フェル兄そして、小さな女の子Ⅱ
「と、飛んだ・・・」
突然の展開に、頭がついていかない。その勢いのまま、突撃してきた彼女は僕の顔面にぶつかってきた。
「いたっ」
そのまま転がった彼女は僕のお腹の上で大爆笑。何がおかしいのやら。
よく見ると彼女の背中には、大きな薄い羽があった。それは彼女の動きに合わせ、小刻みに揺れる。だがいきなり笑い転げていた彼女は僕の指を見て、青ざめた。
「ご、ごめんなさい。」
今にも泣きそうな彼女は、血で濡れている僕の指を見つめ慌てている。彼女はぶつかった時にできた傷だと思ったらしい。
「いや、これは・・・」
君のせいじゃないよと続けようとしたとき、彼女の表情が変わった。あまりの変化に続きが言えなくなる。無表情というか冷たい印象のある顔立ちだ。そして彼女が傷口に息を吹きかけたその瞬間、傷が消えた。あれ…
「君は、ピクシーなのかい?」
彼女は、疑問符を頭に浮かべている。先ほどの冷気を感じるほどの気は消えており、また可愛らしい彼女に戻っている。跡形もなく。
「私は、フェアリーのリーフよ。今はつっ!」
突然つっかえた彼女は首を絞められたように、だんだん顔色が悪くなっていく。いきなりのことで、どうすべきかわからない。だが、このままでは死んでしまう。すると、大きな手が僕の手から彼女を掴み空へ放り投げた。
え、
あっという間に、僕の手から離れて消えた彼女。思わぬ乱入者につい怒鳴る。
「何してんだよ!」
投げた張本人である、フェル兄は憎々しくも涼しげな貌をしている。
「まぁ、見てな」
とりあえず、フェル兄に言われたとおりに彼女が飛んでいった方を見る。すると急に風が僕らを中心に吹いた。
「そこ、手入れてみ」
フェル兄は顎で特に空気の層が厚い所を指す。とりあえず、言われたとおりに手を突っ込む。すると、何か温かい物が触れた。それを掴み、引っ張ってみる。中から出てきたのは、先ほどフェル兄に投げ飛ばされた女の子だった。
「リーフ!」
指を彼女の口元に当てると規則通りに呼吸をしていたので、一安心。顔色も元に戻っている。まるで眠っているようだった。安心し、ほっと息を吐く。
「こいつは、風の妖精だからな」
フェル兄が淡々と語りだす。ようせい、物語の中でしかでてこない生き物だ。僕が不思議に思うのをわかっていたかのように、続けて口を開く。