予定
「起きてください」
そう、かすかに声が聞こえる。
私は今寝てるんだから。そう言われるのも納得できる。それも、今は授業中だし。
「起きてください。コスモス様!」
はいはい・・んっ、様?
何で、先生が様付けで?
それか、私のことを密かに慕っているクラスメイトがいる?いや、そんな異常者がクラスに居るわけがない。
嫌々ながらも、重たい瞼を開けると、軍服っぽいものを着た人が立っている。
・・あぁ、いつもの夢か。
この夢を見るのは・・8回目だったよね。
毎度の通り、相手の顔は見えない。
でも、声から女性ということだけ分かっている。
「誰?」
私はいつもと同じ質問をしてみる。
今日こそは答えてくれるかもしれない。
「コスモス様。起こしてしまって、申し訳ございません。作戦の準備を開始しますので、会議室にお越しください」
やっぱり、答えてくれない。
いつも通りだけど。
ここで、私の夢は終わる。そして、何もない現実に引き戻される。
「それでは、今日の講座はここまでだ。それでは、また」
いつの間にか寝てしまっていた。
別に夜は、ちゃんと寝れているのに・・何でだろう?
チャイムが鳴り、教室から皆が出ていく。
やっと、午前の部が終わった。
正直言うと、一般講座はつまらないけど、午後の個別授業は楽しい。
「なぁ、コスモス。今からお昼にするけど、一緒に学食行かない?」
「んっ?いいよ。行こ」
彼は、幼馴染で、霧嶺 翔という名前だ。
背中にいつも、弓矢を背負っている。
別に、厨二病とかいうやつではない。
私だって、横に剣を持っている。
じゃあ、何で、剣や弓を持っているか?
今のこの世は、昔と比べると、かなり値上がりが進んでいると、先生から習った記憶がある。
食料を求めて、ここらへんの富裕層、もしくは一般層を襲撃してくる。
だから、登録さえ済ませれば、武器の携帯権が与えられる決まりが出来た。
ちなみに、この学園は、一応富裕層に分類されている。
そして・・。
今更だけど、私はコスモス。名前から分かると思うけど。生まれた場所がこの国では無い。
そして、生まれた半年後にこの国に来ている。だから、出身国の記憶なんてものはない。
今の私の記憶にあるのは、小学、中学で、翔と仲良く遊び、勉強した日々から、今までの15年間だけ。
ー学食堂ー
「コスモスは何食うんだ?今日は俺が奢りの番だよ」
「私はいつも通りラーメンで」
そう、ラーメン。あのコッテリとしたスープに腰のある麺・・まさに至高の料理だ。
あれ以上に永久に美味いと思える料理は多分ないだろう。
「コスモスはラーメンばっかりだな・・野菜は?」
「家に来た時に、見たと思うけど・・ちゃんと普段は野菜を食べてたでしょう。それに、ラーメンにもネギやもやしが入ってる!」
「そのくらいの野菜でプラマイゼロになると思ってるのか?」
正直私も思ってはない。
だけど、全くビタミンを摂取していないわけではないし。
その上、私は運がいいことに太りにくい体質でもある。
「まぁ、いいか。とりあえず、食べよっか」
「話を・・って。まぁ、いいや」
コッテリといえば、豚骨ラーメン。
料理が出来上がり、翔と隣同士の席につき、食べ始める。
ズズッと麺を思いっ切りすする。
味はいつもどおり、最高級に美味しい!
そう叫びたくなるくらい、この学食のラーメンは美味すぎる。
「ふぅ。ごちそうさま!翔、ありがとう・・それにしても、食べるの遅いよ」
「そんなに遅いか?コスモスが早いだけだろ」
確かに、自分が早い方だという自覚はある。
でも、ラーメン一杯を5分で食べ終えるくらいだけど。
「まだ、部の収集まで、時間があるからいいけ・・」
その時だった。
「副会長!襲撃です。また、奴らがやって来ました!そして、奴らは人質も取っています!」
「はぁ〜、仕方無い。いくよ、翔。また、痛い目に合わせに」
こういうのも、今の世には、たまにあること。
本当に嫌な世の中になったものだ。
「・・わかった。でも、全国剣術大会3位のコスモスからしたら、そんな奴らなんか一人で十分じゃ」
たしかにそうかも知れない。でも・・。
「相手が銃を持っていたら、どうするの?流石に援護が必要だ。適任は、翔。それに、そっちこそ、全国1位の弓捌き、またまた見せてよ」
廊下を移動中、報告に来たクラスメイトに状況を尋ねてみることにした。
「そういえば、警備員はどうしたんだ?」
翔の疑問は妥当だ。
「あっけなく、やられちゃったみたいです。不意打ちだったので、仕方ないとは思うのですが」
「死んじゃったの?」
まぁ、私や翔と比べたら、弱いから仕方がない。
なんなら、これからは私が警備を担当しようかな。
ちゃんと教員たちに許可を取れば、正式にできるよね。
「もうそろそろ、見える位置につくはずです」
「わかってる」
とりあえず、その奴らが見える窓際まで移動する。
そこには、この学園の校長の姿があった。
「やっと、来てくれたか、コスモス・・副会長」
「状況は聞いています。それで、奴ら。殺しても構いませんよね?」
「やむを得ない場合は構わないが。なるべく、よしてくれ、人質もいる上。それに遺体報告書を書くのもめんどくさいからな」
何だ、そんなことくらい・・。
「別に、報告書なら、私の・・学生会が書きますので・・もしもの場合は問題ないですよね!」
「ん、ああ、その・・なら、いいが」
校長の了承も得た。無理矢理にだけど。
まあ、殺しちゃったら、ちゃんと私が書くけどね。
そんなことより今、私が気にすべきは、相手の武器と人質のみ。
「よし、行こう」
私は、窓に足をかけると、スッと飛び降りた。
この程度の高さ(3階)くらい、着地の衝撃なんかなんとも無い。
「ふぅ、慣れてるとはいえ、3階の高さから飛び降りるのは毎回ヒヤッとする」
続けて、翔も降りてきた。
敵は3人。
一人、中央に立っている体の大きな男がリーダーだろう。
「要件は何だ?人質を取るってことはそういうことのはずだろ。それと、その子は死んでるってことはないな。目が閉じているが・・」
「安心しろ、気絶させただけだ。騒がれると、イライラして殺してしまうかもしれないからな。要件なら、会長を呼んでこい!それから話す」
そういえば、会長・・今、学内にいないんだっけ。
その時は、私に決定権がある・・はず。
あんまり行使したことないんだよね。
「残念だけど、今は、会長は遠出中。要件なら、副会長である私が聞く。ちゃんと決定権は持っている」
私がそう言うと、奴らが相談しだした。
不意打ちは私の趣味ではないからね。
じっくり待つとしようかな。
「どうします?リーダー?嘘をついているようには、見えませんが」
「別に、副会長でもいい」
「わ、わかりました」
1分後に、再び奴らがこっちの方を向いた。
おっ!早い。
「少し、待たせた。要件は、半年分の食料と100万をこちらに渡してもらおう」
予想通りの要望だ。
別に食料くらいならやってもいいけど。ま!断る以外の選択肢はないよね。
「渡さない!」
「そうか!なら、交渉決裂だな」
リーダーがそう叫ぶと同時に、刀を抜き、私は駆け出す。
「翔!」
翔には、援護の合図を送る。
「任せてよ!」
翔が、そう言うと、矢のセット音と共に、目の前の敵が二人同時に声を上げて倒れた。
矢を放つ音が聞こえもしないなんて。
それにちょうど、人質に取られていた子を掴んでいた奴を倒してくれた。
流石!
「クソ!逃げ・・」
「逃がすわけないでしょ!」
リーダーの背後に回り込み。
私は振り向くよりも早く、刀を振るった。
かすかな血の匂いが私の鼻を突く。
深い傷は残さない。殺してしまいかねないから。
私だって、書くとは言ったけど。めんどくさいもん。何十枚のも紙に目を通さないといけないし。
そして、リーダーは声を上げることもなく、その場に崩れ落ちた。
その5分後、校長が呼んだ救急車と警察が到着した。
事後処理のため、午後は休校になり、生徒たちは帰された。
先生たちと・・何故か、私達を除いて。
学生自治会室・・。
私達はソファーに腰掛けながら、ゆったりと待っているところだ。
「弱かった」
敵の背中にひどい深い傷を背中に残してしまった。でも、全員、息はしている。
殺してないから、書類を書く必要はないね。
「やっぱり流石だね、その刀の扱い!」
翔がニッコリして、お茶を飲む。
「ありがと。翔も、相変わらずのいい命中率。それに、人質を抱えている奴を狙う判断力も、かなり助かった」
「それほどでも・・で、何で、俺達まで残らされてるんだ?」
確かに、同感。
別に、私達に事情聴取したところで、何も得られないと思うけど。
「う〜ん?わからないけど、指示だし、従うしかない」
私も紅茶を飲もう。お気に入りのダージリンティーを。
それから数十分後・・。
「入りますよ」
ドアのノック音とともに警察が2人入ってきた。
「ど、どうぞ!そちらに。お茶を淹れますね」
予備に用意していたカップに紅茶を注ぐ。
「お気遣いどうも」
「それで、なんのご要件で?」
「いや、ただ2人に礼を、警視長からの伝言です」
お礼を言われるのは、嬉しい。
でも、今日に限ったことではないはず。
まぁ、目立たないようにしているからだけど。
「礼なんていいですよ。失礼かもしれませんけど、それだけの用で?」
これが翔の悪いところだ。
思ったことが口に出やすい。
でも、私が思ってたことを言ってくれたから、いいけど。
「後は、事後報告です。協力してくれた2人には伝えても良いと、許可が降りましたので・・」
その後の警察官の話は中々に長かった。
軽く整理すると・・人質はちゃんと、生きていて、無事なよう。
今は、病院に運ばれていて、明日には退院できるらしい。
あの3人は連れて行かれ、尋問をして、トップの情報を聞き出す。
らしい・・どうでもいい。
私達は、よく外出するから、いつの間にかトップを狩るかもしれないけど。
報告を受けた後、私達はすぐに学校を出た。
時間は3時近く。
「はぁ、結局、それだけだったな」
「・・ねぇ、またあの場所行かない?明日は」
前に行ったのは、2週間前。
「えっ?ああ、オッケー。じゃあ、帰って荷物を整えてくる」
「じゃあ、私の家の前で5時に集合!」
10分後・・翔は、コスモスと一時別れた後、家まで猛ダッシュをしていた。
「ただいま!ハァハァ・・」
玄関の扉を勢いよく開けると。
ニャー、という声と共にリビングの方から白い猫が走ってきた。
「いい子にしてたか?トライア。それと、ちゃんと、ご飯は食べたか?」
トライアは、体毛が真っ白であるが。
赤と青のオッドアイという、かなり珍しい特徴を持っている。
「ニャ〜!」
翔はコスモスと同じ学生。
平日は家に一人でもいられるように、自動餌やり機、自動給水器は買っている。
「ちゃんといい子にしてたみたいだな。そうだ、今日。コスモスと星を見に行くんだが、また、一緒に行くか?」
「ニャーン!」
トライアが尻尾を振りながら、翔の足にスリスリする。
「オッケー!じゃあ、準備をするから、リビングで待ってて」
外着に着替え、バックパックに必需品とトライアの餌などを詰める。
時間は4時半。
「よし、行くか!おいで、トライア!」
「ニャー!」
トライアが元気よく走り、翔の肩に乗っかる。
車に乗り込み、エンジンをかける。
「さて、免許取ってから、4回目の運転。頑張るか!」
ブロロロという音がすると同時に、トライアは肩から飛び降り、助手席に乗っかる。
コスモスの家は、翔の家から車を走らせて、たった2分くらいのところにある。
私は、学校から近いし、早めに準備が整ってしまうのは仕方がないこと。でも、それを見越して翔はいつも早めに来てくれる。
毎回、翔に来てもらうの申し訳ないな〜。
でも、運転免許を持っていないし。バイクの免許なら、持っているんだけど。
ほら、今回も!
遠くの方から、聞き慣れたエンジン音が近づいてくる。
「待った?」
見慣れた白のミニバンから、翔が降りてくる。
「ううん。まだ、私も家を出たばかり」
「オッケー!じゃあ、乗って!」
「うん!」
助手席のドアをガッと開けると、ちょこんとトライアが運転席側に座っていた。
「あっ!トライア・・ほら、膝に乗っていいよ!」
「ニャーン!」
トライアが私の膝に飛び乗り、寝そべり始める。
相変わらずかわいいな〜。
「じゃあ、発進するよ!」
車のエンジンがかかり、ゆっくりと動き出す。
30分ほど車を走らせ、街を抜け、近くのよく行く山に入り、頂上を目指す。
山の上まで、敵(襲撃してくる人)がいる可能性は低い。
車の中で翔と話をしている内に、頂上に到達した。
時間は、5時過ぎ。
「ふぅ、やっぱり、ここは落ち着く」
何回も来ているけど。
この開けた草原で爽やかな風を一身に浴びるのは、最高に心地よい。
このままゆったりとしたい・・でも、やることが一つある。
「そうだね〜。でも、今はセッティング!」
翔が背伸びをしているうちに、私は荷物を下ろしていく。
「行動が早いな!流石、副院長!」
「褒めても、私が喜ぶだけ!早くテントを立てるよ!」
「はいはい!」
2人で協力して、テントを設置する。
この作業には、とっくに慣れているから、ものの12分近くで終わらせることが出来た。
よし!前より、2分短縮できた!
なんて・・喜んでいる間に、テーブル設置、望遠鏡設置、火起こし(バーベキュー用)を終わらせていく。
そして、もうすぐ午後6時。
日は、ほとんど沈みかけている。
「もうすぐ夜か・・」
「ここから見る夕日は毎回綺麗だよね」
組み立て型テーブルの足を取り付け作業の手を止め、夕日を2人で眺める。
普段の講義、戦闘・・そんなもの全てが忘れられそう・・
夕日が沈むまでの5分間、会話もせず、ただじっと見続けた。
太陽は全て、向こうの沈みんだが、空にはまだ残光がうっすら見えている。
「用意完了!」
「だな・・お腹、空いた?コスモス」
「うん!」
慣れていているとはいえ、お腹は空くもの。
「オッケー!早速火を起こすか!」
クーラーボックスから肉や野菜などを取り出していく。
バーベキューの食材はいつも、時間があれば前もって買っておくことにしている。
いつ、ここに来るかわからないし。
手慣れた手つきで木炭を動かし、あっという間に日が燃え上がり始める。
パチパチと火花を散らし、ゆらゆらと炎が揺れる。
「じゃあ、焼いていくぞ」
火の上に鉄板を設置し、肉と野菜を乗せていく。
ジュ〜と音を鳴らし、香ばしい匂いと共に、もくもくと煙が空へと昇っていく。
「ニャーオ?」
トライアが音に反応して、テントから出て来てきた。
トライアもそろそろ夕飯の時間だよね。
「翔!トライアにご飯あげてもいい?」
「ちょっと待って!せっかくなら、一緒のタイミングで食べたいし」
確かに言われてみれば・・。
「わかった!ちょっと待ってね、トライア」
「ニャオニャオ」
と鳴きながら、体を伸ばしている。
あとちょっとだから、待ってね。
そろそろ食材が焼ける頃だろう。
「コスモス!俺のカバンから、ご飯出してあげて。用意できたから」
「わ、分かった」
確か、テントの中のバッグに・・!!
あった!
「なんか、いつもと餌違う?」
「気付いた?今日ばかりは、トライアにも贅沢させたくて」
全員で食べ始める頃には、残光も消え、とっくに星が見え始めていた。
雲が殆どない星空の下で肉を食べれるなんて、やっぱり最高!
「トライア、おいで!」
「ニャーン!」と翔の声に反応して、駆け寄ってくる。
「ほら、食べていいよ。今日くらいは、おかわりもいいよ」
翔がトライアの頭を撫でる。
「じゃあ、俺達も・・いただきます!」
「いただきます!」
「ウミャ、ウミャ!」
トライアは、ご飯に食いつきながら、鳴き声を発した。
「そういえば、今日の講座はなしになっちゃったけど。進捗はどう?」
「私は、順調だよ!またまた、私が1番を取っちゃうかもね」
そうは言ったものの、今回は無理かな?
ま!そんなこと、タンを食べて忘れよう!
「俺も頑張るけど・・ギリギリ無理かな〜」
翔がこういう時は割と自身があるとき。
「そういえば、話が変わるけど・・」
「んっ?どうしたの?」
口の中のタンとカルビとキノコを急いで噛んで、飲み込む。
「いや、なんていうか・・最近、たまに・・変な夢を見るんだ。それも似たような」
「えっ・・私も!なんだけど。あんまり、確証は無いけど・・なんとなく」
「どんな夢?」
私が身を乗り出して、聞いてみる。
「それは、白髪のメイド服の女性が語りかけてくるんだよ?顔はあまり覚えてないけど・・尻尾が生えていたような」
う〜ん?
私と少し違うけど。
「私の方は、黒髪の女性だった。それも、青い軍服を着ていたような。でも、尻尾が見えているのは、一緒!」
「う〜ん、わからないな?何か、意味があると思ったけど・・後で考えよう!どんどん焼いていこう!」
私も気になるけど、お腹の減りには勝てない。
考えるのは、満腹にしてから・・。
「にゃ〜」
トライアが私の足をスリスリしてくる。
おかわりがほしいのかな?
「おかわりあげるよ!翔」
「オッケー!あげといて、今焼いているから」
この小説を選んでくれて、ありがとうございます!
面白いと思ってくれたら、ブクマ、評価など、お願いします!
気に入らないと感じた人も、評価で面白さを教えてくれたら、嬉しいです!
評価射数(別に星1にした人も含みます)が3人を超えたら、1キャラ分のイラストを描いて、ツイッターと超えた時点の話で公開します!
評価お願いします
何卒、よろしくお願い致します!
そして、続きも読んで、コスモスたちの物語を見ていってください!