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第72話 ねーわッ!

大体のあらすじ、召喚獣を売って金を得るはずがアロハシャツを買った。



資金調達に来たはずが、服を買っただけなんて・・・バッツは頭を抱えてうずくまる。

「じいちゃん、みんな、ごめん・・・お金が手に入らなかったよ・・・」

か細い声で集落で帰りを待つ仲間に謝るバッツ。

「安心しろバッツ君、金の目処はすでに立っている。」 

何故かアロハシャツを再び着ながらシュージンは言う。

「ほ、目処が立ったって本当ですか?」

そらもうビンビンに立ちまくっているよ。自信満々に答えるシュージン。

「ど、どこに売るんですか?」

「伯爵様にだよ。」

「あっ!」

バッツは宿屋でネロが言っていた事を思い出す。この辺り一体を収める領主。召喚術士でもある伯爵がこの町にいると言っていた。

「確かに!領主ならお金もありますし、召喚獣を扱えるなら買ってくれる可能性は高いですね!」

「ああ、この町の買取業者はいささか問題がある店ばっかりだからな、そっちに売った方がいいだろう。」

どちらかといえば、先生の方に問題があったのでは?バッツは訝しんだ。

「思い立ったが吉日!目処が立ったが好日!2と5がつく日はポイント2倍お客様感謝デー!早速行くぞ!」

「はい!」

走り出したシュージンにバッツはついて行く。

バッツは足を動かしながら考える。

(みんな、もう少し待ってくれ。もう少しでお金が用意出来そうなんだ。・・・それと、『思い立ったが吉日』ってことわざ、こんなカッコ悪い続きがあるの?だれか教えてくれ・・・)

どこか生真面目なバッツであった。先行するシュージンも伯爵について考える。

(バッツ君の言った通り、伯爵なら召喚石を売り捌けるだろう、それに王都や戦争の情報も得られるかもしれない。)


ーーー

町の商店街から離れて中心部に向かったそこに伯爵邸はあった。

門は鉄柵で閉じられていて、そこから見える煉瓦造のシンメトリーの大きい屋敷、庭には白い花を咲かせたバラ園。一目見ただけでわかる。金持ってそう、と。

「すごい金持ってそう。」

「実際にこんな商業が盛んな町に住んでるなら相当なもんでしょう。」

「あー、どうしようドレスコードとか大丈夫か?アロハシャツ着て会えるのか?」

「アロハシャツは脱ぎましょう。」

失礼です、とバッツが付け加える。しかしながらバッツも黒いローブを見に纏いこれまたドレスコードに問題がある。

門の前でアロハと黒ローブがあーだこーだ喋っている、冷静に見ると世間一般に言ういかにも怪しい2人組である。

「そこで何をしているッ!」

ハキハキと良く通る女性の声が背後から聞こえた。

シュージン達が振り返るとそこには2人の女性がいた。シュージンがその問いかけに答える。

「ファッションリーダーです。」

(そういう所ですよ!先生!)

シュージンの発言に呆れるバッツ。しかし、意外な反応が返ってくる。

「なんだ、ファッションリーダーか〜。」

「んな訳あるかいッ!」

「え〜?でもアロハシャツ着こなしているし〜。」

「アロハと黒ローブがトレンドなんて聞いたこともないわッ!」

「あーし的にはあり。」

「ねーわッ!」

間延びした声とハッキリとした声。その2人の性格はまるで真逆。

服装も一方はのりが効いている軍服をキチンと着こなしている、しかしもう一方はよれたシャツを着て、胸のボタンを外し着崩している。

しかしながらその2人の容姿は瓜二つで、彼女たちが双子だということが自然に分かった。ワーワーと話し合うその双子にバッツは質問する。

「あの、お二人はどちら様でしょうか?」

ハッキリ声の女は目をキラーンと輝かせて自信満々で答える。

「よくぞ聞いたッ!我こそはマルス伯爵私設兵団所属召喚士、セフィニ・ジャンヌス!」

「あーしはセフィニの双子の姉のデビュで〜す。よろ〜。」

「こっちは我と同じく私設兵団に所属するデビュ・ジャンヌス!」

「あれ〜?あーし自己紹介したのに〜。」

「格好がつかんッ!」

「ドイヒ〜。」

双子の姉妹は再び話し合いを始めた。

シュージンは双子の意識が自分達が逸れている隙にバッツに耳打ちする。

「チャンスだバッツ君、この双子に上手く取り入れば伯爵に会えるかもしれない。」

「確かに、召喚士って名乗ってましたし召喚獣の売買についても話が通じますね!」

シュージンはふざけた態度を改め、慇懃に話しかける。アロハを着ながら。

「先程はすいません、ファッションリーダーと言うのは冗談です。私は召喚石を売り歩く行商人でございます。」

「なにッ商人だと?」

「本物のファッションリーダーかと思った〜。」

双子がそれぞれ反応するがシュージンは丁寧な物腰を装い話を続ける。

「この度、珍しく強力な召喚獣が手に入りましたので伯爵様にお見せしたく思いまして・・・是非お目通りを願いたいのですが。」

「信用ならんッ!」

早く帰れとシッシッと追い払う手振りをするセフィニ。

バッツがまたダメかと気を落としたその時、デビュが苛立つ妹を宥めるようにいう。

「まーまー、見るだけ、話し聞くだけくらいはタダなんだし〜、少しくらいいいじゃん。」

「お前は楽観的過ぎるッ!イルド帝国とは一時停戦状態とは言え、我が国の10の町村と3つの砦がイルドの占領下にあるのだぞッ!!」

「だからこそだし〜、強力な召喚獣なら兵力に必要でしょ〜。」

シュージンはセフィニの言った事に引っかかった。多くの町村が占領され、一時停戦状態。アバルが戦ったのはやはり、特別な状況下での作戦を扱うエリート部隊だとシュージンは確信した。

シュージンが思いふけっているとデビュが顔を覗き込み喋りかけてきた。

「とりま石見してよ。」

「お前ッ!勝手な事を!」

「石触んなきゃ分かんないじゃ〜ん。勝手にやりま〜す。」

セフィニはデビュの態度が気に入らなかったか、フンッと鼻を鳴らし腕を組みそっぽを向いた。

シュージンはデビュに石を渡す。

デビュは石を握り、瞳を閉じる。召喚士としての全神経を使い、手の中の召喚獣の力を量る。デビュの全身にビリビリと電流が走るような感覚が起きる。

「やべ〜。やべ〜。やべぇ〜〜!」

デビュの瞳が開かれ、興奮しながら語彙力のない感想を言う。

「やべ〜やべ〜。セっちゃんも触ってみなよ記念だし〜。」

興奮で顔を赤くしたデビュが、セフィニに無理矢理に召喚石を握らせる。すると。

「やべッ!やべッ!やべッッ!!」

「いや、どっちも語彙力なさすぎるでしょうに!!!」

バッツのツッコミが冴え渡るのであった。

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