隣の外来室で私は診療していましたから、患者の不満の声がたびたび聞こえてきました。


 それにカルテはほとんど記載せず、気分が向かないと、救急の患者の傷の処置でさえ手を抜きます。それがこじれて、外科の方へ患者が回わされてくることもよくありました。


 私はそれを見かねて病院長に直訴したことが数度ありました。


 病院長はそれを十分承知していて、苦慮しているようでした。


 しかし病院長は、その町にしっかりした病院がそこ1つしかなく、代わりの医者のあてもないために、解雇できないでいました。そしてまた、病院長は、彼が辞めたら行くところがないと、その家族の身をも案じていたのです。


 私は、責任者でもないので、医者など辞めてしまって、他の仕事につけばいいじゃないかと、好き勝手のことを病院長に言っていました。


 今私が同じ病院長の立場に立ってみると、その時その病院長が言っていたことがよく分かります。

 

 大病院なら医師の招聘しょうへいは容易ですが、小病院では1人の医師欠員でも死活問題となるのです。


 他に代わりの医者がいないときには、代えたくてもはっきり言えない病院長の苦しい立場が理解できます。


 しばらくしてその医者は、若い看護師に手を出して妊娠させ、辞めさせられたそうですが、その前にも後にも、そういうおかしな医者には出会ったことはありません。


〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────




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