第16話 牢獄へ
ガラガラガラガラ。
「入れ」
俺たちは、白色のきれいな城(フラウガーデン城)に連れてこられ、城の最下部、つまり地下牢に入れられようとしている。
「お前たちの処分については検討中だ。しばらくはここにいてもらう。だが、安心しろ。痛みを加えるつもりはない。取り調べを行うだけだろう」
そう言って、俺たちをここに連れてきた女性は牢屋の鍵を締めて、どこかへと言ってしまった。
牢屋の中は思ったより広い。ベッドはご丁寧に3つ置かれているし、カーテンで仕切られているけど、その向こうにはトイレとシャワー、流し台もある。俺が持っている牢屋のイメージとは、だいぶかけ離れている。ただ、トイレとシャワーがあるカーテンの向こう側以外は、鉄格子になっていて牢屋感はある。
「あんたたち……なにやったのよ?」
突然、鉄格子の向こうから声が聞こえてきた。
「ここは、地下牢の最下層。7階。よほどのことをやらない限り、ここには来れないわよ?」
薄灰色のパーカーを身にまとった少女だ。鉄格子を挟んだ隣の部屋に座り込んでいる。
「どういうこと?」
シャールが聞き返す。
「この地下牢はね、地下1階から7階まであって、凶悪な犯罪者になるほど、下の階に収容されるの。ここは1番下の階。つまり、かなりの極悪犯罪を引き起こした人くらいじゃないと収容されないわ」
パーカーのフードを目元まで被っているせいで、少女の顔が全然分からない。
「私たち……とくになにも……」
「してないよね……?」
「はい……」
シャールが聞いて、マイが確認、ラミが同意。3コンボ決まった。
じゃなくて。
「……何もしてないのに、ここに来たの? 面白いわね。あんたたち」
少女がふふっと微笑む。
「貴女こそ……なんでここに?」
シャールが恐る恐る少女に問いかける。
「……あんたたち……どこから来たの?」
「イルイヒヲ」
少女の質問にマイが答える。
「じゃあ……あんたたちが…………勇者……?」
ん? 勇者? こいつらが?
ありえないだろ。
「……地下牢に来る前に、夢の中で予言者と名乗る人に言われたのよ。『地下でこの世界を救う勇者に出逢うだろう』って」
そう言い終えると、少女は被っていたパーカーのフードをサッと下ろして、こっちを向いた。
青色のロングヘアー。何故か瞳は黒い。サラサラと揺れる髪に、白い頬、小さな唇。
「あたしはエミリア。職業は魔法使い。Bランク冒険者だよ」
思わず見惚れてしまった。えーとじゃあ早速失礼しますよー。
【千里眼】
エミリア・サンドーラ
LEVEL 54
職業 魔法使い
体力 68
魔力 289
素早さ 112
知識 186
攻撃力 59
防御力 177
【使用可能魔法】
標準魔法 . 改
高位魔法 . 千
破壊魔法 閃光魔法
【獲得スキル】
希少能力
火炎魔法無効 氷雪魔法無効 風魔法無効 爆発魔法無効 炎息耐性 氷息耐性 魔力吸収 標準魔法無効 高位魔法無効
超能力
念力通話
【獲得特殊能力】
魔法反射 魔法創作 魔法操作 魔術吸収 魔力変換
えなにこれ? 普通に高い。
俺より高くないか?
LEVEL54!? それに、魔力も俺より高いし、高位魔法すらも全取得してるし、破壊魔法とか閃光魔法とかって、めちゃくちゃ強いやつじゃないの!?
『魔法使いはもともと、高い魔力を有します。そして、特殊能力 魔力変換によって、魔力を魔法に、魔法を魔力に変換することが可能になります』
えーすご。魔法使いか。
これなら、Bランク冒険者ってのも納得できるな。
「じゃあ、どうしてここに?」
シャールが質問する。もっともすぎる質問だ。
「……とある調査をしててね。このフラウガーデン城に忍び込んだんだけど、捕まってしまったの」
エミリアと名乗った少女は、立ち上がってこっちに近づいてくる。
「でも、こんなところで勇者様に出会えることができたから、むしろラッキーだよ」
だからさっきから引っかかってるんだが、『勇者』っていったい誰のことなんだよ? シャールでもマイでも無いよな……。かと言って、ラミでも無い気がする。そもそも10歳の女の子に、勇者だのなんだの押し付けるほうがおかしい。じゃやっぱりシャールか、マイか?
『主様』
ん? どうしたユーフィミア?
『おそらくですが、勇者とは主様を指しているのではないかと思われます』
へ? なんで俺?
『主様の職業を思い出してください。【魔王勇者】だったはずです』
あ。
完全に忘れてた。絶対そうだ。
『勇者』って俺のことかよっーーーー!!!!
第17話に続く。




