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遅くなりました………すみません。
もう、月1ペースだと思ってください………。
「………まぁ、こんなところだな」
「………お前、そんなん見てたから、こんなにひねくれたんだな………」
「………カイ、正論ですが、それは言わない約束ですよ」
「………………もう言ってるだろ」
失礼な奴らめ。
……取り敢えず、俺の視ていたことを話した訳だが。
やっぱりあまり気分が良いものではなかったらしい。
まあ、茶化してきたくらいだから、大丈夫なんだろう。
「それで? 場所はわかんのか?」
「やたらと背の高い塔、ってくらいしかわかんねえな。室内の構造から考えると、多分それなりに古い建物だ」
「んなもんありすぎるじゃねえか………」
カイがため息をつく。まあ、仕方ないか。
実際、塔は大概古い。昔、権力を象徴するものとして、馬鹿みたいに塔ばかり建てた時代があって、そのときのものが各地にそのまま残っているのだ。
古くなって構造上問題のある建物も結構あるらしいが………それも放置されている。建て替えどころか、壊すのにさえ莫大な金がかかる。
………シビアなものだ。
「………あの、夢の少女について、なんですが………」
「うん?」
「その子の髪の色って………」
「白銀だ。確実にマイゼニア王家に連なる人間だな」
「まあ、そうだよな」
白銀の髪は、隣国であるマイゼニア王家の人間しか持たない。
何故そんな人物が塔に囚われていたのかは、わからないが。
「その子は、何歳くらいですか?」
「俺の目算だから何とも言えないが………多分、俺と同じくらいだと思う。それがどうかしたか?」
「いえ、これは噂でしかないのですが………私達が貴方の護衛になる前に、ある噂が出回ったんです」
曰く、マイゼニア王家から帝国ジルベルドに、直系の姫が人質として出された、とか。
詳しく整理すると、こういうことらしい。
当時、ジルベルドは自国の利益のために紅い瞳の持ち主を求めており、そのうちの一人として、マイゼニアの姫があがった。
ジルベルドの要請に、属国であるマイゼニアは逆らえる筈もなく、それに加えて紅い瞳を持っていたその姫は王家でも疎まれた存在だったため、その姫はすんなりと人質として出された。
「その姫が、彼女だと?」
「ええ、その可能性はあると思います。マイゼニア王家の人間で、紅い瞳を持っている人物って、中々いないと思いますし。その姫、リクと同じ年齢なんです」
「なるほどな………」
「夢の中の子が、教会に保護された人物の可能性はないのか?」
「それはないんじゃないか? 教会に高い塔はないからな」
「そもそも、マイゼニア王家でリクと同年代の姫はその姫しかいませんし。王が産ませた庶子や、王家に親い貴族までは流石にわかりませんが」
「なら、秘匿された存在である可能性もあるってことか?」
「ああ、そうだな。ただ、ジルベルドにいるとすると、居場所は囚人用の塔だろうな」
「ってことは、リクがその子に会うのも何らおかしくない、って訳だ」
「可能性は低くなさそうだ」
「しっかし、そんな噂があったなんて………知らなかった………」
「俺も知らなかったな」
「貴方達はまだ幼かったですし、そもそもがまことしやかに囁かれている程度の噂でした。私自身、リクの話を聞くまで忘れていたくらいです」
「そっか………」
「ところで、マ―――母さん? その子の名前って何?」
「サーライト・マイゼン、ですね。表向きには、病弱なため外に出てこられないことになっていた筈です」
情報としては、こんなところか。
「それにしても、流石母さん。長生きしてるだけあるよな~」
「……………何か、言いました……………?」
バカだ、墓穴掘りやがった。
見てるのは面白いが、話が進まないのは困るからな。
「仕置きは後にしてくれ。それで続きだが、彼女の警告を含めた夢内容を鑑みると、多分もうすぐ帝国の兵がここに来るってことだろう」
「どうするんだ? 相手するのか?」
「いや、逃げる。わざわざ危険をおかす意味はないし、捕まったら元も子もない」
「何処に逃げるんですか? 国へ帰るのは、まだ時期が早すぎると思いますし」
情報を整理し、俺は行き先を決めた。
「教会へ。まだ情報が確定してないから、確定させる必要がある」
「ってことは………」
「ああ、アイツに会いに行く」
固有名詞出てきたので、近々紹介に書き加えます。