第14話 フラウガーデンのご登場
ゴォォォ…………
俺たちは、ホテルを出て街の中央にある広場にやった来た。
もう街の人や、他の宿泊客たちは避難し終わっていて、街の広場はたくさんの人でごった返していた。
どうやら広場までは火が回ってこないらしく、ここは安心だそうだ。
「ねぇつるぎくん……これはどういうこと?」
マイが聞いてくるが、そんなの俺だって知らないよ。
「言えることは、これは自然発生の炎ではないってことだけですね……」
小声でラミが話してくる。
「自然発生じゃない……?」
いやまぁ、そりゃそうか。
火事なんて、誰かが火を扱ってなければ起きないもんな。
か、もしくはガス漏れとかか?
「……おそらく魔術によるものだと」
また小声で言ってくる。
「魔術?」
「はい。魔法と違って、多くの魔力を使ってそのチカラを継続的に発生させるものです」
ん? どういうことだ?
『例えば、炎魔法を特定の対象に放つと、その対象になんらかの形でダメージを与えた瞬間に消えます。しかし、炎魔術の場合では、魔力を多く使っているので、対象にダメージを与えたあとでも消えずに燃え続けます』
ユーフィミアがすかさず、説明をしてくれる。
つまり……魔法の上位互換的な感じか。
広場にはさらに人が増えて、人の波には逆らえずに、俺たちも広場の真ん中へと押し流されていく。シャールと、マイ、ラミはそれぞれ手を繋いで離れないように押し流されていく。
「魔術師だー!!」
広場の中にいる人の誰かが叫んだ。
「魔術師!?」
俺はラミが振り向いた方向へと向く。
燃え盛る家の上に黒いマントを翻した男?が立っていた。周りには、変な文字が並んだ円……あ、魔法陣か!
ゴォォォ…………
炎はさらに強くなる。
と、燃えている炎に気を取られた好きに、そいつはもういなくなっていた。
「フラウガーデンがもうすぐ来るぞー!!」
またまた誰かが叫んだ。
フラウガーデン? 魔物か?
「フラウガーデンとは、国です。女性だけの国なんです」
ラミが教えてくれる。女性だけの国……。
「でも、かなり強いんです。兵力だけならイルイヒヲにも匹敵するほどです。主にサウスエスト、つまり南西地方を統治しています」
ここらへんは全て、そのフラウガーデンという国の支配領域なのか。
ドォォン!!
いきなり大砲を打ったような音が聞こえてきた。
「フラウガーデンだー!!」
誰かがまた叫んだ。
すると、青い光とともに、10人くらいの女の人が登場する。うん。いかにも強そう。
と、いうか装備が際どすぎる。なんならビキニ水着だろあれ。
『…………』
あ、やべ。そこに注目してたのユーフィミアにバレた。
「10分以内に消火だっ! いいなっ!?」
「了解!!」
「それでは、全員職務を全うせよっ!」
1番前にいた偉そうな人が号令をかける。そりゃこんな軍隊強いに決まってるわな。
ドドドドドっ!!
一気に水魔法がぶっかけられる。なるほど。何人も一緒に魔法を放っているから、威力が上がってるんだな。
けど、炎には効果なし。やっぱり魔術に魔法は敵わないのか。
「ナナ様っ! 全く効果なしだと思われます!!」
ナナ様と呼ばれた人は、1番前で偉そうに指示をしていた人だ。腰まである青く長い髪に、凛とした目つき、腰には剣を差している。いかにも軍隊の長だなっていう雰囲気だ。
「くっ……! 仕方ない。魔術には魔術だ……全員速やかに魔術の詠唱を始めろっ!」
また指示を出す。
「なぁラミ。あの魔術ってどんな魔術なんだ?」
「つるぎさんも気づいてましたか。流石です。あれは普通の炎魔術ではないんです」
え? そうなの?
今知ったけど、ここは俺知ってましたっていう感じでいこう。
「あぁ、であの魔術はなんなんだ?」
「あれは、連弾魔術ですね。いくつかの魔法陣の術式を組み合わせて、ちょっとやそっとの魔術では、絶対に消えない仕組みを作り出しているんです」
へぇー。流石はラミ。
ドゴッ、ドンッドン!
水に加えて氷の魔術まで放っている。本当に優秀すぎるだろ。この人たち。
「すごいな。……フラウガーデン……だっけ?」
「当たり前です。フラウガーデンの軍隊は、魔術、剣術、弓術と、戦闘力に長けた人だけが入れるのです。女性の国だと舐めてかかって、滅ぼされた国は数しれず……」
怖っわ。
これは、敵に回したくない国ですねー。
シュウワワ……。
炎と、放たれた氷魔術がぶつかり、氷が一瞬で蒸発する。
「なにっ!? まさか連弾魔術だとっ?」
ナナ様。この一瞬で、それを見極めたの?
この人の実力が知りたいよ。
「全員聞けっ! こいつは連弾魔術だ。だか、術式分析をしている時間はない。六段魔術の使用を許可するっ!」
術式分析?
『基本、連弾魔術に対抗するためには、術式分析という過程を行い、その連弾魔術の分析をしてから始めるのです』
それは分かった。
じゃあ、六段魔術って何?
『まず魔術は、特別に魔力が高い人を除き、基本的に1人では使用しません。2人で詠唱をするのが、二段魔術、3人で詠唱をするのが三段魔術というように、詠唱をする人数により段数が増えていくのです』
じゃあ、六段魔術ということは、6人で詠唱するってことか。
でも、もっと多くてもいいんじゃないの?
『その通りです。しかし、段数が大きくなるほど多大なる魔力を使うため、最大で6人まで。つまり六段魔術が限界だと言われているのです』
そういうことね。
と、俺がユーフィミアと話している間に詠唱が終わり、六段魔術が放たれようとしていた。
カッ!!!!
ドォォォォォォンッ!!
凄まじい威力の爆発が起きた。
勿論、俺たちが避難している広場まで煙がきて、前が見えなくなった。
数分経つと、目が見えるようになってきた。
すると、なんと、炎がすべて消えていた。
……魔術すげぇ……。
第15話に続く。




