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オリビア・クレーエ  作者: ならせ
第3幕
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第3幕ー17 ヒロインは誰?

 解散となり、大広間に戻る気も起きず帰ろうかと思っていたところでアランと出くわした。


「話し合いは終わった?」

「ええ」

「あの王子も頑張って考えたね。まずまずの結果じゃないか」


 まるで何もかも全て知っているかのような話しぶりだ。そのニヤニヤ顔がイラっとする。


「そんな事を話す為にいたのかしら?」

「いいや。シャーロット王女がお呼びだよ」


 彼女が使っている部屋へアルベルトと共に行くことにした。今後の事についてアルベルトと個人的に話がしたいという理由付きだ。

 クラウディオの王太子位返上が決まった今、次の王太子はアルベルトである。プレディエール国のたった1人の後継者たるシャーロットとしては政治的な思惑込みで友好を結びたい所だろう。


「……そういえば、エミリア様は?」

「うん? エミリア・バルバーニーは王女の部屋に居るよ」


 ふと、どうしたのかと思っていたが色々ありすぎて頭の隅に追いやっていた。

 アランはドア前で警護する騎士に「ご苦労」と軽く声をかけ、ノックもせずにドアを開けて入っていく。私は一応ノックをしてから入った。ドアは開けっ放しでシャーロットが手招きしていたから返答は不要だ。


「……何か唸る声がするのだけど」

「あれだ」


 示す先に口を布で塞がれ簀巻きにされたエミリアが床に転がっていた。芋虫みたいにうねうね動いて唸っている。

 シャーロットの命令によりエミリアの口を塞いでいた布が外される。綺麗に結われていたはずの髪はボサボサで、顔も薄汚れてぐちゃぐちゃになっており酷い状態だ。


「逃げきれなくて残念だったな、エミリア・バルバーニー。気分はどうだ?」

「アル様……? ワタシの事好きなのにどうして……そこの悪女がアル様を唆したの?」


 アルベルトがあからさまに嫌な顔をするとエミリアは一瞬不思議そうな表情を浮かべた。どうして自分の事を好きだと思うのか不思議で仕方が無い。


「悪女はお前だろうエミリア・バルバーニー。貴様のやった事でプレディエール国は大混乱だ。それにベラーク国での評価も地に落ちた。どうしてくれるんだ?」

「は? そんなの知らないし。ワタシの方がずっとずぅーーーーっと魅力的だっただけでしょうが。それよりも何でワタシが逃げた先にアンタの手先がいたのよ。魔法も使えなくなっているし最悪っ! ヒロインのワタシがこんな目に遭うなんておかしい! やっぱりマルガリータ・ブロトンスじゃないからよ。何でアンタがアル様の婚約者になっているのよ。アンタがゲームを狂わせている原因なんだ! 全部アンタのせい! アンタが悪いんだ!」


 エミリアは元気良くびったんびったん跳ねて良く分からない言葉を使って苛立ちをぶつける。まるで世界の中心に自分が居るような言い草だ。

 何故私の友人の名が出てくるのか謎だが、聞いたらまた良く分からない言葉で喚き散らして説明にならないのだろうと思い、その疑問は忘れる事にした。


「回収する事が出来たが、手遅れだったようだ。時間を置いても変わらないという事は副作用によるものだろう」

「はあああ? 何言ってんの? ここはワタシの知っている乙女ゲームの世界ですけど! 実際本編ではハーレムエンドできたし! その知識で! ハッピーエンドを目指して! 何が悪いのよっ!」

「悪いわね」


 思わず言い返してしまった。黙って聞いているつもりだったのに、エミリアの言葉は私が大嫌いなマリアを思い起こさせるせいだ。悪気も悪意も無く、当然のように人のものを欲しがり、奪い取って飽きたら捨てる。どれだけ大切な物でも悪いと思っていない所が大嫌いだ。

 掴みかかって大声で怒鳴ってやりたいけれどシャーロットの手前、我慢した。手を下すことを許されているのは、シャーロットとエミリアに婚約者を奪われたという令嬢達やその家だ。


「私達は貴方の玩具でも遊び相手でも無いの。遊びで人間関係をかき回す神経を疑うわ」

「はは! 確かに。エミリア・バルバーニーは私達にとって友人では無いからな」

「……名前の無いモブの癖に偉そうなんですけど。何様?」

「彼女はベラーク国の王理だよ。選んだ者を王として導くための存在。お前よりも貴重で価値のある人だ」

「はあっ?!」


 急にシャーロットが妙な事を言い出して声を出してしまった。

 王理って……そう呼ばれるのが好きじゃない愛称を無理矢理こじつけて、何かとても重要な役割を持った凄い人みたいにされている。

 シャーロットが微笑んだまま私の唇に人差し指を当て、ウインクする。任せろと視線で言っているのを感じたので唇を引き結び小さく頷いた。


「女性の王理は珍しいが……確かに王の伴侶とするのが一番いい方法だな。出来ればプレディエール国に連れ帰って私の側近にしたい所だが」

「悪いがオリビアは誰にもやらない」

「誰かみたいに婚約者を横取りするような真似はしないさ。時々遊びに来てくれるだけで良い。わたし達は友人だからな」


 ははは。

 うふふ。


 満面の笑みで会話しだしたアルベルトとシャーロットの間に私は挟まれている。両側から不穏な空気が流れ始めたのを感じながらじっとしていた。


「オリビアのお陰で次期女王になれた事だし、早速感謝の印としてわたしの国へ招待しよう」

「シャーロット王女、連れ帰るのはそこの芋虫だけにしてもらおうか」

「オリビアともっと友情を深めたいだけだ。先延ばしにしてしまったら会いにくくなるからな」

「連れて行ったら返す気など無いだろう。駄目だ、絶対に行かせない。こちらもすぐ忙しくなるからな」

「オリビアが絡むと狭量だな……。国の為にも交流を持たせるのは悪い話では無いと思うが?」

「ならば婚礼が終わった後にしてもらおうか。その前に行けるかどうか問題だがな」

「なんと! 卑怯だ!」

「肝心な事は言っていないぞ。何を想像しているんだ?」


 アルベルトに腰をさらわれて引き寄せられ、シャーロットに腕を体ごと使って抱き着かれてぎゅうぎゅう潰されて、私は貝のように口を閉じて黙っている。

 恥ずかしいから止めてとも言えない。これはエミリアに対するアルベルトとシャーロットのささやかな仕返しだからだ。

 エミリアとの対話を止めて私を取り合う姿を見せつけているのである。モブという言葉の意味が分からないけれど、何となく侮辱されているのは分かったからだと思う。


 この光景を見せつけられているエミリアは、何度か2人の会話に割り込もうとしたが完全に無視され、馬鹿にした私の取り合いで口論になっているものだからプライドが傷ついたのか大人しくなった。


「……ワタシがヒロインなのに……こんな世界、間違ってるんだから」


 唇の動きからして多分こんな感じの事を言い、うつぶせに体勢を変えて沈黙したのだった。

連日投稿はここまでです。

次回からまったり金曜更新します。

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