明るい日の昼
その日は、とても良い天気になりました。
窓から差し込む日差しで、部屋の中に光があふれているみたいでした。
私は、ベッドの上で半身を起こして、トートン先生がミスティに持たせてくれた本を読んでいました。
真新しい頁がぱりぱりと鳴る音が聞こえて、とても静かでした。
お昼になると、ティトが昼食を持ってきてくれました。
私は、なんとなく誰かと話す気が起きなくて、ベッドの上でそっぽを向いていました。
「それでは、失礼いたします」
声とともに、ドアが静かに閉められたようでした。
そこには、私の部屋に一人用のテーブルが運び込まれていて。
その上に、白パンとジャムの瓶とサラダ、それにお茶のカップが置かれていました。
私は、白パンにジャムを塗って、少しかじってみました。
「ん……」
ジャムの味が……いつか私がミスティに「好きな味」って言った、ミスティの手作りジャムの味でした。
そっか……作ってくれたんだって思って。
なんとなく、うれしくなりました。
お茶のカップを手にとって、私は窓際に行きました。
たぶん、明るい日差しの下で飲みたいって思ったんだと思います。
何気なく一口飲んで。
私は、むせてしまいました。
床に手をついて、えずいて、視界がぼやけて。
明るい日差し、ミルクティー、あの時、あの場所。
咳き込むようにえずいたら、くちびるからねばっこい唾が垂れました。
光のあふれるような部屋の中で、めまいと吐き気が止まりませんでした。
いや……もうやめてください……ゆるしてください……たすけて……。
這うように歩いて、呼び鈴を鳴らして、おふとんにもぐりました。
「お呼びですかな?」
ティトの声がして、でも、私は返事をしませんでした。
床に散らばる陶器の破片を拾う音がして。
「リーゼロッテ様、どうかお赦しください……気の利かない真似をいたしまして……」
ティトの声を聞いたとき、目に涙があふれてきました。
どうして、私は……周りの人たちを苦しめて……。
いつまでこんなことをしているつもりなんだろう……。
私は、泣きたくても我慢すれば泣かないで済むって思っていました。
転んで痛くて、でも、くちびるをぎゅってすれば泣かなくて済むのとおんなじように。
でも、どうしても……。
一度しゃくりあげて息を吐いたら、もう嗚咽がとまりませんでした。
私が泣きやんだとき、日は陰っていて、部屋の印象が変わっていました。
私の文机の上には、洗面器とレモン入りの氷水が置いてあって、コップにはメモが敷かれていました。
『これで口をゆすいでください。よい時に呼んでくだされば、いつでも取りに参ります』
私は……ティトにあやまりたかったです。
でも、なんて言えばいいのか、分かりませんでした。




