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特捜騎士リボリアム  作者: 鈴木りゅう
二章:アバンジナ南部編
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第十話「執念のヴァルマ領決戦!!」1



 詳細不明の組織『光の結社モグログ』の野望を食い止めるため、各地を旅していたリボリアム。

 大アバンジナ帝国の東にて、『奇跡の人』と呼ばれる男、ロクシンを巡って、聖女シプレ一行と共にモグログと戦ったが、奮闘虚しくロクシンは連れ去られてしまった。


 モグログが消えた現場から離れ、リボリアムは聖女達の元に戻っていた。


「すまない。……逃げられてしまった。」

「聖女さん、ロクシンさんはどうなっちゃうんでしょう?」


 カイナが訪ねるが、シプレはふらふらとよろけ、力なくへたり込んでしまった。倒れる前に神官フルールに支えられたが、問いに答えるようにふるふると首を振った。


「わからない……ゆびわ……。……」

「聖女様がお疲れです、早く休ませてあげないと……!」

「無理もねえ、歩き通しに戦い通しだ……俺達にもっと力があれば!」


 聖女一行はひとまず付近の洞窟に入り、休むこととなった。

 リボリアムもBRアーマーを収納する。だが、そこから何をするでもなく、じっと立って地面を見ていた。


「ほぉーらっ!」

「うっ」


 カイナがその背をばしんと叩いた。思ったより強く、ちょっと肺に来た。


「落ち込んでても始まりませんよぉ。私たちも動きましょう。」

「カイナくん……でも、どうすればいいか。」

「とにかく動かなきゃ、でもどうすれば?……そんな時は、これも良いでしょう~。」

「ん?」


 言いながらカイナが取り出したのは、ごく普通の木の棒に見えた。工夫して何かに見立てようとしても魔法使いの杖にすら見えない、何の変哲もない棒だ。

 カイナはそれをぽぽーいと投げ…………落ちた。


「……あっちですねぇ。」

「あっちったって!?」


 何のことは無い。子供だって知っている「倒れた方向に進む」という、占いとも呼べない棒遊びの一種である。こんな山の中でやられても、どこに進んだって山か森しかない。


「まぁまぁ、こういう時、とにかくまずは”最初の一歩”こそが大事なんですよぉ。……方角は、南……やや南西。何か心当たりはぁ?」

「心当たりったってぇ……。やや南西?なんせい……ここが東の端っこだろ?思いつくものなんて……。それこそボリアミュートくらいしか。」

「ほほ~?いいんじゃないでしょうかぁ?道を見失ったら、初心に帰るというのはよい事ですよぉ。」


 言われて、リボリアムは南西を見た。帝国、ヴァルマ領、ひいては人の世界の最南端。領都ボリアミュートの方向。

 カイナが始めたお遊びみたいな切っ掛けだったが、確かに、と思った。最初の一歩を───。


「……初心か。」



    *



第十話『執念のヴァルマ領決戦!!』



    *



 遥か雲の上を、銀の鳥が行く。

 否、鳥ではない。それは人を乗せて地を駆け海を行き、こうして空を飛べもすれば、地底を掘り進むことだってできる。やろうと思えば星の海にだって漕ぎ出せる万能の乗り物。

 リボリアムの相棒、”鋼鉄の騎馬”ことベルカナードMk-Ⅱ、その飛行形態”ベルカナード・クエーサー”である。

 本日はリボリアムの後ろに、13、4歳程の少年がくっついている。奇妙な縁から旅の相棒となった吟遊詩人バードにして、『歌魔法』『セット魔術マジック』という2つの魔技使い、さらにはなんか占いが趣味らしい、カイナである。


「やぁ~これは快適。」

「ベルトとか無いから落ちるなよ、助けるの大変だから。」

「よゆ~よゆ~、余裕のヨシュアですとも。」

「なんだそりゃ??」

「空の演奏とシャレこみますかぁ。観客が2人しかいないのが残念ですがぁ。」

PPPcピピピコ


 カイナはリボリアムの疑問を無視しつつおもむろにバンジョーを取り出し、とろりとろりと弾き始めた。

 ベルカナードMk-Ⅱの『機魔術レプリ・マジ』により、一行の周囲は防風の魔法がかかっている。そのおかげで、雲の上だがさほど寒くなく風もない。音もベルカナードのタービン音くらいである。カイナのバンジョーは程よく響いた。


「見えて♪ いるよね。きみの 周りは♪

 きいっと きれいな ものばかりじゃ ないはずさ♪」


 その旋律は穏やかで、優しく語りかけるような。しかし詩は寂しげで、アンバランスなはずなのに不思議と嫌な心地ではないものだった。不思議な歌であった。

 それを聞きながら、リボリアムは、生まれてからこれまでの人生を振り返っていた。


 初めて外界に出た日。ヴァルマ領主の子、トマックと出会った日。彼らと送る日々は充実していて、リボリアムの胸を暖かくさせる。

 そしてついに、己の宿命と向き合う日が訪れた。人々の幸せを奪う『光の結社モグログ』との戦い。リボリアムの真の使命───人間ヒュームではなく、バイオティクス・ロボという存在として生み出された理由。”魔族”に対抗するため生み出された自分。

 今回、モグログにはその魔族復活に近づく一歩を与えてしまった。その鍵を握るロクシンという人物と一緒に。

 モグログの野望を阻止し、ロクシンとその兄を救出するため……そのために出来る事とは何か?ボリアミュートに帰って、何があるというのか?

 リボリアムの脳裏には、痕跡だけが残った岩肌の光景が焼き付いていた。アレは何かの魔術なのだろうか?


 魔術。


(そうだ……)


 あった。ボリアミュートには1人、魔術のエキスパートがいるのだ。

 微かだが、希望が見えてきた。棒占いも侮れないなと思った。

 そうしてカイナの演奏を聴きながら、途中寄って来た正体不明の蛇のような空飛ぶ乗り物に乗車したり、その車掌と名乗る存在から”エキベン”なる木の実を頂いてお昼ご飯にしたり、季節外れの積乱雲の向こうに見える建造物らしき光景を眺めたりし、なんだかんだで予定よりだいぶ早く、2人と1台はボリアミュートに到着したのだった。


「なんだったんでしょうねアレ……」

「や~~不っ思議な乗り物だったなぁ~。」


 到着と言っても街のど真ん中に下りると騒ぎになるため、街からはちょっと見えない具合の所に降り、ベルカナードは別ルートでマザーの工房……リボリアムの生まれた場所であり、この地に隠された超古代の遺跡、『特別協定工房4番基』に戻る。残った2人は現在、ボリアミュートへてくてく歩いている最中だ。

 ……ちなみにカイナの「なんだったんでしょうね」は、雲の向こうに見えた遺跡のようなものの方に対して言ったものだ。見間違いでなければドでかい建造物が空に浮かんでいた事になるが……。どうせ答えは出なさそうだったのでそれ以上は言及しなかった。


「……ふぅ~~ん、ここがヴァルマ領。確かに南って感じがしますねぇ。」

「わかるのかい?」

「植物がねぇ、けっこう違いますねぇ。」


 着くまでのあいだ、リボリアムとカイナは他愛ない話をしながら歩き、やがてボリアミュートの門が見えてきた。が、どうもリボリアムの記憶と比べ、雰囲気が違った。

 こちらに気づいた兵士が手を振ってくる。


「おおーい!リボリーーー!!」

「ウチの守備隊だ。おーーーい!!帰ったぞーーーー!!」


 応答し、門前まで行く。近づいて気付いたが、街を囲む防壁が……かなり傷ついている。


「今回は長かったな?おかえり。そっちのは……?」

「ただいま。ちょっとな。こっちはカイナ君。吟遊詩人だ。」

「どぅもぉー。」

「ところで……外壁、どうしたんだ?まさか、モグログが……?」

「ああ、そのまさかさ。見た目ほど状況は悪くねえが……けど良くもねえ。」


 軽く挨拶を交わし、リボリアムは気になっていたことを聞く。外壁の損耗は、やはりモグログの襲撃によるものらしかったが……。


「帰ってきて早々で悪いが、すぐに領主邸に行ってくれ。詳しく聞けるはずだ。」



    *



「空飛ぶ乗り物!?」

「紛争状態!?」


 それはいかなる会話だったのか、少年と青年は交互に叫んだ。

 赤髪とそばかす、活発そうな目をした少年、ヴァルマ領主が次男であり、リボリアム無二の親友、トマックである。


「木で出来たって何!?」

「いやいやいや、先に紛争の事でしょ!?」

「そっちは今はいーんだよ!」

「一番よくないだろ!?!?」

「あ~、そのぉ、できれば紛争の方がぁ……。」


 横から口を挟んだカイナの一言で、トマックがはたと黙り込む。


「はじめましてぇ、吟遊詩人のカイナと申しまぁす。」


 言いながら、バンジョーをボロロンと鳴らす。


「リボリアムさんとは旅の連れですぅ。あなたがトマック様ですねぇ?お話は聞いてますよぉ。」

「あ……ウン。よろしく……。」

「あらリボリー、こんなところに。」


 と、第三者の声がした。女性の声だ。気づけばリボリアムの後ろに、黒髪褐色の美少女が立っていた。帝国の誇る最高戦力の一角、『近衛銃士ピストリア』。その名も高き───


「ドミナ師範!ただいま戻りました。」

「ええ、おかえりなさい。サルトラ様に挨拶は済ませましたか?」

「ああいえ、まだ───」

「ドミナ!?近衛銃士のドミナ=バローナ=アインドール様!?うわぁ~まさしくご本人!感激ぃ~~!!」

「カ、カイナ君?どうしたんだいきなり……。」


 今まで見た事も無い程ハイテンションなカイナに困惑するリボリアムだが、感激されたドミナ本人は何か解っているのか、フフンと姿勢よく立ち、鼻高々だ。そう、本来近衛銃士とはこういう存在なのだ。このド田舎にあって、目の前の紫髪の少年が初めて相応しい反応をしてくれて、ドミナは大いに満足した。誰だか知りませんが覚えといてあげましょう。フフン。

 ちなみに、トマックはカイナが自己紹介した時からなんだか大人しい。理由はこの場の誰もわからない。本人ですら。

 そうしてトマックが縮こまっている間も、わちゃわちゃと会話が進んでいく。カイナは近衛銃士が何たるかを熱く語り、リボリアムはイマイチピンと来ず、ドミナはそんな2人を交互に見ては機嫌を良くしたり悪くしたりした。

 会話が一区切りしたところで、揃って領主サルトラの執務室へ。

 領主サルトラは見慣れぬ紫髪の少年を一瞥したが、すぐにリボリアムに向き直り話し始めた。


「よく帰った、特捜騎士リボリアム。報告は……特に今、ヴァルマ領やボリアミュートで手を打つ必要があるもの以外は、後回しだ。急ぎの事態がある。」

「! ……紛争の事ですか?」

「そうだ。ここ1週間の話になる。」

「俺……いえ、私からの報告は後程。先に状況を知りたく存じます。」


 サルトラは「うむ……」と一つ頷き、語り出した。


「リボリアム。お前が今回の特捜騎士の遠征捜査に出てすぐに……、連中は攻勢を仕掛けてきた。堂々と街道筋かいどうすじからな。

 規模は……魔獣を兵隊と捉えるなら、ざっとこの街の兵士と同数といったところだ。」


 思わず息を飲むリボリアム。


「戦力そのものは、ただの魔獣がそのほとんどなのが救いか。奴ら独自の”キメラ魔獣”とやらは全体の3割と言ったところだ。それを指揮するキメラ魔人が10人程度。それを統率する指揮官が、上級キメラ魔人という構成だ。

 攻撃を仕掛けてきたかと思えば、乱戦になる前に撤退していく。それを、この1週間で3度繰り返している。規模は正規軍並だが、戦い方は遊撃に近い。……一番最初は奇襲。その次は力押し。まるで我々で、自分たちの軍事演習をしているかのようだ。」


 ボリアミュート守備隊は軍隊としてはそれほど多くも無いが、かといって全戦力ともなれば相当なものである。もちろん、そこらの魔獣と守備隊兵士とでは圧倒的に兵士達の方が強いが、ボリアミュート側は全戦力をぶつけられるわけはない。迎撃に出せる戦力は半分が最大だろう。


「……まさか、帝国を本格的に攻撃する準備……?」

「断定はできん。もとかく、お前が帰ってきてくれたのは僥倖ぎょうこうだった。また連中が攻めてきた場合は、即座に対応してほしい。とはいえまずは、マザーの所にいってくれ。最近元気が無くてな。」

「? ……マザーの元気がない……??」

「お前が顔を見せれば、少しはマシになるかもしれん。」


 リボリアムにはいまいちピンと来なかったが、ともかく了解した。


「では、そちらの報告を聞こう。……そちらの少年は?」

「紹介します。吟遊詩人のカイナ。山奥で出会いまして……以来、旅の事とか、色々教わってるんです。」


 カイナは静かに一礼した。


「どうした?かしこまって。いつもは『ではここで一曲……』とかって弾き始めるのに。」

「あのねぇ、貴族様がいる室内でそんなことしますか。」


 軽いやりとりだったが、その一言で一同は2人の力関係を察した。色々と常識の足りないリボリアムの、よき旅の師となっているのだろうと。


「と、ともかく、彼は旅の他にも、面白い特技を色々持ってて、助けてもらってます。魔法好きだし、ナイアさんにも会わせてみたいですね。」


 領主サルトラが頷く。その後、今回の捜査について報告した。モグログとは別のキメラ魔人らしき部族。封印されし大魔獣とその顛末てんまつ。モグログからの離反者と、キメラ魔人同士が合わさった融合態の危険性。そしてモグログの祭器らしき指輪……それを扱う男ロクシンとその兄が奪われてしまったこと。


「そうか……ならばやはり、マザーに会いに行くと良い。今ならナイア嬢もそこにいる。」



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