<1-3> 『患者中心の医療-ホスピス』 横浜市民講座講演録 その3 患者中心の医療を目指す病院
その3 患者中心の医療を目指す病院
10人ほどの有志が集まり、「人間医療」、「自然医療」、「社会医療」の三つの柱からなる患者中心の病院を目指してAK病院を造りました。
ここにAK病院の病院憲章というのがございます。20条にわたって病院の目指す条項が書いてあるんです。憲章ですから病院の憲法です。こういうふうに当病院はやりますよと書いてあるんです。
病院には、評議会というのがございます。つまり、裁判所があるんですね。評議員には外部の人にも加わっていただいています。憲章にのっとったことをキチッとやってないと、評議会で「おかしいぞ」「憲章と違うことをやっているじゃないか」と指摘することが出来るようなシステムを考えたんですね。もちろん患者さんからも言えるんですよ、外の人も。評議会に訴えることができる。
医療者の思い込みってあるでしょう。医療者が思い込んで、これはいいことだ、こうやることがいいんだというように、先入観で医療を行うことがあるんです。しかし、患者さんから見ると、そんなのはとんでもないということは時にあるんですね。そういうのを気付かせるにはやっぱり、第三者の目というのは非常に大切です。ですから、評議会というのを病院の中に作って、そういう問題があれば、そこへ訴えてくださいというようなシステムを作ったのです。
しかし、この病院憲章をあまり厳密に当てはめて、あそこが悪い、ここが悪いと言われるとまた困ります。「理想としている、こういうふうな病院を目指しています」という姿勢だということで、ご容赦願いたいのです。
病院憲章の中から、ちょっとだけ拾い読みしてみます。
『当院は、現代日本に於ける様々な問題、取り分け地域医療の問題解決を目指し、あるいは少なくとも解決の方向を実例を以て示さんとする意欲と情熱のもとに設立されるものである』と、いうようなことが最初の書き出しであるんですね。
そして、『当院が提供する医療内容は、消化器、成人病センターとして、有効と見なされるあらゆる選択肢を包合した集学的治療を心掛け、ハイレベル・アンド・アットホームの医療を目指す。人間が人間たる尊厳をもって死を迎えるべく、その生命の質、生活の質を重視したターミナルケアを心掛ける。地域住民の特性を踏まえ在宅医療を合む、予防、治療、リハビリを見通した医療を行う』
本当にこんな立派なこと、みんなに公表しちゃっていいのかしらと、ちょっと心配をするんですけれども、受付には、それをはり出してみんなに公言している訳です。ですから、それを目指してやっていかなければなりません。
現実はいろいろありますから、皆さんの理解と協カをいただいて、患者中心の病院を目指してやっていこうと意気込んでおります。
<病院臭くない病院>
そこでもう少し、AK病院はどういう病院かというのをお話しします。
病院臭くない病院というのを私たちは目指しました。つまり、みなさん病院へ行くと、いかにも病院臭いというのがありますでしょ。薬がプーンと臭ってくる。壁が真っ白。患者さんが暗い顔をしている。患者さんが暗い顔をしているのはしかたがないでしょうが。雰囲気がいかにも病院臭い、そういうのはやめようと努力したんです。
病院というのは、私たちにとって一つの生活の場に過ぎないのです。デパートに行こう、食べるものがないからス一パーに買いに行こう、今日調子悪いから病院に行きましょうというような、そういう人間生活の一つの場なんです。ですから、特別な場所というような病院臭さというのはやめようということで、一生懸命工夫をしました。
まず第一に、レストランを病院の正面にもっていったんです。普通病院の正面玄関にレストランがあるというのは、みんなびっくりしますね。デパートかと思っちゃう。しかもそのレストランには、病院に入らなくても利用できるように、外側にも出入り口を付けたんです。つまり、病院の利用者だけが利用するというんじゃなくて、地域の人もどうぞ、そこへ食事に来てください、病院の人もいいですよというように、レストランに内と外の両側から入れるようになっているんです。
さらに受付ロビーを、なるべくホテルのロビーに近いような雰囲気にしました。看護師さんの制服をピンクと白の二種類の色にしました。もっと多くしたらおもしろいですね。
看護師さんの気分で替えなさいとしたのです。これは実におもしろい発想です。着衣が医者も白、看護師も真っ白という冷たい感じじゃなくて、看護師さんの気分で、ピンクを着たり、白を着たりするんです。それはなんとなく味があって、おもしろいと私は思っています(笑)。
私が、白衣着て「どうですか」なんて回診するのも、なにか味がないなあ、もっと奇抜な方法がないかなあって言ったら、うちの女房が、スーパーマンの恰好したらどうって言うんですね(笑)。マント着てね、Sのマークで、「どーですかあ」と言ったら、患者さんびっくりするって(笑)。
さすがにこれは実行していませんが、今までの、医者、看護師、病院というイメージを、違うものにしたいなあというのが、私たちの願いであります。
病棟の廊下の色を各階変えたんです。5階はべ一ジュ、4階は赤、次は緑、次はブルーと、全部変えたんです。幼稚園みたいで面白いですね(笑)。子供が階段を上がっていって喜んでいる。「ああ緑だ」「ああ赤だ」
各病棟には病室より大きいくらいの談話室を設けました。デイルームと呼んでいます。中に図書棚を置いて、図書を自由に読めるようにしました。ボランティアの人たちが、本を整理したりしてくれているんです。そこで患者さんが家族と話したり、テレビを見たりもするのです。
そういういろいろな工夫をして、病院に入院している時期が単なる人生の一つの時期に過ぎない、だから普通の人と同じような人間らしい生活が出来る雰囲気や環境になるべくしたいというのが、私たちの願いなのです。
〈つづく〉
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│いのうげんてん作品
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│①著作『神との対話』との対話
│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》
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│②ノンフィクション-いのちの砦
│ 《 ホスピスを造ろう 》
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│③人生の意味論
│ 《 人生の意味について考えます 》
│
│④Summary of Conversations with God
│ 『神との対話』との対話 英訳版
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