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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
5章 病気もいろいろ患者もいろいろー名診誤診迷診
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<14> 名診誤診迷診-胸痛 その2

 前話と同じような経過をたどった胸痛の患者を、もう1人経験しています。


 私は割合、患者離れがいい方なのです。(←(^ω^)乳離れではないよ)


 私のいう「患者離れ」とは、自分の技量を越えると思われた時には、すみやかに他の医師や病院に紹介することをいいます。


 従来から、患者を診療する際には、「病気は顔に出る」、「疑わしきは罰せよ」、「深追いをするな」という3つの経験則にのっとって、私は診療してきました。


 「病気は顔に出る」「疑わしきは罰せよ」は、前話でも書きましたね。


 患者の顔付きや雰囲気から、奥に潜んでいる患者の病気の重篤さを見抜かなければなりません。それが「病気は顔に出る」ということです。(←(^ω^)占い師みたいだね)


 「疑わしきは罰せよ」とは、迷ったときは、最悪を考えて治療すべきだということです。軽く考えてそれが外れた場合は、致命傷になることがあるからです。(←(^ω^)裁判官とは反対だ)


 3番目の「深追いをするな」というのは、他の医師を希望する患者は、躊躇なく手離しなさいというものです。


 外来や入院患者が、時々よその病院に転院したいと希望してくることがあります。私はその理由を聞いて正当であれば、あっさり認めることにしています。(←(^ω^)あまり多いと寂しいがね)


 憤慨してそれを拒み、深追いすると、往々にして医療訴訟などを招いて、痛い目に会うことがあります。


 この「深追いをするな」というのが、私の「患者離れ」に関係しているのです。


 患者離れがいいと、患者のためには良いかも知れませんが、病院の経営者からすれば、儲けが減って困るわけです。よく事務方からクレームをもらいました。


 「せっかく手に入れた患者をよそに行かせてしまって、あの医者め……」といったところですね。


 毎日の診察患者数を一覧表で見せられても、患者のためになることをしてなぜ悪いかと抵抗して、医者稼業を続けて来たのです。


 余談ですが、その逆に、患者集めのめっぽう上手い医者もいましたよ。


 医者にとって、外来の患者数というのは、一種のステータスといってもいいでしよう。医局ででかい顔をしておられるのです。大いに自己満足もできます。「待合室に患者がいっぱい待っていると気持ちがいいよ」と豪語していた医者がいましたね。


 少ない医者は稼ぎが少なく小さくなっています。今では、稼ぎに応じて報酬つまり給料を調整する病院も多く見受けられるのです。売り上げを上げるために、検査や処方薬は必然的に多くなります。


 「あれはヤブだ」と、他の医者の悪口をいって、自分の担当日に患者を来させる医者もいました。用意周到にも、自分の診療担当表を名刺のように作っておいて、それを配るのです。(←(^ω^)まるで選挙みたい)


 診察日を間違えてたまたまやって来た患者を診ると、自分の外来日に引っ張って行くのです。これでは患者の取り合いになります。


 当然、他の医者は怒ります。険悪な空気が医局の中に流れ、ついには罵倒が飛び交いケンカになるのです。


 他称でなく自称「名医」に、そのきらいが強いように私には見えました。


 迷医の私は、名医でもないのに名医などというとんでもない口コミが広がって、迷医のわりには患者さんが多く来てくれたのでした。(←(^ω^)どうだい)


〈つづく〉


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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│ 《 あなたの人生を振り返る 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│ 《 ホスピスを造ろう 》

└───────────────



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