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夢を見た。
ナツメの夢。
ふわふわの茶色の髪に。
大きな丸い目……あぁ、ナツメだ。
威吹の身体はナツメのモノだったけれど、戒には威吹にしか見えなかったから。
久しぶりに……ナツメを見る。
そして動いている事に、とてつもなく胸が熱くなった。
嬉しくて、嬉しくて……泣きそうになる。
でもナツメの前だから、グッと堪えた。
「ごめんね、戒」
ナツ……メ?
何でナツメが謝るんだ?
「私、全部見てたの……。
私の心、威吹さんといつも一緒にいたの」
なんだって!?
じゃあ、じゃあっ……!!
「戒が、私の為に頑張ってくれてた所もずっと見てたよ」
あんなカッコ悪いところ、見られてたのかっ!!
「ううん、そんな事……」
ナツメには見てもらいたくなかったよ、あれ。
「ううん、カッコ悪くなんてなかったよ。
本当に、私の所為でごめんなさい」
いや、謝る事なんて、ないよ、ナツメ。
(でも、あんなかっこ悪いところ見られていたと思うと、ダメージがでかすぎるって……いや? 待てよ……)
俺の方こそごめんっ!!
ナツメの体だってことすっかり忘れてて
威吹を殴ろうとしてた!!
(そ、それに俺の気持ち……丸見えだった、よな?)
「ううん、それは……戒が私の事、思っててくれた事だし……威吹さんを、許してあげてね」
少なくとも嫌がってない様子に戒は嬉しくなりながらも。
なんで、ナツメが威吹の事……かばうんだよ。
ちょっと拗ねる。
「威吹さん力が無くて、私の体の維持だけで精一杯で……戒に会ってない時は、本当に辛そうにしていたの」
!?
そうだったのか?
アイツまったくそんな事言ってなかったぞ!
でも、そんなヤツかもしれない……言い訳しなかったし。
確かに今回、俺達は威吹に巻き込まれた形だったけど。
でもアイツはそれなりに責任とってくれたというか。
………………。
「もうとっくに許してる……」
そう言って、戒は目が覚めた。
目覚めれば、いつもと変わらずの朝。
いつもとかわらずの自分の部屋のベットの上。
そしていつもと変わらずの……。
「早く起きないと、遅刻するわよ~戒!!」
……母の声。
そしてそして、慌てて階段をかけ降りると……。
「おはよう、戒」
玄関のドアから、ちょこんとナツメの顔が遠慮がちに覗く。
「ナツメ……!?」
「早くいかないと遅刻するよ?」
階段をけつまずきそうになりながら息が上がるほど駆け下りてきた自分を、不思議そうに見つめるナツメには威吹の面影は全く無くて。
今度こそ、本当に完全に威吹ではなくナツメに見える。
念のため頬を思いっきりつねって見た。
痛い。
物凄く痛い。
半端なく痛い!!!
ああ……本当に、生き返ったんだと、戒は実感した。
「ちょ、ちょっと待ってて、ナツメ! 今、ご飯食べて着替えて来るからっ!!」
普段通りの日常がかけがえないものだと痛感する。
「なあに? ほっぺ真っ赤よ?」 そう母親に聞かれても、返事もせずに慌てて戒は朝食を口に押し込むと、着替えてナツメの前に立った。
「威吹に結局は、お礼言えなかったなぁ」
「え?」
通学路で一緒に並んで歩いている事が信じられなくて、戒はずっとナツメを見つめていた。「どうしたの?」と恥ずかしがるナツメにも構わずに戒は生きて動いて、些細な事に反応してくれるナツメが物凄く嬉しくて目が離せない。
どうやら、ナツメはあの出来事を、完全に忘れているらしい。
その方がいい。
だってあんなかっこわるい俺を全部見られていたとしたら嫌だし……それに……。
戒は深呼吸を一回。
直視できなくて、下を向いてだけれども……ナツメに言った。
「俺……おまえの事好きなんだ、ナツメ」
告白はちゃんとしたい。
ナツメの顔を見ようとして、顔を上げた戒は目を疑った。
――視線の先に立っていたのは、ナツメではなく威吹!
「いいいいいい、威吹っ!!!???」
「……すまない事をした」
威吹の顔は無表情であるが、目は虚ろで少し逸らし気味だ、どうやら本当に気まずいらしい。
もちろん戒も気まずい。
「どうしてまだナツメの体に居るんだよ!! っていうか妹は大丈夫なのか!?」
戒は真っ赤になりながら、威吹に怒鳴る。
この動揺している気持ちをどこにも持って行き様がない。
「妹の事は、大事無い。昨夜のうちに薬を届けてまいった」
威吹の嬉しそうな顔からすると、本当に大丈夫なんだろう。
少しほっとしながらつつ……。
「そ、そう。大丈夫ならいいんだけど……ってだからなんでここに?!」
「……大変言いにくい事なんだが」
「前置きはいいからっ!!」
「では、単刀直入に。どうやら我の力が、そなたの魂と非常にくっついていてな、無理に切り離そうとすれば戒、そなたの命が危険な事に気が付いたのだ……それにナツメ殿の魂も体に未だ馴染んでおらぬ」
「と、言う事は?」
何だか、スゴクいやーな予感がする。
聞きたくない、聞きたくないよ俺は!!
「我は暫く、ナツメ殿の体の中に居る事にしたのだ」
それって……それって。
「ど……どのくらい?」
あーもう聞くな! 俺の馬鹿!!
「……そうだな人の時間にては、短くて一年程になるか」
ミ、ミジカクテイチネン
復唱して、脳にやっと達した。
「み、短くて一年―――!!??」
解凍、そして大絶叫。
やっぱ、ナシ。
威吹への感謝の言葉は取り消す!!
これから一年間以上、威吹がナツメの体にいるという事は、俺がナツメと一緒に居る時は必ず威吹もいるということで。
……………………。
これからの事を色々と頭で考えて、戒は絶句する。
戒はこの神様達と関わってしまった事に――――海よりも深く後悔したのだった。
「海よりも深く」最後まで読んでくださってありがとうございます!
このお話は同人サークルの会誌に投稿していたのですが、そちらの方では完結できず。
その後、サイトで大幅に加筆修正し自分のペースにあわせて連載していたら、短い話にも関わらず完結までに数年もかかってしまったといういわくつきのお話です(笑)
プロットでもがっちり決っているにも関わらず、会誌の時から8・9話をどう書いていいのか分からなくて、そこだけでぐるぐると納得できるまで書き直し、数年経過したという(;´∀`)あーれー。
改めてこのお話はどういうジャンル分類なんだ?とか思ったのですが
今ならニアホモ?って感じなのでしょうか。
未だによく分からなくて、読んでくださっている方が不快にならないようにと注意書きでBL要素有りと思いっきりネタバレしてますね!
海鳴様は威吹をゲットできませんが。
題名を決めるのが苦手なのですが、この作品はラスト(戒が海よりも深く後悔する事)が決まっていたので、題名に苦労しなかった珍しい作品です。
それにしてもナツメちゃん本人は殆ど出てこなかったなぁ。




