拳闘士とイベント開幕
結構な頻度で日間ランキング下位に出没しとる
それから三人の連携が様になるまで実戦練習を続け、翌日ついにお目当てであるPVPイベントが開催される時がやってきた。
昼の部と夜の部の二つに分かれており、三人は後半に参加すると意見が纏まっていた。
参加条件は現実時間の深夜0時までにどこかの街に居る、当日に全プレイヤーに一枚だけ配られる参加書を開始前までに使用する、この二つである。
「いっえーい! あと十分で魔弾飛び交う刺激的な戦闘がスタートするね! 誰が一位になるかドッキドキだけど、みなさんもこの最強魔法少女ねいろんちゃんをどうぞよろしくっ!」
ネイロは噴水広場の中央に陣取り、往年の変身ヒロインの決めポーズでアピールしている。掲示板では要注意人物としてマークされているのに関わらずだ。
このイベントは参加するだけでも参加賞のイベントポイント500が得られ、今後必須になるであろう最低限のアイテムが引き換え可能である。
そしてランキング三位以内に入賞したプレイヤーの賞金は奪取不可の30万モンと大金である。
更に一位になると賞金は300万モンと跳ね上がる他、詳細は伏せてあるが運営公認プレイヤーの権利が与えられるため、ネイロが賞金以上に一位を求める理由はそこにあるのだ。
ところが、石や銃弾をぶつけられてもおかしくない騒々しさであるのにプレイヤー誰もが無反応である。
「あれみなさん? 落ち込んじゃってどうしちゃったんですか? 掲示板が炎上して悪い方向で有名になったねいろんちゃんですよ〜?」
一瞥しながら問うが誰も耳を借さない。
皆、本番前の緊張や不安等でいっぱいいっぱいであり、ネイロ一人に集中力を割いてる余裕は無いのだ。
殆どのプレイヤーは自分の実力を弁え、一位なんて求めず程々点稼ぎをした後は生存を優先する方針となっているのが拍車をかけている。
「おいおいネイロ。頼むから呆れるほど馬鹿なマネはやめてくれ」
その中で唯一を示した者がこの拳闘士である。
「げ、コウリンがいつにもまして辛辣。そんな酷いこと言われたらねいろんちゃんフツーに萎えちゃうよ」
「それは何よりだ、どんどん萎えてくれ。というより事情があるし落ち着いて貰わんとこっちが困るし困ってる」
「うん。コウリンが言いたいことは解ってるよ。私こんなテンションだけど緊張で冷や汗かきまくってるから」
「だよな。ありゃひでえって」
二人は顔を見合わせ、見通せない先行きを感じ鼓動が早まる。
二人がやけにゾッとしている理由はコウリンが前述した通り、イベントのルールについてである。
制限時間は一時間、デスペナルティは無し、アイテム欄はイベント内限定の全回復ポーション10個に更新された上で専用フィールドに転送し、その間にどれだけ多くのプレイヤーを倒しキルポイントを稼ぐのがこのイベントの主旨である。
そんなありふれているルールの中でネイロにとって引っかかりがあったのが、キル数ではなくキルポイントの単語を使っていたことであった。
詳しく調べてみると、一人倒すごとに2ポイントずつ増えるのは周知されている事実。そう思いきや、それに加え倒したプレイヤーの所持しているキルポイントを総取りと、非常に過酷なルールであったのだ。
速攻をもって倒すだけではなく、如何に温存するかの駆け引きが勝敗の鍵になるだろう。
なおこれらは公式サイトで普通に掲載されていたのだが、ネイロはVRMMOの先入観からタカをくくって情報戦に乗り遅れてしまっていた。
「マジでゴメンねコウリン、こんな一大事の情報教えられなくて。私が夜なべして考案した必勝法がパーになっちゃってさ……」
「ああそうだな。でも多少予定は狂ったが切り替えとけ、俺達がやる事を要約すると生き残りつつ点を稼ぐだけなんだろ」
「コウリンがもうポジティブモードになってるんですけど!」
「まあ俺はテキパキ動けるように余ったステータスポイントはAGIに振ったし、お値段の張る装備は整えてあるからな。いつまでもしょぼくれてるお前よりは決戦に臨む覚悟は済ませてあるぞ」
コウリンは不敵に笑う。どうやら心の準備以外にも済ませてあるようだ。
「ふえ? 私って服装の変化なら簡単に分かるはずなのに……分かった帯の色だね。はぁ……どうせ着るならもっとかわいい服にしてほしかったな……」
「反応がため息かよ!」
二人の掛け合いはすこぶる好調だったが、緊張を紛らわせたいのも入っているだろう。
ところ変わって、コウリンの胡散臭い言葉には嘘偽り無く、全財産をはたいてより性能の良い装備にチェンジしていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アイテム名:茶帯の柔道着上
部位:体
レアリティ:☆
効果:DEF+20
アイテム名:茶帯の柔道着下
部位:脚
レアリティ:☆
効果:DEF+20
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
まだ不安の残る数値だとはいえ防御力はそこそこ改善されており、とりあえずは装備しない方がマシの状況からは脱却したと言えよう。
「コウリンが準備を怠ってなかったのはめでたいけど、店売りの装備品じゃ心もとないよ……リリーちゃんだ!」
「ウフフ……幸せいっぱいな女のコの匂いと克服すべき臭いがすると思ったら、もう二人ともいたのネ」
「なあ俺またツッコまなきゃダメか」
残り時間が僅かであったがリリーが到着する。彼女にはネイロを一位にする算段の話は承諾済みである。
これにて、ネイロの作戦の元で味方となるメンバー全員が時間内にここへと集結した。
『セカンピニオンへお集まり頂いたバトルロイヤル参加者の皆様、一分後にバトルフィールドへと転送致します。一度転送されれば倒されるか制限時間になるまで退場出来ませんので留意して下さい』
開始時刻目前となり、いよいよアナウンスが入る。
王都中にいるプレイヤー兼参加者達は一斉に立ち上がり、武器を構えたり屈伸等の体操をして思い思いに奮い立たせている。
「すっげえざわついてる。だがこのざわつきを見てるとここにいる奴が全員実際にいる人間なんだって思うよな」
「そうよぉ。しかも男の人ばかりだから遠慮なく首からザックリ刈り飛ばせるわ……ウフフフフ!」
「その意気込みを忘れないでね〜。だけど忘れちゃいけないのは、迷いの無い判断力と理性を失わないこと。相手が手負いでポイントいっぱい持ってたとしても、無計画な突撃はどこかしら穴があるからね」
「へえ、さすがレベルが高いだけあって賢いこと言えるんだな。頼もしい限りだ」
ネイロがネットサーフィンで見つけた謎の心構えを唱え、各々を奮い立たせる。
その意思統一を終えたタイミングを見計らったようにタイムリミットが間近となる。
『転送までスリー、トゥー、ワン……ゼロ!』
アナウンスのカウントダウンが終わり、三人は待ち望んだ戦地へと転送される。
◇◆◇
転送が終える寸前で手を離し、新たなる大地に降り立ったコウリンとネイロ。
「……え」
「ヴェ!?」
そこで真っ先に目にした光景は、苛烈なるイベントの洗礼を受けるかのように、銃弾を全身に食らいHPが0となったリリーの姿であった。
━━━━━━━━━━━
名前:コウリン
職業:拳闘士
レベル12
HP 480/480
MP 480/480
STR:10(+70)
DEF:10(+50+65)
AGI:70(+50+25)
INT:10(+40)
LUK:10(+40)
装備
右手:なし
左手:なし
頭:なし
体:茶帯柔道着上
脚:茶帯柔道着下
靴:骨王の戦靴
装飾品1:波動の指輪
装飾品2:なし
スキル
【ダブルパンチ】【トリプルパンチ】【投擲】【二刀流?】
『面白い!』『期待!』と思ったら↓の☆☆☆☆☆からポイント評価お待ちしております




