60. 武器の修理
翌日。リックたちは別々の行動を取っていた。
「なにぃ? 俺の力作を壊しただとぉ?」
ハルトの武器が壊れたことで、ハルトの武器を製作した職人の店に来ていた。
偶然にも〝セキネツ武具店〟から五件離れた場所に、職人の店があった。
そこにカンナとハルトは一緒に修理を頼みに来ていた。
ドットル武具店を営むドワーフの鍛冶師。ガウ・ドットル。明るい茶髪と長い髭。目つきの鋭さが際立つ強面ドワーフ。いかにも気難しそうな雰囲気を漂わせていた。
怒られるのだろうな、とハルトは顔を反らし、カンナはなんとも言えない笑みを浮かべてガウが次に口にする言葉に身構えた。
「中身。見たのか?」
だが、ガウは怒るわけでもなく、カンナをまっすぐ見てそう訊いた。
カンナは目を泳がせたのち、照れくさそうに「はい……」と小さく返答した。
それを聞いたガウは口を開いた。
「えっち」
「カァァァァ」
ガウに真顔で言われたカンナは真っ赤に染めた顔を片手で隠した。
「いや、なんでだよ」
予想していなかった展開に、ハルトは思わずツッコミを入れる。今の会話からなぜそういう展開になるのか知らないハルトだが、その答えはカンナが語ってくれた。
「ハルトは知らないと思うけど、ドワーフにとって武具の構造を見せるのって、公衆の面前でパンツを脱いで股を開くくらい恥ずかしいことなんだよ」
「もっとマシな例えあっただろ。兄が泣くぞ」
思った以上にド変態な表現に驚いたハルトはそうツッコミを入れた。
「大丈夫。あっちも変態だから」
「いや、今はどうでもいいんよ。ドヤ顔で言うな」
得意げに言うカンナに対して、ハルトは小さく手を素振りしてツッコミを入れた。
ハンマーを置いたガウは腕を組んで口を開く。
「わしのをじっくり見たんだろ? ならお前さんのも見せてもらわなきゃ割にあわんな」
「ひぃぃん」
カンナは恥ずかしそうに体を隠すかのように自分を抱きしめる。だが、そこは職人なのか、渋々といった感じでカンナは魔導巧機重鎧00号機を収納魔法から取り出した。
職人事情を知ったハルトから見て、
(勝手に見たんだからお前の裸もじっくり見せろ、って意味か)
そう解釈したものの、『字面だけ見るとかなりヤバいな』と思った。
ガウはカンナの許可を得て、魔導巧機重鎧00号機の腹部を開き、中身を確認し始めた。
「ほう。元々パワードスーツだったのか。お前さん、人形師か。なるほどなぁ……おっ! 良質な魔核石を核にしてんのか。それでいて内臓バッテリー。そりゃ、こんないいもん動かすとなるとこれくらい必要だわな」
中身を観察するガウは感嘆の声を上げ、それにカンナは照れくさそうにしていた。
(するとあれか。カンナはガウのおっちゃんをキラキラした目で開脚させていたのか)
絵面やべぇ、とハルトは職人同士の見せ合いっこを眺めながら思った。
普段より高揚しているガウの様子に、そんなにすごいのか? と気になったハルトもカンナの魔導巧機重鎧00号機の中身を覗いてみた。
「「えっち」」
「……、」
瞬間、カンナとガウに言われたハルトは、俺もか、と思った。
「久々に良いもん見たわい」
一頻り見て満足したガウは魔導具から離れて壊れたハルトの武器を手に取った。
「武器の修理だったな。といっても部品の一部が破損しただけだ。これの予備はあるからすぐに直してやれるぞ」
「ホントか。おっちゃん」
「ホントホント。てか、お前さんが職人を信用してさえいれば壊れなかったんだかな」
「それを言われるとなにも言えん」
ガウに指摘され、ハルトは苦笑いを浮かべながら目を反らした。




