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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
5章 病気もいろいろ患者もいろいろー名診誤診迷診
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<6> またもやだまされた

 お人好しというか、間抜けというか、私はもともとだまされやすい人間のようです。(←(^ω^)そうだ、そうだ)


 偉そうに言えば、「人をだますよりだまされる方が良い」という哲学がありますから、「まあ、それでいいか」と思っているのでございます。


 今回は「前話」より手のこんだもので、ずーっと長くだまされちゃったのです。


 「腰が痛い」と、30代と見える男性が、診察室に飛び込んで来ました。相当に痛いらしく、冷や汗をかいていました。これが演技だとは知る由もありません。


 「大学病院で腎臓がんの手術予定になっているが、その日がまだ先なので、それまで痛み止めを打ってほしい」というのです。鎮痛剤のレペタンです。これまた、薬ご指定でした。


「レペタンは当院にはないよ。ソセゴンもほぼ同じ薬だから、それを打ってみよう」


 私はソセゴン1アンプルを打ちました。効果はいまいちのようで、患者は不満げでした。


「手術まで痛みで困るだろうから、ここで打ってあげるよ」


 人のいい私は、レペタンを薬屋から取り寄せて、毎日打つことにしました。


 ちょうどその翌日くらいに、追い打ちをかけるように、大学病院の医師と名乗る人物から電話がありました。


 私よりよっぽど医者らしい口ぶりで、患者の病態をじょう舌に説明します。(←(^ω^)ああ、くやしい!)


「手術の日まで、私の患者をよろしくお願いします」


だって。


 手術予定のがん患者を、こんなに長く待たせていいのかなあと思いながらも、すっかり彼らを信用した私は、毎日通ってくるその男性に、レペタンを注射したのです。


 超音波検査でもやれば、腎臓がんなどすぐ分かるのに、信用していたものですから、何の検査もしませんでした。(←(^ω^)今ふうにいえば、オレオレ詐欺まがいの手口ですね。という事は、私は人のいい、ばあちゃんか……)


 1週間ほどたった時に、患者が、自分の母親は看護師だとナースに話すのをふと耳にしました。


「毎日通ってくるんじゃ大変だから、私が指示を出すからお母さんに注射してもらったらどう。私から電話で頼んであげるよ」


「母は仕事でほとんど家にいませんので……」


 急に困った顔をして、口ごもりました。


 その夕方、親切心満々に、カルテに記載してある電話番号に電話しました。


「お客さんのおかけになった電話番号は、現在使われておりません……」


 電話会社のアナウンス。


「アレ!?おかしいなあ。カルテの記載間違いかなあ」


 その日以後、ピタリとその男性は来院しなくなりました。


「大丈夫かな。どこかに緊急入院でもしてしまったのかな」(←(^ω^)まだこの医者、気付いておりません。ホントにお人好しだね)


 いくら待っても来ません。取り寄せたレペタンはたくさん残ってしまいますし、何度電話をかけても通じません。


 ここで初めておかしいと感じたのでありますが、緊急入院の線は、まだ頭の片隅に残っていました。


 確信したのはそれから数年してからのことです。友人の医師が、これと全く同じ手口の二人組に出会った体験談を話していたのです。


「やっぱりそうか」


 これではじめて、レペタン中毒だと確信した次第でございます。


 初めて外来に飛び込んで来た時、冷や汗をかいていたのは、薬が切れた時の禁断症状だったのです。


 今も転々と医者を変えては、注射を打っているのでしょうか。気の毒ですね。


 この2例の共通点は、特定の痛み止めを指定してきたところです。


「痛みを止めてほしい」と希望するだけでなく、薬を具体的に指定してきます。もし依存症をきたすような薬を具体的に指定してきたら、あやしいと疑ってみるべきでしょう。(←(^ω^)反省しています。トホホ)




┌───────────────

│いのうげんてん作品      

│               

│①カルテに書けない よもやま話

│ 

│②著作『神との対話』との対話

│ 《 あなたの人生を振り返る 》

│ 

│③ノンフィクション-いのちの砦  

│ 《 ホスピスを造ろう 》

└───────────────



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