転生2
…んん。お日様の匂いがする……
ゆっくりと目を開けると、視界に入ったのは肉球ではなく、白く透き通るような自分の「人間の手」だった。
ただ、頭を振ると、側頭部でピンと立った白い猫耳がピクピクと動く。お尻の方には、感情に連動してゆらゆら揺れる白い尻尾。
「よし、人間に近い姿で良かった。これなら道具も扱いやすいしな」
俺は、神様から貰った「最強の拒絶」の力、完全定時を意識する。
目の前にあるのは、ふかふかの苔が生えた大きな岩。
「ここを今日の有給休暇の拠点とする。……発動」
俺が指をパチンと鳴らすと、岩を中心とした半径3メートルに、目に見えないほどの薄い膜が張られた。
防音: 100%カット。外界の騒音は一切届かない。
温度: 常に「昼寝に最適な26度」に固定。
物理拒絶: 業務外(俺が許可しないもの)の接触を全否定。
「ああ、天国だ。前世のあの、怒鳴り声とキーボードの打鍵音しかないオフィスが嘘みたいだ…」
俺は岩の上に寝転がり、白い尻尾を抱き枕のようにして目を閉じた。
……はずだった。
ドンッ!!!!!
「っ!?」
結界の膜に、何かが激しくぶつかった衝撃。
物理的なダメージはゼロだが、視覚的な情報がうるさすぎる。
目を開けると、結界のすぐ外——わずか数センチのところに、巨大な火竜の鼻先があった。
火竜は必死な顔をして、俺の結界にその巨体を押し付けている。
「おいー!デカブツ。そこ、俺のプライベート空間なんだけど」
結界の外では、銀色の鎧を着た騎士たちが叫んでいる。
「なんだあの結界は!? 火竜の突進を片手間に止めているぞ!」
「あの中にいるのは……猫耳の少年か? 聖域の守護者か何かなのか……!?」
「(いや、ただの社畜だけど……」
俺はゆっくりと起き上がった。
猫耳が不快感でヘニョリと伏せられる。
「…あー、もう。これ放置してたら、騎士たちまで雪崩れ込んできて『ご協力お願いします!』とか言われるパターンだろ。前世の『ちょっとこれ手伝ってよ』と同じ匂いがする……」
俺は不機嫌なオッドアイで火竜と騎士団を交互に見た。




