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オリビア・クレーエ  作者: ならせ
第1幕
17/52

第1幕ー17 退場、そして

※※注意※※

・気分が悪くなる表現があります。

 薄暗い廊下をアルベルトに支えられながら歩く。大広間から距離が遠くなるにつれ人の数が減り、もう良いだろうと彼の支えを離れた。


「……オリビア?」

「ええと…実は怪我なんてしてないのよ」

「は?だってあんなに血が……」

「あれは偽物の血。エル様に頼んで開発してもらって、後はこっちで必要な分を作ってお腹に仕込んでおいたのよ。もちろんマリアに渡したナイフも」


 少し破れたお腹の部分の布を広げて指を突っ込み、紐状の物体を少しだけ引っ張り出した。見た目にはあまりよろしくないけれど、見せた方が早い。


「腸詰の料理で使うやつを使って偽の血を詰めて、コルセットに専用のポケットを作って入れておいたのよ。この為にいつもよりかなりきつく締められたけど」

「はああああ⁉馬鹿か?馬鹿なのか?馬鹿だよな?」


 馬鹿馬鹿失礼な。私は本気だ。

 この後が見られないのが残念だけれど、姉達が残って見届けてくれているから帰ったら細かく聞くつもりだ。


「はぁ……怪我をしていないのならいい。それで、どうしてこんな事をしたんだ」

「もう奪われ続ける事に飽きたからよ。やるからには奪えなくなるまでやろうと思ったの」

「まぁ、気持ちは分からなくもない。俺も同じような事を考えた事があるからな」

「そういえば、そうだったわね」

「あの時も今も俺には力が無いから羨ましいよ……唯一手に入れられたのはオリビアだけだ。手に入れられるまで、ずっと我慢した甲斐があった」

「……どういう事?」

「ん?どういう事も何も、俺がオリビアと婚姻する為に君の父上と計画した事だったんだが……」

「ちょっとそこでゆっくりお話しましょうか」


 王城の中庭を指してニコリと微笑むとアルベルトはしまったという顔をして口を塞いだ。


「や……その恰好のままで居続けるのはマズいだろ。明日、明日!なっ!」

「今聞きたいのよ!」

「俺は逃げたりしない!明日そっちへ行くから今日は帰れ!」


 力づくで裏口へ連れて行かれ、馬車に乗せられてしまい仕方なく今日は諦める事にした。

 屋敷に戻ると血だらけで帰ってきた姿でも使用人達は誰も驚くことなくお風呂の用意をされ、汚れたドレスと下着類は回収されていった。


「首尾はいかがですか?」

「上々だと思うわよ。最後まで見届けられないのが残念だけど」


 髪を梳かしながらドロテアが問いかける。もう私が直接何かをしなくても、後は勝手に崩壊していくはずだ。出来る事ならばカレスティア邸へ潜入して直接見届けたいところなのだが、私の目の色は他にも無い珍しい色合いの為にすぐに気づかれてしまう。

 イベッテとイバンが私の目の代わりになってくれているので、報告をじっと待つだけの身だ。


「明日はアルが来るから準備をお願いね」

「かしこまりました。明日は晴れると思いますので四阿の方を整えておきます」

「そうね。そうして頂戴」


 ベッドの上掛けを掛けてドロテアが部屋から出て行った。目を閉じてしまうのがもったいないくらい興奮する夜だった。

 マリアのあの姿を何度思い浮かべてきただろう。それを現実に目の前で見て笑いそうになって我慢したらプルプルしてしまった。お陰で周囲は刺されたショックで震えていると思ってくれていたようだけれど。


 私とアルベルトが去った後の大広間はどんな状態になっただろう。それも含めて全て漏らさずに聞かなければ。

 崩壊しましたマル、では駄目なのだ。彼等がどのような様子で、どんな行動を取るのか他人が見ることが出来なさそうな部分が見たいのだ。使用人は他人であって他人ではないからこの場合は除外だ。

 きっと今頃カレスティア邸は楽しい事になっているのだろう。


 そう思うと早く夜が明けて明日が来て欲しい。やはり今夜は眠れそうに無い。

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