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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   病院寸話(月例朝礼・会議などでの寸話)
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<3-1> 病院寸話 《1. 時間の単価 2. 笑顔の研究 3. 全員医療と全人医療》

<3-1> 病院寸話(月例朝礼での寸話)


《その1 時間の単価》


挿絵(By みてみん) 


 10年ほど前、アメリカの自動車会社フォードの社長をやっていたアイアコッカさんという人が、自分の著書の中でこう言っていました。


「時間には単価がある」


 著書の中のくだりはこうです。彼が他の会社に出張に出かけようと飛行場に赴いたときです。アメリカは広いので飛行機を乗り継いで行きますから、何時間も空港で待たされることがたびたびあるというのです。


 そこで彼は、「自分の年俸は何億だから、1時間待たされたら何十万円の損失だ。だから自家用機を買うべきだ」と主張し、そう実行したというのです。


 単価とは簡単に言うと、ある人が一定時間に稼いだお金を、働いた時間で割った値です。すなわち、働いてどれだけのお金を稼ぐことができるかというのが、その人一人の時間の単価になるわけです。それは仕事の内容によって、それぞれ違います。1時間千円の人もいれば、1時間1万円の人もいます。


 ここで大切なことは、単価1時間千円の人と1時間1万円の人が、同一内容の仕事をしていてはならないということです。


 例えば事務的な仕事でいうと、事務スタッフで出来る仕事をドクターがやっていた場合、それは時間の浪費となるのです。


 ドクターには診療で稼いでもらった方が、経済効率だけから言えば良いのです。みんなそれぞれの時間の単価に見合った仕事をしなければならないのです。


 (1998年10月1日)


《その2 笑顔の研究》


挿絵(By みてみん) 


 先日子供とディズニーランドに行ってきました。そこで気付いたことがあります。そこで働く職員たちの笑顔がとても素晴らしいのです。あれはそうとう職員の訓練をしていると思われました。


 それは経営者の決定した方針からだと思いますが、実にそれを見ていて気持ちがいいのです。夕方にいろいろなパレードがあります。そこに登場する人たちもみんなすてきな笑顔を絶やさないのです。それを見ていて心がなごみました。


 私たちも医療者として最高の笑顔を見せましょう。患者さんはそれだけで半分病気が治ります。小難しい顔は禁物です。


 それは訓練しなければなりません。気持ちの持ちようの訓練、そして鏡を見て笑顔をつくる訓練もするのです。どうしたら自分には一番いい笑顔ができるのか、鏡を見ながら研究する必要があるのです。


 さらに、笑うこと自体が、自分の心身のリフレッシュにつながるということを、テレビ番組で言っていました。医学的には、笑うことによって免疫力が向上することはよく言われています。


 その番組の中では、笑うためのセミナー風景を紹介していました。多くの人が料金を支払って、そのセミナーに参加しているのです。


 そこでは、面白いから笑うだけでなく、面白くないときでも、まず声をあげて笑う訓練をしていました。無理にでも笑っているうちに、本当に愉快な気持ちになってきて、心身もリラックスし、リフレッシュするというのです。


 それだけ、気持ちを明るく、しかも積極的にすることが、大切であることが分かります。


《その3 全員医療と全人医療》


挿絵(By みてみん) 


 全員野球は、常勝監督として有名な、プロ野球の広岡達朗氏や野村克也氏の提唱する野球です。


 チーム全員がそれぞれの役目を認識して一体となって野球を戦う。打撃について言えば、1番打者は塁に出るという1番打者の仕事があります。2番打者は塁を進めること、3番打者はその走者を進塁もしくはホームに迎え入れることなどそれぞれの仕事があり、それを自覚してきっちりとその役目を果たし、しかもチーム全体が一体となって戦うのが全員野球なのです。


 人間の身体に例えてみれば、目の役目、口の役目、頭の役目、手足の役目など役目にはいろいろとあります。そしてそれぞれの器官は、その役目をちゃんと果たしています。


 足が自分はいつも日陰で、重い体を背負って嫌だと不平を言ったならどうなりますか。お腹が顔の方が目立っていいと言ったらどうなりますか。身体としては成り立ちません。それぞれの器官がそれぞれの役目を担って、身体は機能しているのです。


 企業も同じです。それぞれの部署がその役目を果たし、みんなで力を合わせた時に、組織の有機的な活動はできるのです。


 医業もまったくこれと同じです。


 そのような考えから私は、患者さんの車椅子をナースといっしょに押します。人手のない時は患者さんのオヤツの介助もします。ナースセンターで電話番もします。


 レントゲン技師は時間があると病棟に来て、患者さんたちと触れ合っています。


 事務スタッフが患者さんを連れ立って、中庭を散歩しています。


 一方、全人医療とは、病気のみを見ないで人間をトータルに見ようというものです。この最も顕著なところがホスピスです。ホスピスは医療のあるべき原点を象徴しています。当院には横浜初の、そして唯一のホスピス病棟があります。


 全員医療と全人医療が当病院の目標とするところです。


 (1998年1月4日)


〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────


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